令和2年度 食文化栄養学実習

田中久子ゼミ■公衆栄養学研究室


野菜のお菓子
─目指せ苦手克服!野菜をおいしく食べよう─


 皆さんは9割以上の子どもが野菜不足だということを知っていますか?主な原因として家庭環境や野菜への苦手意識が挙げられています。私のアルバイト先のパン屋では、キャロットケーキが子どもに人気なことから、野菜をお菓子にしたら野菜が苦手な子どもたちでも食べやすいのではないかと考えました。そこで野菜が苦手な子どもに、野菜を口にしてもらうきっかけづくりをすること、野菜の可能性を広げ、新たな調理法の発信をすることを目的として、野菜のお菓子を作成しました。作成する際には、主な苦手要素となる見た目や匂い、味、食感などを抑えるよう工夫しました。また親子で一緒に調理ができるように、簡単な調理工程で1時間以内に作ることができるレシピを考えました。
 前回は子どもが嫌いな野菜ランキングトップ10から、茄子・モロヘイヤ ・トマトの3種類を選びました。茄子の見た目や食感を抑えた「茄子のカスタードパイ」、ネバネバとした食感をもちもちとした食感に変えた「モロヘイヤのミルク餅」、酸味や青臭さを抑えた「トマトのキャラメリゼパウンドケーキ」の試作を行い、レシピを作成しました。
 今回は子どもが嫌いな野菜ランキングトップ10の中から、春菊・セロリを使用しました。春菊の香りを活かした「春菊だんご」、セロリ臭さを抑えて爽やかさを活かした「セロリゼリー」を作りました。そして子育て支援を行っている「NPO 法人カローレ」にご協力いただき、放課後児童クラブで今まで作成した野菜のお菓子の中から、数種類をおやつとして提供させていただく予定です。実際に子どもたちに食べてもらいアンケートをとり、リアルな反応や意見を聞いていきたいと思います。また家でも親子で一緒に調理し、これからの食生活に活用してもらえるよう、作成したレシピの配布も行う予定です。



一杯の牛乳から酪農を考える
消費者になにができるのか


 私は幼少期から現在にかけて牛乳が大好きで、毎日飲んでいました。牛乳は畜産物であり、スーパーを通して消費者の手に渡るまでに非常に多くのプロセスを要します。私は牛乳を愛する消費者として、生産と流通の仕組み、また生産における現状理解を深めたく、研究テーマに牛乳を選びました。
 近年では複数の社会現象によって牛乳の消費が低迷しており、酪農の経営難を課題に感じます。私は、食品はすべて生産者があってこその恵みであると考えます。研究をとおして、生産者と消費者の双方にやさしい酪農を考え、日常的に牛乳の消費を活性化できるような、身近な改善策を提案します。
 牛乳の消費量低迷の背景には複数の要因があり、同時に酪農家の戸数も減少しています。中間報告では生産量・消費量および酪農家戸数の現状調査や、生産から消費までのプロセスについて発表しました。
 牛乳の消費量低迷には大きく三種類の要因があり、社会的要因、消費者的要因、メーカーなど生産者的要因があります。実際にはこれら三つの解決なしには、消費量低迷を脱するのが難しいのが現状です。
「バターやチーズは売れても、牛乳が消費されないとなぜ酪農家が困るのか?」といった疑問のように、乳製品と牛乳の大きな違いを知らない人は多いのではないでしょうか。酪農で生産される「生乳」は用途別に飲用乳・原料乳に分かれ、販売の際に飲用乳と原料乳で価格が異なります。近年は乳製品の消費量が増え、安価な原料乳の需要が伸びる一方、牛乳となる「飲用乳」の需要は減少しています。
 酪農家の利益増加のためには、牛乳そのものの消費量を増やしたいですが、調査より若年層の牛乳消費量が非常に少ないことが分かりました。このことをふまえ、本発表では消費が控えめな若年層に焦点を当て、日常的に牛乳を飲む意識改革、メニュー提案を行います。



減塩食のススメ
おいしく高血圧予防、一人暮らしにもピッタリ


 厚生労働省が発表している平成30年度「国民健康・栄養調査」のデータによると今日の日本では、20歳以上の国民2人に1人は高血圧であるというアンケート結果があります。高血圧は、生活習慣病に最も大きく影響する要因の1つです。高血圧予防に効果的な対策として、食塩摂取量の見直しや適度な運動、禁煙などが挙げられます。中でも、「食塩摂取量」に着目したいと思います。一概に生活習慣病と言っても、肥満、糖尿病、骨粗しょう症など、症状も様々です。私の祖母は食習慣による「肥満」により足を酷使したことから、以前と比較して外へ出ることが少なくなったと聞いています。改善するべく祖母は四群点数法を取り入れ、食事摂取の指標を知ったことで1 年をかけて約20㎏の健康的な減量に成功し、現在も適正体重を維持しています。
 1月にフィールドワークとして川越市にあるコミュニティカフェ「リフレ」へ訪問しました。利用者の60代~ 80代の男女10名に話を伺ったところ、高血圧予備軍と診断された方が2名いました。話を伺ってみると濃い味付けを好み、うどんやラーメンの汁も全て飲み干しているというエピソードを聞きました。このことから、普段の食事や塩分摂取量を見直すことの重要性に気づきました。中間報告では食塩摂取目標量を基に、1食あたりの料理群別食塩摂取量の目安を設定しました。当初、コミュニティカフェ「リフレ」で減塩メニューを提供する予定でしたが、コロナウイルスの影響で断念をせざる得ない状況になりました。そのため、おうち時間を活用し家でできる減塩食の提案をします。食事は毎日作り食べるものなので、少しの工夫で減塩できるポイントや、減塩に即した調味料の効果的な使い方などをご紹介します。少しでも興味を持っていただき、家庭の食卓で実践していただけたら嬉しいです。



楽しく食の知識を学ぼう
つるがしまの子供に向けた食事バランスゲーム


 食育に以前から関心があり、私は料理をする楽しさや共食の喜びを知ってもらいたいと思うようになった。子どものころから正しい知識を身に着けることで、大人になってからも使える知識であることや体の健康を自身で守ってほしいと考えている。知識の面のみではなく、食事をすることへの楽しみや関心にもつなげてもらいたい。また、鶴ヶ島市で行っている子供の居場所づくり事業へ参加をきっかけに鶴ヶ島市の食育の現状について調べた。すると、野菜料理の皿数が少ないこと、家族や地域で食事をとりながらコミュニケーションを図る機会が減少していることが挙げられた。家族や地域でのコミュニケーションをとりながらの食事については、コロナ禍では会話をしながらの食事はリスクが伴ううえに現状家庭や地域の問題などを解決をすることは難しいと考えた。一方野菜料理の皿数が少ない問題は1日に5皿が望ましいとされているが、調べるとどの年代でも1~2皿しか食べないと回答した人が多くいた。半分以下しか摂取されていない野菜の量に対してまずは適切な摂取量の認知に着手しようと決めた。野菜のみではなく食事全体のバランスについても一緒に学んでもらう。対象は小学生5・6年生とし、楽しみながらも印象に残るような食育にしたいと考え、カードゲーム方式で作成した。食事バランスガイドをもととしたゲームを通して野菜の皿数がいかに少ないかについて学んでもらうことを目標としている。
 小学生対象のゲームを作成する際には考慮しなければならない点がたくさんある。ゲーム作成にあたり私が考慮し、苦労した点や実際にカードゲームで小学生に遊んでもらった際の話、実際に食事バランスについて学べたかについて発表をしたいと思う。



食育から実践へ
小学生へのメニュー提案


 6月の中間報告では、小学生の朝食喫食率と第2次坂戸市健康なまちづくり計画中間年次計画のステージ別の行動目標について文献調査したものを発表した。その結果は朝食をとらないという児童が多かった。理由を見てみると、時間がなくご飯を食べないという児童が多くいた。
 まず、時間がなぜないのか考えてみることにした。近年、インターネットの普及で使う小学生が多くなったと感じていた。青少年のインターネット利用環境事態調査(内閣府:令和元年)によると、インターネットの使用率は平均86.6%であった。使用内容では、私が対象にしている小学生の上位はゲームや動画視聴だった。平均使用時間は高学年になるにつれて100分を超えていることから、インターネットの使用率はだんだんと上がっていくと考える。「青少年の体験活動等に関する実態調査」(少年教育振興機構:2014年6月)では、利用時間が長い子供ほど起床時間が遅くなっていた。このことからインターネットの時間を短くして早寝早起きをすることで、朝に余裕が生まれ、朝ご飯を食べることができるのではないかと考えた。
 今回の発表では小学生でも作れる朝食を提案する。メニューは卵を必ず一個使い小学生が自分でも作れるようなメニュ―にした。実際に小学生と一緒に調理して実習を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染予防で開催が難しかったため、一冊の冊子にまとめることにした。冊子は材料や作り方だけでなく、エネルギー計算も行いどのくらいの朝ご飯を食べればいいかを知ることができるようにした。今回の提案では、自分で作って冊子を作るというところで終わってしまうが、子どもたちが作りたいと思うような朝ご飯提案をこれからもしていきたいと考えている。



もったいないおばけと行く!すごろくゲーム
食品ロスを知ろう


 前期に引き続き食品ロス削減について、インターネットのニュースや取り組みを調べた。しかし、調べれば調べるほど前期時点の目標であった食品ロス削減を目的としたボードゲームの作成が困難であると感じた。行き詰った際、卒業生の先輩と食事に出かける機会を得、その旨を伝えたところ先輩から自身の研究内容を伺い非常に刺激となった。そのため、昨年の先輩のボードゲームの案をインスパイアさせてもらいつつ前期で行った食品ロスの調査をもとに、後期はボードゲームの制作に乗り出した。ストーリーとしては飲み会や外食で「お金を払っているから」という理由でむやみやたらと注文をするだけして残して帰ることを日常的に繰り返し、自炊用に買った食材も手を付ける前に腐らせる、捨ててしまうことがほとんどだったあなたはある夜、夢を見ます。夢の中であなたはもったいないおばけに出会い「お前が食品ロスについて理解するまで夢から醒めさせない」と言われあなたの一挙一動を振り返りつつ世間ではどのような対策が取られているか知る旅に出ます。その一部始終をプレイヤーに行ってもらい食品ロスについて学び、いち早く夢から覚める(ゴールする)人が優勝の双六を制作予定だ。マス目には食品ロス関連のクイズや健康に関する豆知識、例えば廃棄率の少ない食材の切り方を選ぶ、食べ物の旬を答える、SDGsについて、ドギーバッグの概要など実際に一人暮らしをする際に役立つようなものを記載する予定でこの人生ゲームを通して食品ロス削減に対する知識を得てもらうのが目的である。11月中には完成させ、ゼミ生にプレイしてもらいその時の様子や感想、批評それを踏まえての改善点を12月の発表会で発言していきたい。



居酒屋開いちゃいました!!
~生産者とお客様を繋ぐ橋渡し~


 私は高知料理をメインとする居酒屋でアルバイトをしている。そこでのお料理やお酒を通じてお客様とのコミュニティが広がった経験から、提供側と提供される側にとって居心地の良い楽しい場所を作りたいと思った。そこで、アルバイト先を実習先とし、お店のコンセプトである高知県の地方創生のお手伝い、高知県の食材をメインとしたメニュー提案・提供、生産者のみ知っている情報をお客様に伝え、都心の評価を生産者に伝える橋渡しを目的に実習を行った。三月のドラゴンサーモンを使った実習はk水産のkさん店長にご協力の元、メニュー考案、提供し、沢山のお客様に喜んで食べていただくことができた。ドラゴンサーモンを提供してくださったkさんにも販売したメニューとお客様の感想をお伝えし、とても喜んでいただけた。十二月の発表ではテイクアウトメニュー提案と販売を予定していたが、新型コロナウィルスにより実習は中止となった。そこで、私の地元である蒲田のお店のテイクアウト商品を購入した。どういったものが売れやすいのか、ターゲットは誰に絞っているのか、そもそもなぜ自分はこの商品を購入したいと思ったのか。個人的な見解になってしまうが紹介したい。また、テイクアウトメニュー販売は難しいとしても提案なら!と思い、再度、k水産から“乙女鯛”を購入し自宅で作ってみた。k水産オリジナル商品である“乙女鯛”は養殖とは思えないほど大きく身がしっかりしていて、程よく脂ののった美味しいお魚‼今回はお客様への提供はできないため、私と家族の食べた感想、提案メニューをkさんにお送りし、感想や私が知らない乙女鯛の情報についても教えて頂くことができた。乙女鯛についてと私が提案したメニューの紹介をしたい。



“地域おこし協力隊”という選択肢


 この のんびりとした感じ、からだがここにいたい〜ってなる感じ、田舎は都会で暮らしてきた私にとって、とっても心地よく感じてしまう。
 そんな田舎に憧れて昨年の夏にふるさとワーキングホリデーに二週間参加した。場所は奈良県川上村。村の95パーセントは山林で水源地もある自然豊かなところである。私はそこで村のために働く“地域おこし協力隊”に出会った。
 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域などに住民票を異動し地域ブランドや地場商品の開発・販売・PRなどの地域おこし支援や住民生活支援などの地域協力活動を行い、最終的にその地域に定住・定着を図る取り組みである。今回の研究では定住率が他の地域に比べて高く、ふるさとワーキングホリデーでも訪れた“奈良県川上村”の地域おこし協力隊について取り上げることにした。川上村の地域おこし協力隊の活動は、村のおばあちゃんたちの家庭菜園の野菜を集めて売る朝市の“やまいき市”や、キャンプカフェの起業、宅配事業を通じて村民の体調などを気遣う“かわかみらいふ”など様々である。
 前回の報告では、栃木県益子町の地域おこし協力隊であるMさんの陶器市での活動と佐賀県江北町の地域おこし協力隊であるTさんの活動について紹介した。また、2020年2月2日に開催された“地域おこし協力隊サミット”に参加し各自治体についても見学し考察した。
 今回の発表では、奈良県川上村の地域おこし協力隊に絞り、地域おこし協力隊の概要と川上村の協力隊員(かわかもん)の方、役場の方へのインタビューを交えて地域おこし協力隊の存在について考察する。そして、この発表を聞いてくれた方が少しでも地域おこし協力隊に興味を持ってくれればと思う。