令和3年度 食文化栄養学実習

衛藤久美ゼミ■国際協力学研究室


惣菜と焼菓子のお店で子ども食堂を開く

  大学卒業後に友人と一緒に惣菜と焼菓子の店を経営し、その売り上げや売れ残り商品で子ども食堂を開くことを希望している。主に友人は惣菜、私は焼菓子を担当する。本実習の目的は、惣菜と焼き菓子の店で子ども食堂を開くための準備をすることである。
  中間発表後、子ども食堂の運営方法や店の収支計画について勉強し、焼菓子の賞味期限実験を行った。
  まず、子ども食堂のコンセプトや開催頻度などを検討した。もともと子どもの貧困に関心があったため、貧困支援を支柱に据える予定である。その他、孤食対策や子育て支援にも一役買える存在になれたらと考えている。ごはんの量が少ない・栄養的質が悪い・一人でさみしい…そういう思いをする子どもを減らしたい。開催頻度は、週に一回を予定している。店舗経営もあるため毎日行うのは厳しいが、できるだけたくさん行いたいという思いで設定した。
  同時に、その財源となる店の収支計画も練り、活動を両立させていくためのメソッドを勘案している。
  また焼菓子は、中間発表時は春先のまだ気温が高くない頃に実験したが、今回は、気温・湿度共に高い夏季に行い、常温と冷蔵保存の2パターンで実施した。焼成直後と1,2,3,4週間後に試食し、味の確認を行った。キャラメルケーキ、のだ塩チョコサブレ等は常温・冷蔵共に4週間後までおいしく食べられた。スコーンは5日後には食感が悪くなってしまった。また、春の実験では常温で4週間後もおいしかったレーズンバターサンドだが、1週間後にはクッキー生地がしっとりしすぎてしまったため、途中から冷蔵のみで実験した。季節によって、保存の仕方を変えなければならない焼菓子があることが分かった。
  私たちの商品や子ども食堂によって、笑顔になる人がいればと思っている。

楽しみながら学ぶ食育

  私は祖母が食べ物を食べられなくなったことによる老衰で亡くなった経験から、食の大切さを痛感した。そのことから、食の大切さについて子どもの頃から学ぶ機会を作りたいと考えた。そのため、子どもが興味を持ちやすいおもちゃを使用した食育をすることとし、おもちゃへの興味や学習能力を考慮して対象年齢を小学校中学年にすることとした。この実習の目的は、楽しく学べる食育プログラムを作成・実施することである。中間発表会では、子どもの嫌いな食べ物と食育プログラムの全体概要について発表した。今回の発表では、食育の内容に関する文献調査と食育プログラムの具体内容について発表する。
  実習1では、食育の内容に関する文献調査を行った。学校での食育の実践指導や授業づくりの資料などの情報が掲載されている「食育フォーラム」(健学社)の2020年10月~2021年9月までを読み、子ども向けの食べ物についての説明の仕方などの理解を深めた。
  実習2では、各食育プログラムの再構成を行った。新型コロナウイルスの感染状況をふまえ、対面形式ではなく、動画形式へ変更した。このことにより、時間や内容の再構成が必要となり見直しを行った。食育プログラムは全4回の構成とし、テーマは、野菜、果物、肉、魚の各パワーとした。動画は、学習者が見やすい文字の大きさや学習者に寄せた話し方、イラストを使い説明をするなどの工夫をして作成し、ゼミ生の意見を取り入れながら改善を重ねた。今回の発表では、食育プログラムの一部の内容を紹介する。
  今回の実習で食育プログラムを作成するにあたり、学習者へ向けた話し方やわかりやすく説明する方法など難しい点を多々感じた。この発表を通し、食の大切さや楽しく学ぶことの重要さに理解を向けてもらえたらと思う。

野菜おやつを楽しくクッキング
〜野菜嫌いを克服して食べ残しを減らそう!〜

  私は大学の授業で食品ロスについて学び、何かできることはないかと考えるようになった。文献調査を進める中で、家庭系食品ロスは「食べ残し」が最も多いこと、食べ残しの原因は様々あるが、子どもの野菜の好き嫌いが一つの原因であることがわかった。そこでこの実習では、子どもの野菜嫌い克服のための親子で楽しんで作れる「野菜おやつ」のレシピを考案することを目的とした。今回は、野菜おやつのレシピと、その情報発信について発表する。
  子どもの嫌いな野菜を文献で調べた結果、ピーマン、トマト、ネギが上位に挙がっていたことから、この3つの野菜を使ったおやつレシピを考案することとした。嫌いな野菜を段階的に食べられるように、一つの野菜を3つのSTEPに分けてレシピを考えた。STEP1は野菜の原型があまり残らないもの、STEP2は野菜の食感が少し残るようなもの、STEP3は見た目にも食感にも野菜の存在感があるもの、とした。ピーマンでは、1. ピーマンのスノーボールクッキー、2. ピーマンのチーズカップケーキ、3. おうちで簡単ピザ、トマトでは、1. トマトシフォンケーキ、2. ひと口トマトラスク、3. ひと口キッシュ、ネギでは、1. 肉包み焼き、2. ネギみそチーズスコーン、3. 油揚げでピザ風ネギじゃこチーズ、とした。これらのレシピをわかりやすく、誰でも作りやすいように冊子にまとめ、情報発信をすることとした。
  実習を通して、野菜は甘いおやつから甘くないおやつ全てに使える、万能な食材であることがわかった。また、おやつ作りをする中で改めて料理の楽しさや難しさを実感することができた。今回作成した冊子や発表を通して、料理を楽しいと思ってもらい、さらに野菜へのイメージが変わり、少しでも「食べ残し」が減ることを願っている。

食×童話
~映画のワンシーンを食で表現~

  数年前に知人の偏食の子にチェシャ猫をイメージした料理を作ったところ「まだちょっと嫌いだけど、楽しかったから食べられたよ」と言ってもらった経験から、本実習では「楽しくておいしい・自分でも作ってみたい」など思ってもらえるような食を、童話と関連付けて提案することを目的とした。
  季節ごとに童話を基にした映画のワンシーンを決め、それを一食で表現した料理をこの実習ではイメージ料理と呼んでいる。実習を進めていく中で、対象は子どもから大人に変更し、大人が嫌いな野菜や旬の食材を使った料理を提案することにした。
  中間発表では夏と秋のイメージ料理について発表した。夏のイメージ料理は、ランチを想定し、映画《アラジン》の大団円を迎えたシーンを表現した。秋のイメージ料理は、ディナーを想定し、映画《美女と野獣》のダンスシーンを表現した。今回の発表では、冬と春のイメージ料理について発表する。冬のイメージ料理は、ディナーを想定し、映画《スノーホワイト》のスノーホワイトが女王と戦うシーンを表現した。寒い季節にほっと一息つけるような温かい料理を作った。春のイメージ料理は、モーニングを想定し、映画《アリス・イン・ワンダーランド》のお茶会のシーンを表現した。忙しい朝に簡単に作れるように電子レンジでできるレシピも考えた。夏と秋のイメージ料理と同様に、作った料理は栄養価計算や四群点数法の点数、PFC比率の計算を行い、家族からのフィードバックを基に料理の改善を繰り返した。さらに、これまでに作った4つの季節のイメージ料理のレシピをまとめたレシピ集を作成し、QRコードを使って情報発信することとした。この発表を通し、童話が好きな方や苦手な野菜がある方、それ以外の方にも少しでも魅力を感じていただき、日常の中に取り入れていただけたらと思う。

知って実践、フレイル予防
〜楽しく、健康で、充実した生活を〜

  私は祖父が病気になったことをきっかけに、高齢者の生活や食事に興味を持った。そのため、高齢者を対象に実習を行うこととした。この実習では、対象者にフレイルの予防法を知って実践してもらうための情報を発信することを目的とした。前回の中間発表では、フレイルの概要、具体的な対象者、フレイルの予防法について「食事」「運動」「社会参加」に分けて報告した。今回は、フレイルを予防する食事、健康あさか普及員の活動、作成した冊子について発表する。
  実習1では、フレイルを予防する食事の献立を考案した。献立作成では、DVS(食品摂取多様性スコア)で提示されている10種類の食品と前期高齢者の食事摂取基準を参考にした。何度か試作を重ねたところ、摂取カロリーが低い、摂り忘れる食品があるなどいくつかの課題点が見つかった。そこでどのような食品を食べたかを確認できるチェックシートを作成し、3回の食事に加えて間食もうまく組み合わせることにした。
  実習2では、朝霞市の「健康あさか普及員」に申し込みをした。健康あさか普及員とは、あさか健康プラン21(第2次)の健康づくりを推進するボランティアとして、創設されたものである。
  実習3では、フレイルの予防法と実習1で考案した献立のレシピを記載した冊子を作成した。文字の大きさなどを考慮し、対象者が読みやすく使いやすいように工夫した。
  今回の実習を通して、改めて食の大切さを痛感した。フレイルを予防する食事といっても、何か特別な食べ物があるわけではない。普段の食事をバランスよく食べることがとても大切である。作成した冊子や発表を通して、一人でも多くの人にフレイルの予防法を知って実践してもらえることを願っている。

SDGsできることから始めよう!
プラスチックごみ削減に向けて

  私はSDGs(Sustainable Development Goals)の目標14「海の豊かさを守ろう」に関心を持ち、プラスチックごみ問題を知った。プラスチックごみはどのような工夫をすれば削減可能かを考えるため、実習テーマとすることとした。本実習の目的は、プラスチックごみ問題の理解とプラスチックごみ削減の工夫の検討である。中間発表ではプラスチックごみ問題の現状に関する調査と自身のプラスチックごみ量調査の結果について発表した。
  今回はまずプラスチックごみの処理過程を調査するために、ある自治体の廃棄物処理業協業組合の圧縮梱包施設を見学して話を伺った。そこでリサイクルの向上には、正しいごみの分別こそ重要だと学んだ。
  次に、日本のリサイクルの現状を調査した。プラスチック循環利用協会の推計によると、2017年度の日本のプラスチックごみリサイクル率は約84%で、そのうち58%がサーマルリサイクルで処理されていた。サーマルリサイクルとは、プラスチックごみを燃やした時に生じる熱を再利用する方法である。欧米ではリサイクルの概念に焼却を含めないため、これをリサイクルとしないのが一般的で、日本は欧米の基準と異なり独自の方法でリサイクル率を上げていることが分かった。
  さらに、食品ラップの代替品として蜜蝋ラップを試作した。蜜蝋ラップは綿布に蜜蝋を染み込ませたもので、洗って何度も使用できる。初めは蜜蝋のべたつきに抵抗を感じたが、使用すると十分にラップの用が足りるだけで無く、食材を良い状態で保存できることが分かった。
  実習を通して改めてプラスチックごみを削減することは非常に難しいことだと痛感したが、代替できる物や方法は沢山あるので、意識して生活をすれば少なからずプラスチックごみは削減できると感じた。