令和8年度 食文化栄養学実習

向後千里ゼミ■特任教授


日常でお茶を楽しむ「茶室空間」とは?
現代の暮らしと「和」の再考

   私は、日本茶を飲むのが好きだ。しかし、普段日本茶を飲む場所を考えてみると、リビングでテレビを見たり、パソコンを使ったりしながら飲むことが多く、ゆっくりお茶を楽しめていないと感じた。一方で、お茶の文化が発展した室町時代から江戸時代にかけては、お茶を飲むための空間である「茶室」があるほど、お茶を飲むことを楽しんでいた。そこで、「茶室」のような空間が現代の日常にも作れたら、現代の生活でもお茶を楽しめるのではないかと考えた。
   中間発表では、3月に実施した「お茶会ごっこ」の内容について紹介した。参加者全員が「お茶会をいい体験だった」と評価したことから、日常生活の中で実際にお茶を点てて飲む機会が少ないのではないかということに気づいた。そこで、日本茶を楽しむための伝統的な空間である「茶室」に着目し、現代の生活に取り入れる方法を考えることにした。
   次に日常生活に取り入れやすい茶室空間を検証するため、8月に再度WSを開催した。8月のWSでは、「イマーシブ茶会」として、没入感のある茶室空間を演出した。プロジェクターを用いて茶室の壁に映像を映し、映像を見ながらお茶を楽しめる空間とした。その結果、茶室空間の印象について、前回よりも「落ち着いている」「楽しい」といった項目の評価が高くなった。
   また、9月には本学学生42名を対象に、「食卓と空間に対する印象アンケート」を実施した。このアンケートは、15年前に行われた同様のアンケートと比較をし、現代の学生が食卓や空間をどのように捉えているのか、その変化について分析を行ったので、その結果を紹介し、15年間でどのような変化がみられたか考察をした。
   新たな「茶室」のあり方の提案を通じて、単にお茶を楽しむだけでなく、日本の伝統文化である「和」に関心を持つきっかけを作り、和文化の継承と発展に繋げていきたいと考えている。

変わりゆく暮らし、残したい「和」
現代の暮らしと「和」の再考

   皆さんは日本文化と聞いて何を思い浮かべるだろうか。本研究では、日本の伝統文化である「書道」「和空間」「和食文化」に着目し、現代のライフスタイルに適応した文化継承の方法について検討する。また、これらの文化に含まれる季節感や美意識を、現代の生活空間や食空間に取り入れる方法を提案する。近年、生活空間の洋風化や手書き文化の衰退、デジタル化の進展などにより、畳や障子などの和空間に接する機会や、手書きで文字を書く機会が減少している。
   中間発表では春に行った書道体験のワークショップについて、アンケートを実施し紹介した。参加した日本人と外国人の方からは、「タイピングばかりだが、自分で文字を書くことの重要性を再認識した」や「楽しかった」という回答をいただいた。その結果からデジタル化が進行しており手書き文化が衰退していることに気づくことができた。
   また、食生活の変化に伴い、和食を家庭で調理する機会や、和食文化に触れる機会も変化している。さらに、現代の生活では、食事や生活空間を通して季節を意識する機会も変化している。こうした背景から、伝統文化を現代の生活にどのように取り入れ、継承していくかが課題となる。
   8月に実施したワークショップでは、二十四節気と七十二候の中から参加者が言葉を選択し、その言葉を筆で書く体験を実施した。七十二候は約5日ごとの季節の変化を表す言葉であり、これを題材とすることで、「書」と季節との関係を扱った。また、文字の書き方だけではなく、文字の配置や余白、線の構成などにも着目し、書道を空間との関係を含めた表現として捉えた。完成した作品は参加者が持ち帰る形式とした。今回のワークショップは「書」を対象とした実践である。一方、和食文化にも旬の食材、季節に応じた献立、器、盛り付け、食事空間など、季節や自然と関係する要素が含まれている。「書」、和空間、和食文化を関連付けて考察することで、それぞれの文化に含まれる季節感や美意識を現代の生活に取り入れる方法を検討する。本研究では、8月に実施した書道ワークショップをもとに、「書」を現代の生活に取り入れる方法について検討する。また、書道だけでなく、和空間や和食文化にも着目し、季節感や日本らしい表現を現代の生活の中でどのように取り入れられるかを考える。これらを通して、現代の生活に合わせた日本文化の継承方法を検討する。