令和3年度 食文化栄養学実習

根岸由紀子ゼミ■栄養科学研究所


実は万能な発酵食品?甘麹の可能性を探る

  私の実家では味噌を手作りしたり、米麹を使った醤油麹という調味料を使っていることから、発酵食品を身近に感じていた。そして、栄養豊富な発酵食品のひとつに『甘酒』がある。甘酒は飲み物というイメージが強いことや味が気になる人もいるため、より日常的に手軽に取り入れる方法はないのか疑問に思った。そこで、甘酒を甘味料として料理に使うことで、甘酒をより身近に感じてもらう提案ができるのではないかと考え、研究に至った。『甘麹』は濃厚で粒状のままの甘酒のことである。研究題材を甘酒ではなく甘麹にした理由は、甘みをより強く感じるため、料理に使用するのに適していると考えたからだ。
  甘麹に含まれる食物繊維やオリゴ糖は腸内環境の改善を促し、ブドウ糖は疲労回復に役立つ。また、ビタミンB群やナイアシンは美肌効果がある。料理にもたらす味において、ブドウ糖は甘み、アミノ酸はうまみを加える。甘麹は市販品では濃縮甘酒で代用できるが、炊飯器で米麹と米から作る簡単な方法があるため、料理の試作を行う上では自家製のものを使用した。また、自家製の強みとして黒米や玄米、さつまいもの甘麹も試作した。発表では白米に加えて、特に見た目や味に違いがあった黒米とさつまいもの甘麹を紹介する。料理は「忙しい人でも手軽に健康」をコンセプトに、主菜や副菜・一品料理・飲み物・デザートまで20種類超の試作を行った。レシピを作る上で、1.「調理工程が少なく簡単に作れること」2.「甘麹以外は甘味料を使わず、常備調味料を使うこと」の2点を工夫した。甘麹がお米の甘みを活かした発酵食品であることから、「素材を活かした料理」であることを重点においた。考案したレシピはインスタグラムで公開している。自家製甘麹やレシピをきっかけに『甘麹』の可能性を感じてもらい、甘味の選択肢のひとつとして認識して頂けたら嬉しい。

知ってほしい「日本酒」の魅力

  酒は人類史上最古の発酵飲料とされており、古くから神への供え物として作られてきました。日本における農耕社会においても穀物が無事に収穫できたことを神に感謝し、翌年の豊穣を祈るための儀式に酒は使われてきています。
  私は成人を迎えてから今までで酒を飲む機会やそのような場に行く機会が増えましたが、周りに「日本酒」を選ぶ人の少なさに気付き驚きました。古くから飲まれている日本のお酒にも関わらず、好んで「日本酒」を選択する人は少ないように感じます。その原因は「日本酒」の「飲みにくそう」だったり「難しそう」といったイメージなどがあるのではないかと考えました。
  本実習では酒の中からテーマを「日本酒」に絞り「日本酒」が選ばれにくい原因やよく飲まれる酒の調査、日本のお酒の地域性や分類などを調べてきました。そこでは以下のことが分かりました。
  若者の多くは酒と聞いて思い浮かべるものの中に「日本酒」が含まれていることが多いのですが、進んで飲んだりする人は少ないです。飲まない理由としてはアルコール度数が高かったり、匂いがきつく飲みにくいなどが挙げられていて、「日本酒」を好む人が良いとする香りの良さなどを欠点としていることが多いのだと気付きました。また「日本酒」を最初から敬遠して飲まないという選択をする人よりも、飲んでみて苦手と感じる人が多かったです。
  そこで私は「日本酒」をもっと多くの人に身近に感じ更に楽しんでもらうために、飲みやすいカクテルメニューや個人に合った飲み方を提案します。特に自宅でも簡単にアレンジして楽しめるカクテルレシピを考案します。本実習を通して皆さんと様々な魅力や新たな発見をしていきたいと思います。

サスティナブルな生活のために太陽光で料理する

  皆さんは、ソーラークッカーという調理器具を知っていますか?聞いたことはあるが、使ったことはないという方がほとんどだと思います。ソーラークッカーは、ガスや電気を使うコンロなどとは違い、反射板などを用いて集光した太陽光を利用して調理を行う器具のことです。太陽光という自然エネルギーを利用しているので環境に優しいという利点があります。そのことから、海外ではすぐ薪にしてしまって森林にまで育たない地域や燃やすことで増える二酸化炭素の削減等の環境問題を背景として、普及が期待されているそうです。他にもガスや電気が使用できない災害時にも活躍を期待されています。日本でもソーラークッカーは災害時に活躍していました。災害時においてお湯を沸かし、温かいものを食べられるのはとても魅力的なことだと思っています。私の研究目的は、地球の限りある資源を守るために、環境負荷のない太陽エネルギーを利用して料理することなので普段からソーラークッカーを使っていけば災害時でもうまく扱うことができるのではないかと考えています。
  中間発表ではソーラークッカーの仕組み、集光型・蓄熱型・パネル型ソーラークッカーとそれぞれの特徴、ソーラークッカーの歴史、海外で利用されているソーラークッカーについて、水の温度上昇実験、実際にソーラークッカーでご飯がどのくらいの時間で炊くのかを発表しました。ソーラークッカーはガスや電気を使った調理と比べると時間がかかってしまいますが、焼く、煮る、ゆでる、蒸すなどといった調理工程ができます。今回は前回に引き続き、ソーラークッカーについての文献調査、夏と秋の水の温度上昇実験の結果を発表します。また、災害時で普段でも災害時でも役に立つレシピの提案をします。

もっと身近にバニラでひと手間

  皆さんは、バニラを何に使うでしょうか。きっと、アイスクリームやプリン、シュークリームといったお菓子を作るときに使う人が多いと思います。私もお菓子を作るときによく使いますが、実は料理にも使うことができるんです。そこでバニラをお菓子だけに使うのではなく、料理にも使えるようにレシピを考えました。まず、バニラと言ってもバニラにはたくさんのエッセンス素材があり、中間発表会ではバニラビーンズの他にバニラエッセンスとバニラオイルがあると説明しました。実は、この他にもバニラペーストとバニラシードというものがあります。これらは高価なバニラビーンズの代わりとして使われることがあります。今回は高価だけれど風味、香り共に一番美味しいバニラビーンズを使いました。
  料理を考えるときに近年、「持続可能な開発目標SDGs」が注目されているため、野菜の皮や残り物を使うなど、食材の無駄を減らして環境にも優しい料理を作ることができたらいいなと思いました。そこで、折角ならバニラビーンズを使ったエコな料理を考えようと思い、SDGsに関連した料理を作ることにしました。バニラビーンズは料理の上から掛けるものとして、バニラ塩とバニラシュガーを作りました。バニラ塩は塩にバニラビーンズを入れて塩に香りを移したもので、バニラシュガーは砂糖にバニラビーンズを入れて砂糖に香りを移したものです。普段は料理に普通の塩、砂糖を掛ける場合もバニラ塩、バニラシュガーにして掛けてみるとバニラの風味がして新たな味が楽しめると思います。バニラビーンズは高価なため、買う機会が少ないかもしれませんが、ちょっと贅沢したいときなどにぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。これを機にバニラは色々な使い方ができるということ知り、今後、料理を作るときに使ってみようかなと思っていただけたら嬉しいです。

さつまいも・皮もおいしく・いただけます

  この研究は、さつまいもの干し芋作りで出る廃棄部を活用して食べることができるように工夫をすることを目的とする。
  干し芋製造をしている工場または農家では、綺麗に皮のみを剥がしているのではなく可食部も同時に切り落とされている。また、さつまいもは食品成分表の数値をみると、皮むきの場合よりも皮つきの方が食物繊維とカルシウムが多く摂取できる。その他にも、さつまいもの皮には皮膚や粘膜の炎症を防止するビオチンや、抗酸化作用のあるアントシアニンなどが含まれており、栄養があることが分かる。
  普段は廃棄してしまっているが、栄養分が多く含まれるさつまいもの皮を捨ててしまうのは勿体ない。最近では、持続可能な開発目標SDGsの目標12「つくる責任使う責任」の食品ロス削減の取り組みも国を挙げて活発的に行われている。消費者庁はクックパッドの公式ページに野菜の皮や茎などを余すことなく使用するレシピを公開している。
  さつまいもの皮はパウダーにして調理をする方法と、そのままの形を調理する方法でレシピ提案をする。パウダー状にすることで扱いやすく、味が分かりにくくなり皮が苦手な人でも食べやすいという特徴がある。干し芋は通常、芋を収穫し低温で1ヶ月以上寝かせる。寝かせて甘みを出した後に蒸し、手作業で皮むきを行い、特定の厚さに身をスライスして最後に乾燥させるという製法である。この研究では、同じようにさつまいもを蒸した後に皮をむき、パウダー状に加工・調理をする。withコロナの時代になりつつある今、環境問題と戦いながら私たちにもできることはなんだろうか。そのための第一歩として私は少しでも無駄にしないで、自宅でも簡単に実践して活用出来る方法を提案する。