向後千里ゼミ■特任教授
富士山信仰と食事との関係
御師料理の保存と継承に向けて

和食はユネスコ無形文化遺産に登録され、海外でも人気が高く、また、富士山への憧れを抱く外国人は多くいます。日本の文化として、富士登山や和食を食すことは貴重な体験とされています。今も昔も日本の象徴であり、日本人の憧れであり続ける富士山の魅力や、富士山を訪れる人々の目的を、信仰の観点からも考えたいと思い研究のテーマとしました。富士山北麓に位置する富士吉田地域の御師料理について調べ、御師料理を保存、継承、廃れさせないための活動を実施し、そして最終的には、御師料理を広めるためのCafeBARを企画コーディネートすることを目標としています。
有田焼からみる富士山御師の食文化
御師料理の保存と継承に向けて

料理雑誌やファッション誌を読むことが好きで、特集記事のテーマに合わせた統一感のあるおしゃれなテーブルコーディネートと素材や柄、形が多種多様にある器に魅力を感じていました。ゼミ活動で器のワークショップに関わったことにより日本の焼き物について興味を持 ち、研究をしたいと考えました。先行研究で富士山御師で使用されていた器は富士講から寄贈されたものが多いことを知り 、人力で物を運んでいた時代に、山梨県の富士山北口御師まちに比較的近くで生産されている焼き物ではなく、なぜ御師料理に佐賀県の有田焼の器が使用されていたのか疑問 に思い研究テーマとしました。
海産物の流通経路を追う
御師料理の保存と継承

海のない県に新鮮な海産物はどこから届くのでしょうか。海産物の流通経路に興味を持ち研究を始めました。御師料理には数種類の海産物が用いられていることが記録に残っており、先行研究からは静岡県沼津市との取引があったということが明らかになっています。技術の発達により交通手段や交通ルートは進化し続けていますが、昔から変わらず富士吉田市には新鮮な海産物が届いています。取引が具体的にどこで行われていたのか、流通経路を追及することで御師料理の継承に繋げたいと考えています。今後は先行研究との比較のために沼津市でのフィールドワークを視野に入れ、研究を進めていきます。
属人器とお米の文化にみる器と料理の関係

日本の食文化には、器の繊細な美、それを使った美しい盛り付け、しつらいともてなしの心、旨味、発酵調味料などを用いて素材の味を際立たせた調理技術などの優れた特徴があり、栄養バランスの良い健康的な食事として世界でも関心が高まっている。ゼミでのワークショップに参加したことや、授業で自分専用の食器を表す属人器というものを知り、器と料理の関係に興味を持った。ゼミの共同研究である「御師料理をはじめとした日本食文化の保存継承」を目的として、属人器の歴史、また日本食文化の代表とされるお米についての研究を進め、日本食における器と料理の関係について、新たな知見を追求していく。
山村の食生活と御師料理
御師料理の保存と継承

ゼミでは、過去数年間にわたり山梨県の御師料理について研究してきた。農文協の『聞き書き食生活全集』の集計と分析を通じて、山梨県の周辺である石川、富山、長野、静岡の食文化の違いを分析したいと考えた。例えば、山梨県周辺から魚介類が供給されている可能性があり、その影響で山梨県でも魚が豊富に食べられている。特に富士川流域では川魚が一年中利用されており、これが御師料理の特色の一つである。また、山村の暮らしでは雑穀が主食として消費されている。ほうとうなど、粉物が主食やおやつに多く調理されており、ハレの日には餅が食べられている。その辺りを探ってみたいと考えている。