令和8年度 食文化栄養学実習

井元りえゼミ■家庭教育学・環境教育研究室


ミドルフード
頑張りすぎない丁寧な食事

   みなさんは「スローフード」を知っていますか?スローフードとは、食材の生産背景や地域の食文化、環境への配慮など、食の豊かさや持続性を大切にする食の在り方です。単に時間をかけて料理をすることではなく、食を取り巻く環境や文化を守り、次世代へとつなげていく考え方でもあります。
   しかし現代では、ライフスタイルの多様化や共働き世帯の増加などにより、日々の調理に十分な時間を確保することが難しくなっています。そのため、ファストフード店の利用や、家庭内でも時短調味料や調理済み食品を活用するなど、短時間で食事を準備することが日常化しています。このように、日々の食生活を無理なく続けるためには、それぞれの生活スタイルに合った手軽さが欠かせません。一方で、長期的な視点では、食を取り巻く環境や地域に根付いた食文化を守り、持続させていくことも重要だと考えます。
   そこで私は、スローフードが大切にする食の豊かさや持続性と、ファストフードの手軽さや利便性を掛け合わせた、新たな食の在り方として「ミドルフード」を提案します。これは、日常生活に無理なく取り入れられる手軽さを確保しながら、食の質や文化的な価値も大切にする考え方です。
   本研究では、ミドルフードの「おいしさ」を定義づけするために、出汁・醤油・砂糖の配合割合による嗜好性の違いを検討し、卵焼きを用いて官能評価を行った結果、配合割合の黄金比を導き出しました。さらに、この黄金比をほかの料理にも応用することで、日常の食事に取り入れられる可能性を探りました。
   しかし、研究を進める中で、毎回複数の調味料を計量する手間を新たな課題として認識しました。そこで、さらなる簡便性を追求するため、自家製出汁醤油の試作に挑戦しました。あらかじめ調味料を一つにまとめておくことで、日々の調理工程を減らしながら、これまでに追求してきたおいしさを維持できないかと考えました。「食の持続性」と「調理の利便性」は、果たしてどこまで両立できるのか、その可能性を探る中で見えてきた新たな発見や課題を手がかりに、ミドルフードの在り方をさらに探究していきます。

オーガニック野菜の新たな魅力

   オーガニック野菜は、環境への負荷を減らし、生態系の保全につながるなど、サステナブルな面は徐々に知られるようになってきた。私は、オーガニック野菜の価値は環境への配慮だけではなく、実際に食べたときに感じられるおいしさにもあると考える。文献調査を通して、オーガニック野菜には栄養価や味、品質の面でもさまざまな特徴があることが分かった。しかし、こうした特徴があっても、その魅力を十分に活かした食べ方が分からなければ、日常の食生活に取り入れるきっかけにはつながりにくいのではないだろうか。
   そこで本研究では、オーガニック野菜ならではの魅力を調理によって引き出し、「環境のために食べる」だけでなく、「おいしいから食べたい」と思える新たな価値を提案することを目的とした。そのために、まずオーガニック野菜の特徴を活かしたプレート料理の作成に向けて、使用する野菜と調理法について文献調査を行った。野菜は、糖度が高いとされるさつまいも、えぐみの少なさに着目したほうれん草、ビタミンCが豊富なブロッコリー、抗酸化物質が豊富なトマトの4種類を選定した。それぞれの野菜が持つ特徴を活かすため、栄養素や味わい、食感などに調理法がどのような影響を与えるのかを調べ、素材本来の良さを保ち、おいしさを引き出せる調理法を候補として検討した。
   さらに、野菜ごとの味わいや食感の違いを比較するため、味付けをせずに複数の調理法を試し、甘み、えぐみ、うま味、食感、総合評価の5項目について、5段階で官能評価を行うことを計画した。評価結果を文献調査の内容と照らし合わせることで、実際に感じられるおいしさと栄養面の両方から、それぞれの野菜の特徴を活かせる調理法を選定した。これらの結果をもとに、4種類の野菜をベースとしたオリジナルプレート料理を作成し、素材本来のおいしさを引き出すことを目指した。
   本研究を通して、オーガニック野菜の魅力を伝えるためには、栄養価や環境面の特徴を知るだけでなく、調理によって味わいや食感を活かすことも重要であることが確認できた。野菜それぞれの特徴に合わせた調理法を工夫することで、オーガニック野菜がより身近に感じ、「おいしいから食べたい」と思うきっかけにつながることを期待する。

おからでおからだにやさしく
60円から始まる食品ロス削減と健康習慣

   たった60円。地元のお豆腐屋でその安さに惹かれて購入したおからが、私とおからの初めての出会いである。おからは、「畑の肉」と呼ばれる大豆から豆乳を搾った際に生じる副産物であり、食物繊維やたんぱく質など、健康の維持に役立つ栄養成分を含んでいる。しかし、食品としての価値があるにもかかわらず、十分に活用されず廃棄される場合もある。私は、このような栄養価の高い食材が廃棄されている現状に着目し、おからをより身近な食品として活用することで、食品ロス削減と健康増進につなげられるのではないかと考えた。
   本研究の目的は、おからを用いた菓子を開発し、実際に喫食してもらうことで、おからに対する関心や印象の変化を調べ、その受容性を評価することである。おからは、食物繊維を多く含み、腸内環境を整える働きが期待されるほか、たんぱく質や大豆イソフラボンなど、大豆由来の栄養成分も含んでいる。一方で、おからには独特の風味や食感があり、日常の食生活に取り入れる方法が十分に知られていないことも、活用を広げるうえでの課題だと考えられる。そこで、幅広い人々に親しみやすく、手軽に食べられる菓子という形で、おからの新たな活用方法を提案することとした。
   開発する菓子には、キャロットケーキを選んだ。にんじんの風味や甘み、シナモンなどのスパイスの香りを生かしながら、おからを加えることで、栄養面にも配慮した菓子を目指した。また、レーズンやくるみ、小松菜などの食材も組み合わせ、味や食感、見た目のバランスを考慮しながら試作を重ねた。試作では、おからを加えることによる生地の状態や食感、風味の変化に着目し、おいしさと食べやすさを両立できる配合を検討した。
   さらに、開発した菓子を実際に提供し、喫食後のアンケート調査を通して、おからに対するイメージや関心、菓子としての食べやすさ、今後の購入意向などを調べる予定である。これらの結果から、おからを菓子として活用することが、食材への関心や受容性を高める可能性について考察する。
   本研究を通して、廃棄されているおからに新たな価値を見いだし、日常の食生活に取り入れやすい食品として提案することで、食品ロス削減と健康的な食生活の実現に貢献することを目指す。

出がらしを有効活用したい

   皆さんは、緑茶や紅茶を飲んだ後に残る出がらしをどのようにしていますか。多くの場合、出がらしはそのまま廃棄されてしまいます。しかし、飲用後の茶葉にも食品として活用できる可能性があると考え、廃棄されるものを少しでも減らし、有効活用する方法を見つけたいと思ったことから、本研究のテーマとしました。本研究の目的は、緑茶や紅茶の出涸らしを使用した食品を開発し、身近な食生活の中で取り入れられる活用方法を検討することです。そこで、幅広い人に親しみやすく、日常生活にも取り入れやすいお菓子に着目し、出がらしを使用したさまざまな種類のお菓子を試作しました。試作では、出がらしを加えるだけでなく、ほかの材料との組み合わせや配合を工夫し、味や食感などにも注目しながら、食品としての活用方法を検討しました。また、材料や分量を変えて比較することで、出がらしをお菓子に取り入れる際の工夫についても考察しました。さらに、試作した食品の学内販売を実施し、実際に商品として提供することで、出がらしを使用した食品がどのように受け入れられるのかを調べました。食品を試作するだけでなく、販売という実践的な取り組みを行うことで、出がらしの活用をより身近なものとして考える機会としました。本発表では、これまでの試作の取り組みとともに、学内販売の結果についても報告します。本研究を通して、普段は廃棄されてしまう緑茶や紅茶の出がらしも、材料や配合を工夫することで、さまざまな食品に活用できる可能性があると考えました。出がらしを食品の原料として再利用することは、身近な資源を無駄なく活用し、食品ロスの削減につなげる取り組みの一つです。今後も、出がらしの特性を生かした食品の開発を進め、より多くの人にその活用方法を知ってもらうことで、持続可能な食品利用につなげていきたいです。

ゴミ捨てを楽にする方法
コンポストを使った家庭菜園

   初心者にはハードルが高いと思われる事の多いコンポストを、取り組みやすくする為にはどうしたらいいか理解し、始めるきっかけ作りをしたいと考え研究を行ってきた。中間発表会までの研究で、実際に生ごみコンポストの密閉式に取り組んだ。その結果、生ごみの廃棄量を約1ヶ月で5.6kg減らす事に成功し、環境負荷削減だけでなく、家事の負担を減らす事にも成功した。また、コンポストに入れ発酵させた生ごみは堆肥となり、花壇や家庭菜園に活用できる様になった。しかし、今度は堆肥が大量に出来た事で余らせてしまうという問題が発生した。堆肥を活用する為にプランターでグリーンカーテンを実施する事にした。過去にゴーヤのグリーンカーテンは育てた事があった為、今まで経験のないパッションフルーツを使用した。堆肥と発酵液を有りと無しでそれぞれ1株ずつ用意し、別のプランターに入れて成長の違いを比較した。その結果、堆肥と発酵液有りの方が成長速度が格段に速く、花が咲くのもこちらだけだった。文献調査の結果から、パッションフルーツは1日花であり、花が咲いたその日のうちに受粉しなければ黄色く変色し落花してしまう事が分かった。実際に人工授粉を行うまでは実が付かなかったが、花が咲いた直後に受粉をした結果2/3の割合で実がなった。また、実がなってからも収穫まで2〜3ヶ月かかるとされている為、今後堆肥を追加し実が大きくなるまでこまめに成長過程を記録していく。成長記録と並行して、コンポストについても研究結果をまとめ、まだ始めた事のない人も取り組むきっかけとなるように要点をまとめる。本研究で1人でも多く人にコンポストを始めるきっかけを与えられたら嬉しいと思う。