令和6年度 食文化栄養学実習

守屋亜記子ゼミ■食生活文化研究室


日韓の食文化比較
粥を例に

   日本で粥といえば、白粥や梅粥、卵粥の様に淡白な味で消化の良いものというイメージがあるが韓国旅行の際に、粥専門店でごま油香るあわび粥を食べ日本との違いに衝撃を受けた。コクと食べ応えのあるお粥でこれまでの粥のイメージが覆されたからだ。この経験から、日韓の粥の違いはどのような背景によるものなのかに興味を持ち、このテーマを選んだ。
   本研究の目的は、粥を通して日韓の食文化の共通点や相違点を明らかにすることである。調査方法は、文献調査とフィールドワークを用い、両国の粥の特徴や食文化などを分析する。
   中間発表では、日韓の粥の定義や種類、行事食における粥、料理本からわかる粥の特徴について報告した。日本には、1 月7 日の人日の日に七草粥を、旧暦1 月15 日の小正月に小豆粥を食べる習慣がある。川越の神社では、粥を使ってその年の作柄や気候を占う神事が行われていた。韓国では、救荒食のほか、朝鮮王朝時代に初朝飯(チョジョバン)と呼ばれる朝食前の軽食としても食べられていることが分かった。そして料理本のレシピの分析から、日本は植物性副材料を、韓国は動物性副材料を使用する傾向にあることが明らかとなった。また韓国では、ごま油やコチュジャンなどの調味料を使用することも分かった。中間発表後は、日韓でのフィールドワークやインタビューを行い、現在の粥の実態や韓国人の粥に対する認識などを調査した。韓国では、粥は病人食や、行事食であると同時に、特別な料理として認識されている。かつては、家庭で作られていたが、現在では粥専門店やインスタントの粥など食の外部化が進んでいる。背景には、コロナ禍をきっかけに健康意識が高まったことがあるという。日本でも、粥を病人食や行事食として食べるが、非常食として認識されている点が韓国と異なる。日韓における粥は、副材料や調味料、粥に対する認識や実態まで似通った点もあれば異なる点もあった。その背景には、魚食文化、肉食文化、薬食同源などの考え方が影響していると考えられる。
   今回の発表では、日本・韓国でのフィールドワークやインタビューの調査から得られたことをもとに、粥の現状や認識を分析・考察する。そして、両国の食文化の違いが粥にどう影響しているのかを発表する。

アニマルウェルフェアに配慮した新たな飼育方法
乳牛の飼育を中心に

【実習背景】ある牧場直営店でアニマルウェルフェア認定乳製品を食べた際に、今まで食べてきた乳製品とは大きく風味が異なっており、なぜここまで風味が変わるのか疑問に思った。アニマルウェルフェアについて興味が湧き実習テーマとした。
【目的】近年提唱されているアニマルウェルフェアとは何かを明らかにし、従来の乳牛飼育方法と新たに提唱され始めた飼育方法などについて文献を通じて調査することで、畜産業界について理解を深めることを目的とする。さらに、アニマルウェルフェアに配慮した飼育法により飼育された乳牛の乳から作られる乳・乳製品のおいしさの秘密が飼育法にあるとすれば、それはどのような飼育法であるのか、について明らかにする。 【実習内容】中間報告では、酪農やアニマルウェルフェアの歴史や定義などについて文献を調査し、まとめた。文献調査から畜産とは農業の1部門であり、酪農の1部分で、酪農は乳や乳製品を生産する畜産のみを指す。家畜とは人間が野生動物を順化させ、飼育・繁殖させ肉や卵などを入手するために飼育する動物のことを指す。といった基礎的な物から、アニマルウェルフェアとは何かについて調査しそれらが求められる背景や現在行われている活動について調査した。その結果、現在行われている生産性を重視した飼育方法が問題視され、家畜本来の習性に合わせた生活環境を与える心身共に健康な飼育が提唱されていることがわかった。そしてアニマルウェルフェアに配慮した飼育を広めるため、国が農家へと行う呼びかけ以外にも、認証制度といった活動を行っている団体があることがわかった。しかし、それと同時に様々な課題点も存在している事がわかった。
   中間報告後は、乳牛の飼育方法がどのように行われているかを知るため、農場へ足を運び現場の方にお話を伺う事が出来た。そこでは、現在行っている2種類の飼育方法や搾乳場といった施設の見学など貴重な体験を沢山することが出来た。また一般販売されている牛乳を初めとする乳製品とアニマルウェルフェアに配慮した飼育をされている乳製品に大きな違いがあるのかを調査した。一般的に販売されている牛乳と比較した結果、味や価格以外にも乳脂肪分や殺菌方法の違い、乳成分にも細かな差があることがわかった。
   今回の発表会では、これまでの文献調査で得られた内容を踏まえ、アニマルウェルフェアに配慮した製品と市販品との差、現在行われている乳牛の飼育と推奨されている飼育方法の差、課題点について明らかにし、発表する。