令和8年度 食文化栄養学実習

奥嶋佐知子・神保夏美ゼミ■調理学研究室


ドリアンを使った新しい食べ方に挑む
風味を活かした新食感

   「ドリアン」というワードは、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。多くの人は「臭い」「不快」といったマイナスなイメージを抱いている。その中で、幼少期から中国でドリアンブームを経験した私は、ドリアンの新しい食べ方を提案することを目的として、本研究を始めた。私自身はドリアンに対してそこまで悪いイメージを持っていなかったため、一般的に持たれているイメージとの違いにも興味を持った。
   焼き菓子の中でも、パウンドケーキは卵、粉、砂糖、バターを基本とした比較的シンプルな構造であるため、ドリアンの風味を活かしながら組み合わせることで、新しい食感や味わいを生み出せるのではないかと考えた。しかし、ドリアンのみを使用すると味や香りが単調になると考え、他の食材とのフードペアリングを取り入れ、ドリアンの風味を残しながら、より人々に受け入れられやすいドリアンの味を目指した。
   これまで計4回、カフェ営業を行い、その過程で、何度も試作を繰り返す中で、ドリアンはそのまま食べる時と比べ、焼き菓子にすることでドリアン特有の揮発性の香り成分が揮散し、焼く前と比べ香りが和らぐことが分かった。また、パウンドケーキの材料と組み合わせることで、全体が馴染み、より人々に受け入れられやすい形に仕上がった。ドリアンとのフードペアリングについては、濃厚でクリーミーなドリアンは、香ばしい風味を持つナッツ類との相性が良いこと、同じ南国の果物であるパッションフルーツは、酸味と香りが加わることでドリアンの濃厚さを引き立てることが分かった。しかし、ドライマンゴーを使用した試作品では、味の組み合わせは悪くなかったものの、焼き菓子との食感が合わず、全体として食感のまとまりが悪くなってしまった。
   このように、実際に何度も試作をすることで、単に「ドリアンに合う食材」を探すだけではなく、香りや味だけでなく、食感まで考えて組み合わせることが重要だと感じた。以上の研究結果から、ドリアンの特徴である独特な風味をなくすのではなく、焼き菓子に使用し、他の食材との組み合わせによって活かすことで、これまでの「臭い」というイメージを少し変え、より受け入れられやすい新しいドリアンの食べ方を提案することができた。

学生に寄り添うカフェメニューの提案

   大学生は、学業やアルバイト、就職活動などを並行する中で、カフェを勉強や作業の場として利用する機会が多いのではないかと考えた。しかし、カフェで提供されているフードメニューの中には、食べる際に崩れたり、食べかすがこぼれたりするものもあり、作業をしながら食べるには不向きであるという課題が存在する。そこで本研究では、作業をしながらでも食べやすく、手軽に楽しむことができ、さらに満足感も得られる「学生の日常に寄り添う」カフェメニューを提案することを目的とした。対象とする菓子には、具材を練りこみやすく、味や食感を幅広く展開することができるパウンドケーキを選定した。また、菓子と一緒に楽しむドリンクについても、味や香り、飲みやすさなどに配慮し、作業中の気分転換やリフレッシュにつながる組み合わせを検討した。メニュー開発では、学生が作業をしながら食べることを想定し、食べやすさや大きさ、食感、味の組み合わせ、見た目、価格など、さまざまな観点から試作と検討を重ねた。
   さらに、一般的なパウンドケーキの食べやすさを検討するため、市販のパウンドケーキを用いて、食べた際に生じる食べかすなどの落下重量を測定し、商品による違いや食べやすさについて比較した。この結果をメニュー開発にも活用し、作業中でも周囲を汚しにくく、食べやすい形状や食感について検討した。ゼミでは学内カフェを計4回営業し、考案したメニューを提供した。喫食者にアンケート調査を実施し、味や満足度、作業中の食べやすさなどについての評価を得た。その結果や意見をもとに、メニューの内容や組み合わせを見直し、営業を重ねるごとに改良を行った。これらの測定結果やアンケート調査、実際の営業を通して得られた評価をもとに、学生が作業しながら楽しむことのできるカフェメニューに必要な要素について考察する。

野菜を使用したおやつの提案

   本研究は、子どもの野菜摂取の促進に貢献できる、野菜を使用したおやつの提案を目的とする。長年にわたり、子どもの野菜摂取量不足が課題となっていることから、子どもが興味を持ち、おいしく食べられる形で野菜を取り入れることが重要であると考えた。そこで、幼少期から親しんできた「にんじんりんごケーキ」を着想の原点とし、にんじんとりんごを組み合わせることで、野菜を使用しながらも子どもが食べやすいおやつの開発を行った。これまでに、にんじんやりんご、レモンなど使用する材料の配合割合を変えながら、味わいや食感、見た目などの仕上がりについて検討し、試作を重ねてきた。
   さらに、開発したおやつが実際に子どもにどのように受け入れられるのかを明らかにするため、小学生とその保護者からなる親子8組を対象として、料理教室を開催した。料理教室では、限られた時間内で子どもが調理できることを考慮し、スポンジを使用せず、1人分ずつカップに流し固める形態に変更することで、調理工程を簡略化した。はじめに、野菜不足について簡単な説明を行い、続いて、にんじんとりんごを使用したムースを親子で調理し、完成したムースを試食してもらった。試食後には、料理教室の楽しさやおやつの味、野菜を使用したお菓子作りに対する興味や印象についてアンケートを実施した。料理教室では、子ども自身が調理に参加することで、野菜を使用したおやつが子どもにどのように受け入れられるのかを検討するとともに、得られた意見や反応をもとに、開発したおやつの特徴や課題について考察した。これらを踏まえ、子どもが野菜を身近に感じ、おいしく食べることにつながる、子どもに受け入れられやすい野菜のおやつの可能性について検討した。

四季を彩る期間限定スイーツの開発

   みなさんは、カフェやレストランなどで「期間限定」という言葉を見て、商品を選んだことはありますか?私は、期間限定の商品に惹かれることが多く、その季節ならではの特別感や旬の食材を使った味わいに魅力を感じています。そこで本研究では、旬の食材を活かした期間限定のケーキを開発し、味わいと見た目の両面から季節感や特別感を表現することを目的としました。
   市場調査を通して季節限定のスイーツでは、旬のフルーツを使用するだけでなく、色味や香り、イベント性などを取り入れて季節感を演出していることが分かりました。また、約1か月ごとにメニューを変更することで、新鮮さや特別感を維持していました。さらに、同じ季節でもさまざまな季節の表現があることに着目しました。
   単に旬の食材を取り入れて「夏らしい」「秋らしい」と表現するのではなく、「太陽のまぶしい真夏」「秋を彩るハロウィン」「冬のおとずれ」のように、具体的な季節イメージを設定し、その情景を食材や色合い、香り、飾り切り、盛り付けなどで表現することを試みます。
   その表現方法を検討する上で、昨年、学園内留学制度を利用して調理専門学校に1年間、身につけた飾り切りなどの技術を活用しました。味わいだけでなく、見た目からも季節を感じ、「食べたい」と思ってもらえるスイーツを目指します。
   奥嶋・神保ゼミでは、「Chouchou」という名前で学内カフェを運営しています。私はロールケーキをメイン商品として3回の営業を行い、営業毎にどんな季節かを設定し、季節に合わせた期間限定スイーツを提供しました。提供したスイーツは「〜太陽のまぶしい真夏に食べたい〜真夏の爽やかピーチロール」、「~Happy Halloween~秋を彩る栗かぼちゃと黒ごまのロールケーキ」、「~冬のおとずれ~ほうじ茶香る林檎のキャラメルロール」の3品です。それぞれの季節イメージに合わせて、食材や色合い、飾り切り、盛り付けなどを検討し、季節感と華やかさを表現しました。
   本発表では、3回の営業を通して行った商品開発について、各メニューの工夫点や改善点を振り返ります。また、提供後のアンケート結果をもとに、味わいや見た目、季節感などに対する評価を分析し、期間限定スイーツの開発を通して得られた成果について発表します。

1杯を特別にするペアリング
焙煎度の異なるカフェラテとスイーツの研究

   皆さんはカフェに行ったらどのような飲み物を頼みますか?私は幼い頃からの憧れなどから、カフェを訪れた際にスイーツとペアリングするドリンクとして必ずカフェラテを頼みます。カフェ業界において特定の飲食物に特化し、他店では味わえない体験を提供することで競合他社との差別化を図るカフェがトレンドとなっています。しかし、カフェラテは多くの店舗で提供されている一方で、豆の種類や焙煎度を選択できる店舗は少なく、またカフェラテを選択し、メニューの中から好きなスイーツを選ぶという提供形態が画一的であると感じました。本来カフェラテは、使用する豆や焙煎度、ミルクとの組み合わせによって味や香りの印象が変化する飲み物です。そこで、本研究では、他のカフェとの差別化と新しい価値体験を創出することを目的とし、その手段として焙煎度の異なる豆を使用するカフェラテとスイーツのペアリングを考案することとしました。焙煎とは、コーヒーの生豆を加熱する工程のことを指します。
   まず、カフェラテとスイーツのペアリングについて研究するため、実際に様々なカフェへ足を運び市場調査を行いました。店舗ごとにエスプレッソとミルクの割合が異なり、エスプレッソの苦味が強い重めのカフェラテが多く見受けられました。ミルクの量を選べる店舗はありましたが、豆の種類や焙煎度を提示し選択できるカフェはあまり多くありませんでした。
   ゼミでは、カフェ営業を行い開発したスイーツを販売しています。私は浅煎りと深煎りの2種類のカフェラテとスイーツのペアリングを楽しめるセットを提供し、どちらがよりスイーツに合うかを検証しました。営業は4回行い、合計で4品のスイーツを考案しました。5月と7月の営業では、酸味のあるフルーツを使用したスイーツで「キウイショートケーキ〜カッサータ風〜」、「Mont Blanc au Citron 〜Earl Grey & Citron〜」を提供しました。6月と9月の営業では、チョコレートなどの甘さがしっかりとでる材料を使用したスイーツで「エクラ・ピスターシュ〜ピスタチオ香るドバイショコラ〜」、「マッチャ・エトワール〜あんバター仕立ての抹茶ケーキ〜」を提供しました。喫食後に浅煎りと深煎りのカフェラテとスイーツとのペアリングに関してのアンケートを行いました。
   本発表では、スイーツとカフェラテのペアリングについて、4回分の営業を踏まえ、試作、提供、アンケート結果などから考察を展開し、自身の学びについても発表します。