令和4年度 食文化栄養学実習

守屋亜記子ゼミ■食生活文化研究室


伝統的包装材「経木」のこれから
~プラスチックとの比較から考える~

本研究の目的は、プラスチックによる環境汚染が問題となっている今日、伝統的包装材である「経木」が食品包装材としてどのような価値を持っているのか。また、未来に向けた経木の可能性とはいかなるものであるのか、この2点を明らかにすることである。文献調査では、薄経木は江戸時代の竹皮不足を受けて考案されたが、昭和時代の流通革命により衰退したことが分かった。またフィールドワークでは、最盛時の出荷額の下げ幅を上回る事業所数の激減により現存する経木店に需要が集中し、生産が追い付いていない経木店の現状が分かった。今回は経木の定義、薄経木の歴史や製造工程などについて発表する。

日常生活における郷土食と伝統工芸品の活用
木曾漆器と松本の郷土食を例に

本研究の目的は、地元である長野県の木曾漆器に松本の郷土食を盛り付けることを通して、日常の食生活に伝統工芸品と郷土食を取り入れる提案をすることである。これまでの文献調査とフィールドワークから、木曾漆器は室町時代から農業や林業に従事する人々の弁当箱など日常雑器として使われてきたことが分かった。現在は、ガラス製品や食洗器対応のものなど現代の暮らしに合わせた製品開発に取り組んでいる。今回は、これまでの文献調査とフィールドワークの内容から、伝統工芸品である木曾漆器の歴史や伝統産業の継承のため行われている取り組みについてと、松本の郷土食の歴史や特徴について発表する。

酢で身体の中から美しく
~ビネガードリンクから見る日韓の嗜好の違い~

本研究では、ビネガードリンクに着目し、日韓の食文化の比較から酢に対する認識及び嗜好の違いを明らかにすることを目的とする。近年、食料品店でビネガードリンクの品揃えが豊富になり、韓国産の商品も増加している。美容大国と言われる韓国からも商品が出ているがゆえに、より健康・美容面に効果的であると注目されるのではないかと考えた。しかし、文献調査から、酢の利用が定着し始めた江戸時代には酢が身体に良い効果を与えるものと認識されていたわけではないことがわかった。今回は、ビネガードリンクの定義や酢の歴史的変遷、現在のビネガードリンクの販売状況などについて発表する。

嚥下障害児に向けたおいしいレシピ提案
”まとまりマッシュ”を活用して

本研究の目的は、食べることや飲み込むことに障がいを抱える発達期の子供たちに「まとまりマッシュ」と呼ばれる食形態を用いてレシピを考案することである。文献調査より、嚥下障害児も味覚は正常に発達するため、年齢に応じて多くの味を経験させることが大切であること、まとまりマッシュは飲み込みを助けるために有用だが、見た目を良くする工夫が必要であることが明らかになった。フィールドワークでは、食事を楽しくおいしく食べてもらうためには五感からの情報も大切だと分かった。今回は障がいの定義、発達期の子供に向けた嚥下調整食分類が作成されるまでの歴史、嚥下食の実態について発表する。

観光地の銘菓と類似菓子の比較
北海道銘菓「白い恋人」を例に

本研究の目的は、銘菓に似た商品が数多くあるにも関わらず、なぜ人は観光土産に銘菓を選ぶのか、その理由を明らかにすることである。文献調査からは、土産の起源は江戸時代の伊勢参りであることや、砂糖の流通が土産の普及に関連していることが分かった。また、数多くの銘菓が存在する北海道は明治2年に開拓使が設置され、欧米の技術を取り入れたことで乳製品の生産が始まり、明治後期からの工業化により、菓子類が登場したことを知った。このことから、北海道は産業の移り変わりが土産の種類の変化に関わっていると分かった。今回は土産の歴史、北海道の産業と土産の関連性について発表する。