令和3年度 食文化栄養学実習

高島美和ゼミ■英語圏文化研究室


アンチエイジングでなりたい自分へ

  人は“年を取ること”をどのように捉えているだろうか。認知機能が衰え、身体の自由が利かなくなり、自信までも失ってしまう。そんなイメージを持つ人もいるだろう。実際に家族や親せきなど周囲の人が年齢を理由に趣味や夢を諦める姿を目の当たりにしてきた。しかし、加齢はけっしてマイナスな現象ではない。年を重ねた人というのは様々な苦労を乗り越え、人生経験を積み重ねており、むしろたたえられるべき存在なのである。老化を抑制することはできないと思うかもしれないが、生活習慣を見直し、病気を早期予防・早期治療することで若々しい状態を保つことは可能である。私の考えるアンチエイジングの定義は「無理に加齢に抗わず、年齢に応じた最高の健康状態でいること」だ。そして未来の可能性を諦めず、いつまでも自分らしくあり続けることがこの研究の意義だと考えている。
  そこで私は食生活の面からヘルスプロモーションを行い、少しでも多くの人に健康への関心を高めてもらいたいと考えた。高齢期になっても尊厳を失うことなく、アクティブな生活が送れるよう支援し、心身ともに健康長寿を目指すことを目的とする。前回の発表では、老化とはどのような状態を指すか、また病的なリスクを指摘したうえで生活習慣の提案をし、ウェブサイトで掲載している抗老化レシピの一部を紹介した。後期はライフステージ別に健康問題を調査し、その予防・改善につながる生活習慣やレシピを提案する。
  老化はけっして他人事ではなく、いずれは誰にでも訪れるものだ。しかし、自分の気持ちや行い次第で明るい未来が待っているのである。

名もなき料理、思考
〜料理に垣根は存在する?〜

  料理と言われて思い浮かべるのは誰だろうか。
  おそらく、「お母さん」というワードを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。古くから家庭における食事の支度や、台所を切り盛りしてきたのは女性である。近年、女性の社会進出が進み、SDGsにもジェンダー平等の目標が組み込まれている。しかし、食の部分に目を向けてみると、「台所=女性の場所」という意識は根強く残っているように感じる。なぜ女性だけの役割とされがちなのか?社会の流れが変化してきている今、こうした意識を変えていかなければならない。性別役割分業意識を問い直し、これからの食空間の在り方を探るため研究を進めてきた。
  近年、料理CMにもジェンダー観の変化が現れてきている。従来のCMでは、エプロン姿の「お母さん」という立ち位置の女性が料理を行うシーンが大半であったが最近では、男性の調理シーンをよく目にするようになった。 新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活様式も大きく変化した。在宅勤務が普及し外出がしづらくなったことで自宅で食事をする機会が増えた。日々料理をすることに対してプレッシャーやストレスを感じている人も多くいるのではないか。働き方や暮らし方が変わったいま、食卓のあり方が変わってきているのはごく自然なことである。これまでの常識に縛られるのではなく、誰も負担を感じることのない、家族が笑顔でいられる食卓づくりが本発表の目的である。
  そこで私は、料理へのプレッシャーを軽減し料理を楽しんでもらえるようなものな提案をする。誰が作ってもいい。忙しいときには楽をしてもいい。誰もが料理を楽しむ資格があり、料理に垣根なんてないことをテーマにした「名もなき料理」という料理動画を制作した。

その空洞、どう埋める?
〜シュークリームの展開と付加〜

  誰もが何らかの趣味嗜好を持っている。日常生活を少し豊かにしたり、質を上げたりするもの。私にとってそれはフランス菓子だ。パティスリーのショーケースに並ぶのは職人技で丁寧に作られた菓子。華やかで彩り豊かな生菓子に加え、一見目立たないが滋味深い焼き菓子の数々は、それを口にする人を魅了する。
  私はフランス菓子への理解をより深めた上で、さらに創作菓子を追究することで本当に美味しいお菓子と向き合うべく、実習を進めてきた。
  今回題材にシュークリームを選んだのは、フランス菓子の中で誰もが知っていてイメージしやすい既存の菓子だからである。また、シュークリームには更なる可能性を感じたのだ。
  シューの生地は実に面白い。材料を少し変えるだけで味や風味、硬さに大きな変化が起こる。作業工程は至って単純だが、その一つ一つに踏まえるべき要とその理由がある。そして最も面白いのは、この生地を作るには感覚がものを言う。温度管理や水分量の調整など、時間や分量が決められているわけではないので、体で覚えて作るものなのである。また、あまり知られていないだけであってシューとは発想次第でいくらでも味や見た目に応用がきく。作れば作るほどに新しいことが見えてくる。
  しかし私はこの発表を通して、「みんなにフランス菓子を是非作ってほしい」と考えているわけではない。強いて言うならば、私が言葉と写真を用いて魅せる菓子を、ギャラリーに来てアートを眺めるような気持ちでまずは楽しんでほしい。そうして終わった後には、自分が愛してやまない好きなことやものの根本的な魅力の発見や、時間をかけてそれを追い求める喜びを感じてもらうことが今回の発表の狙いである。

カレーが辿った華麗なる歴史
~インド、イギリス、そして日本へ~

  「好きな学校給食のメニューは何ですか?」という類のアンケートを行うと、ほとんどの場合において、カレーライスは昔から得票数ランキングの上位に入っている。カレーライスは日本の学校給食だけでなく、高速道路のサービスエリアやレジャー施設など、いたるところの食堂にも必ずと言っていいほど存在するメニューであるうえに、スーパーマーケットの売り場を覗けば数多くのカレールウやレトルトカレーが売られている。また、カレーライスのみならず、カレーうどん、カレーパン、カレーまん、カレーヌードルなど、日本にはカレー味に調理された料理も数多く存在する。今も昔も老若男女に親しまれているカレーは、もはや日本の国民食と言っても過言ではないだろう。
  では、「カレー」という言葉を聞いたときに思い浮かべる国はどこだろうか。インド、という人が多いのではないかと予想する。イギリス、という人はあまり居ないのではないだろうか。だが、固形のカレールウを溶かして作るような日本のカレーは、インドには無い作られ方のカレーだ。実は、日本でお馴染みの、小麦を炒めたルウを使った「とろとろした」タイプのカレーは、元を辿ればインドを植民地としていたイギリスから日本に持ち込まれた料理であるとされている。江戸時代末に開国した日本が明治維新を経て、国全体として西洋化を推し進めていく中で、様々な西洋料理と共にカレーライスも日本の食卓に徐々に浸透していった。
  長きにわたってインド、イギリス、そして日本において愛されてきたカレーという料理の奥深さを知るために、今回は、西洋料理を洋食という形で受け入れ、発展させてきた日本の視点を中心にカレーの歴史を紐解いていく。

異文化の出会いと混ざり合い

【背景】私は、明治時代の文明開化によって生まれた西洋風の建築物やファッションや、フランスの植民地時代の影響が残るベトナムの街並みなど異文化の混ざり合いから生まれたものに魅力を感じる。西洋美術に興味を持ち、美術館巡りを始めたことをきっかけにジャポニズムの作品と出会い、その美しさに魅了された。そこで「ジャポニズム」を研究テーマにすることにした。
  ジャポニズムとは、19世紀半ば、日本の開国をきっかけに日本文化が海外に流出したことにより、浮世絵や着物などの日本の美術品が西洋の美術、工芸、装飾など幅広い分野に影響を与えた現象のことだ。ゴッホやモネ、クリムトなどの日本でも有名な画家も日本の美術に影響を受け、日本美術の特徴を取り入れた作品を数多く残している。
【目的】私の研究の目的は芸術をもっと身近な存在にすることだ。 私自身、美術館に行くことが好きだと言うと「すごいね」と言われてしまったり「意識が高い」と思われてしまったりすることがあり、芸術をなんとなく敬遠している人が多いと感じている。しかし、私は美術館巡りを始めてから、芸術は知識があっても無くても、誰もが楽しめるものだと感じ、芸術をもっと気軽にたくさんの人と一緒に楽しみたいと思うようになった。
【内容】非日常のものだと思われてしまいがちな芸術を日常性の高い「食」に関連させることで親しみにくいという芸術がもつイメージを軽減し、興味を持ってもらうきっかけをつくりたいと考え、ジャポニズムをテーマとしたカップ&ソーサーを複数デザインした。 これらのデザインは、今までに調査したジャポニズムの作品や、日本の美術、特に着物の生地や浮世絵などを参考にデジタルイラストで作成した。

映画の中の食シーン
洋画からわかる食文化

  私は、映画の中に出てくる料理や食事シーンが印象に残るのはなぜか、どこで食べられている料理なのか気になったため、映画の中に出てくる食事・料理の食シーンについて研究を行っている。アメリカやヨーロッパを舞台した作品に絞って取り上げてきた。映画には必ずといっていいほど、食事をしているシーンや料理シーンが取り入れられている。その理由として私は、食シーンからその物語の時代背景や食文化、登場人物の日常を表現することが出来るからだと考えた。今回は前期の発表でヨーロッパを舞台にした作品を取り上げたようにアメリカの作品に観られる登場人物の食事風景や食材・料理シーン、食文化について観てきた。今回見てきた映画は、作品のタイトルに具体的な食材の名前が入っているものや登場人物の日常を映したような映画をとりあげる。作品のタイトルが食材になっている映画は、その食材に込められている意味や物語、また登場している食材や料理から見られる食文化や歴史等を観ていき、その時代や場所の特徴や文化を調査した。食材や料理のシーンが物語にどのような影響を与えているか見ていきそこから考えられる食シーンの意味を探っていく。そして、食シーンがなぜ印象に残るのか考察したことを発表する。
  改めて映画の食シーンには、たくさんの情報が料理や食事をしているシーンや食材にこめられていると感じた。今回観てきたアメリカの作品の食シーンを調査することにより、世界の食文化や歴史等を知ることが出来た。また、映画の中に映される食シーンから登場人物の日常や食生活などが観られ、設定された時代の食生活や食文化を知ることができる。

想いを込めたマカロンたち

  マカロンとはどんなお菓子かと聞かれるとどのようなイメージがあるだろうか?
  私はマカロンと初めて出会った時、見た目が可愛く、今まで食べたことがない新食感で、甘い生地と濃厚なクリームに感動し、唯一無二のお菓子というイメージを持った。しかし自分で作ったときには失敗続きで、手作りのものは一生食べられないのかと残念に思ったこともあった。マカロンの歴史にも興味を持ち調べてみると、お世話になったお礼に作り評判となったマカロン・ド・ナンシーや結婚式に献上されたマカロン・ド・サン・ジャン・ド・リュズなど、マカロンは様々な想いが込められているお菓子だということがわかり更に魅力を感じた。そこで想いを強く感じる瞬間である数々の行事をモチーフにしたマカロンを考案・発信することで、今までより作ってもらう、食べてもらうきっかけをつくれたらと考え研究を始めた。
  前期では数多くあるマカロンの歴史や地域性を調べ、知識を深めることで大切にしたい想いや魅力を再確認した。またマカロン作りの基礎を学びそれを活用して、バレンタインデーマカロンやお花見マカロンを試作した。誰かを想う気持ちをマカロンによって表現できるか、見た目や味に独自性があって作りたい、食べたいと思えるような作品になるかという点を特に意識した。
  今回は七夕やクリスマスなど様々な行事をモチーフにしたマカロンを提案する。またメレンゲ違いの基本のマカロン3種類やこれまで製作してきたマカロンをレシピサイトや作品集で発信する。これによって興味を持った人が身近に感じ、作ってもらうきっかけとなって欲しいと考えている。
  普段の生活のなかで、想いを届ける手段のひとつとしてマカロンを選択してもらえたらと思っている。

好みの紅茶を見つけよう

  ティーサロンを訪れた際にどの紅茶を飲むか悩んだことがある人も多いのではないだろうか。私もその一人だった。紅茶は産地や茶葉のブレンドの仕方、収穫時期によってさまざまな味や香りで私たちを楽しませてくれる。だからこそ、紅茶は奥が深く、多様な楽しみ方があるのだ。そこで私は、自分の好きな茶葉を見つけもうワンランク上の身近な特別感を楽しみたいと考えた。またこの研究を通し、今まで紅茶に興味がなかった人も紅茶の味や魅力を知り、紅茶と触れ合うきっかけを作りたいと考えた。
  私たちが普段飲んでいる紅茶は大まかにブレンドティー、エリアティー、フレーバーティーの3種類に分けることができる。今回の研究では、エリアティーと呼ばれる産地でわけられる紅茶に焦点をあて研究を進め、最終的にはフローチャートとレシピ提案をおこない、この2つを活用することで研究きっかけである、自分の好きな茶葉を見つけもうワンランク上の身近な特別感の演出を目指した。
  第一回発表では、茶葉の等級やクオリティーシーズンの説明と共に、エリアティーの中から代表的な紅茶であるダージリン、アッサム、ウバ、キームン、ディンブラ、ニルギリ、キャンディの7種類の茶葉について実際に試飲をおこない文献と照らし合わせながらそれぞれの香りや味の特徴について発表をおこなった。
  後期では、第一回発表で発表した7種類の紅茶から飲み比べをおこないそれぞれの紅茶の特徴の理解を深め、好みの紅茶を見つけられるオリジナルのフローチャートを作成した。また、フローチャートにて導き出された紅茶をより楽しめるよう、手軽でありながら、それぞれの紅茶と相性の良いお菓子のレシピ提案をおこなった。今回の発表ではその一部を紹介する。

イギリス料理と日本人の嗜好
〜日本人に好まれるイギリス食を求めて〜

  「イギリス料理はまずい。」誰しもが一度は耳にしたことのある言葉ではないだろうか。イギリス料理がまずいと言われてしまうことには様々な説がある。味が淡白なことや手がこんでおらず、味が薄いこと、そして特別な行事がない限り、普段は質素な食事をすることがイギリス人にとっての常識であることが大きな要因と言われている。しかし、私が7年前、ロンドンで実際にイギリス料理を食べた際には特段まずいとは感じなかったのだ。そこで、そのような固定概念がなぜ日本人についてしまったのか。日本人に美味しいと思ってもらえるイギリス料理を提案することを目標にした。
  第1回の発表では「イギリスの家庭料理はどのようなものがあるのか」という疑問から、イギリス料理にはじゃがいもが大きく関わっていることを知り、イギリス料理にじゃがいもが使われるようになった背景・歴史について紹介した。今回の発表は、イギリス料理店の市場調査の結果についてと、イギリス料理の中でも「フィッシュ・アンド・チップス」に着目していく。フィッシュ・アンド・チップスは薄力粉、ベーキングパウダーやビールを使った衣でタラなどの白身魚を揚げ、皮付きのフライドポテトを添えたものであり、本場ではモルトビネガーと塩をつけて食べるが、タルタルソースやケチャップなどのソース類を付けることもある。サクサクとした衣が特徴の料理である。これを日本人でも美味しいと思えるようソースや衣などに日本ならではの香辛料・調味料を混ぜ、自分なりにアレンジし、提案する。現時点で考えているのは、紅生姜をピクルスの代わりに使ったタルタルソースと、信州味噌とトマトを使ったソースである。香辛料を使ったものはまだできていないが、柚子胡椒やわさび、七味唐辛子を考えている。また、塩麹や西京味噌、すだちなども視野に入れている。

物語から読み解く食文化

  子供の頃、アメリカやイギリスなどの外国を舞台にした児童文学が好きで、よく読んでいた。それらの物語には、さまざまな食べ物や食事シーンが登場する。食が登場する場面、「食表現」を目にすると、見た目や味、香りを想像し、おいしさが頭に浮かんでくることがある。時には知らない食べ物の名前を目にして、どんなものなのだろうと想像が膨らむ。物語の中に食べ物が登場することによって物語に深みが出るのはなぜなのかを探ることを目的として、この研究を始めた。
  研究対象の物語として、児童文学の中から、若草物語全四巻、小公女、赤毛のアン第一巻の三作品を選んだ。前期には、この三作品の食表現を全てまとめ、登場した食べ物について知らなかったものを中心に、文献等を用いて調べ考察をした。また、英語の原文と日本語に翻訳された本との食表現の違いについて比較を行った。特に若草物語に着目し、作者の経歴や思想について調査し、若草物語の食表現には作者の経験に基づく考えや、理想の生活が反映されているのだと分析した。物語の舞台である19世紀アメリカの食文化についても調査し、アメリカの食の多様性が物語内でも反映されていることがわかった。
  そして今回は、登場する食表現について調査し考察したことを元に、物語内で登場人物たちが食したであろう料理やお菓子を再現し、どんな見た目や味をしているのかを確かめた。若草物語のそば粉のお菓子や、赤毛のアンのレヤー・ケーキなど、文字だけでは分かりづらいものや、日本人にあまり馴染みのない食べ物に着目し、試作及び試食をして考察を深めた。さらに、食表現は物語内において機能があることを知り、三作品に登場した食表現を役割ごとに3種類の機能に分類した。それに加えて独自に考えた機能を作成したので、その過程や結果について報告する。

紅茶を嗜み楽しむ
紅茶を楽しむためのお菓子 

家でゆっくりと過ごす時間が増えた今日、私の楽しみは丁寧に淹れた一杯の紅茶になった。インドのダージリン、スリランカのウバ、中国のキームンなどその日の気分によって飲みたい紅茶を選ぶ。もとより紅茶好きだった私は紅茶そのものについてより深く知り、紅茶を「嗜む」時間を「楽しむ」時間にするための歴史や工夫について研究することを目標とした。
  第一回の発表では、紅茶の茶葉の種類から茶園、グレード、収穫期による味や香りの違いについてと紅茶の淹れ方について発表した。収穫期による風味や水色の特徴がわかりやすいダージリン、茶園による繊細な違いがあるニルギリをそれぞれに比較する中で、紅茶の魅力について改めて気付かされた。
  紅茶専門店やティーサロンで紅茶を楽しむとき、欠かせないのはティーフードの存在だと思う。美しいケーキも、小さな焼き菓子も、豪華なアフタヌーンティースタンドも、紅茶を嗜む時間をより楽しいものにしてくれる。実際に市場調査をしていく中でもスコーンやサンドイッチといったティーフードがあるだけで、テーブルはぐっと華やかに感じられ、紅茶をより美味しくい楽しむことができた。これまでは紅茶のみに焦点を当てていたが、これらの経験をきっかけに世間で親しまれている紅茶とティーフードの組み合わせを私の紅茶を楽しむ時間の中に取り入れたいと考えた。そのための工夫として、スコーンを始めとした焼き菓子を取り入れることにした。
  本発表ではクリームティーの文化やアフタヌーンティーの歴史についてまとめ、市場調査で訪れたティーサロンを紹介する。また学園内留学を通して得た学びを活かし、粉の種類や成分に注目して試作した焼き菓子のレシピを紹介し、私らしい紅茶の「楽しみ方」について発表する。

WAGASHIの魅力

  私は大学3年生のときに学園内留学をし、製菓専門学校に通っていた。その授業の中でも特に楽しかったのが和菓子の授業だ。講師の先生が作り出す繊細な和菓子に魅了され、和菓子について深く学びたいと思った。
  しかし、調べていくなかで気になることを見つけた。それは近年日本の伝統工芸の需要が減少していっているように、和菓子業界も盛り上がりに欠けていることだ。理由として、「後継者難による廃業が目立つ」「売り上げが伸びていない」などがあげられる。経営者の高齢化やリーマンショック以来低迷している贈答品や社用の需要が影響している。その中で、和菓子は海外の需要が増加している。訪日観光客によるインバウンド需要の増加や輸出により知名度が上がり、インターネット・SNSで「WAGASHI」と検索すると様々な姿の和菓子が投稿されている。和菓子の卓越した職人技や四季の移ろいを表す芸術性が見ても楽しく食べても美味しいと評価されている。色々調べてみると、海外独自に発展した独自のWAGASHIがあることを発見した。いわゆる洋風和菓子だ。たとえば寿司のカルフォルニアロールが海外で発展し日本に逆輸入してきたように、WAGASHIも逆輸入したら面白いのではないかと思い、専門学校での経験を活かし家でも簡単に作れるWAGASHIのレシピ制作を行う。
  6月の発表会では「紅茶どら焼き」を発表した。紅茶の茶葉の香りとあんこの風味が程よくお互いの良いところを引き出してくれるレシピを作成できた。今回の発表では「フランボワーズ羊羹」「もなかふろらんたん」「パイまんじゅう」以上3種類のレシピを発表する。進化したWAGASHIのレシピを提案し一人でも多くの人にWAGASHIの魅力を伝えられればと思う。

イギリス料理はおいしい!?
~食空間や食器と関連付けて~

  多くの人が、一度は「イギリス料理はまずい」と聞いたことがあるのではないか。
  現代でも、イギリス料理が「まずい」と言われてしまっている理由は歴史的背景にあると言われている。19世紀のイギリスでは、質素な生活こそ美徳であり、ジェントルマンは質素であるべきと考えられ、その習慣にあこがれた中流階級の人たちも真似するようになり、食事をエネルギー摂取としてとらえる傾向にあった。イギリス料理の評判が良くない理由には、次の3点が挙げられる。「食にあまり興味がない」。自分で味付けをすることが普通であり、しっかり味付けをする文化がないため、「味付けが薄い」。調味料をあまり使わず素朴なイギリス料理が受け継がれているため、あまり手の込んだ調理をしない。このことから、多くの人が「イギリス料理はまずい」と認識している。
  そのイメージを覆すために、イギリスのブランド食器である「WEDGWOOD」のワイルドストロベリーとフェスティビティを使用して、イギリス料理を魅力的に演出することにした。
  イギリスの伝統菓子3種と料理2種を試作した。菓子では、見た目が素朴なことから、好まれづらいのではないかと感じた。そこで、使用する材料の季節のコンセプトやデコレーションを変え、見た目から「おいしそう」と感じて貰えるように工夫した。料理では、伝統的な「フィッシュアンドチップス」にそえるソースを考え、日本人にもあきずに食べられるように和風にアレンジし、食事として親しみやすいようにした。そして、単色であったフィッシュアンドチップスに彩を加えることで、「ごちそう」に変化させた。
  これからも、イギリス料理が多くの人から、「おいしそう」と興味関心を持ってもらえるように魅力を広げていきたい。