令和3年度 食文化栄養学実習

浅尾貴子ゼミ■フードマーケティング研究室


おいしさ広がる♪フルーツ料理のマル秘テク
カフェメニュー開発と素材の組み合わせに関する研究

  カフェ・カンパニーが運営するフタバフルーツパーラー新宿マルイ本館店で、食事メニューの開発を行いました。アクセントになる香り素材を加えた、よりお客様に喜んでいただけるオリジナルのフルーツメニューです。春は「オレンジ香るサーモンのサラダビビンバ」、夏は「桃とローストポークのパワーサラダライス」、秋は「林檎とデーツの秋色パスタ」、冬は「鴨肉のグラタンドフィノア~ジンジャー香る苺ソース~」を開発し、販売することができました。
  メニュー開発を1年経験して痛感したことがあります。お客様にとって魅力的なメニューを考案することに加えて、店舗の作業に配慮した工夫が欠かせないということです。誰が調理しても同じに仕上がりになるように安定して作れなければ、いつも良い状態の料理を提供することができないからです。調理工程の簡略化や、食材を増やしすぎないことや、仕込みの作業量を極力減らす工夫が必要でした。
  フルーツ料理のレシピ考案では、肉や魚など主素材との一体感を出すことがとても難しかったです。似た素材同士はバランスがとれるとされていますし、対比になる味も相性が良いという法則を生かしました。実際に、旨味や塩味をもつ出汁類や調味料、ジャムやフルーツソースなど甘みのある副素材を使用して、主素材と副素材にまとまりを持たせました。例えば秋は、林檎とデーツをパスタに馴染ませるため、ソースにフルーツピュレを加えて調和をとりました。夏は桃に黒酢を使用し、甘さと酸味でメリハリのあるメニューを開発しました。
  1年を通して味のバランス調整には苦労しましたが、何度も試作を繰り返し、完成しました。開発メニューが実際に販売されたときは、大きな達成感と喜びで溢れました。

気になる→欲しい→買いたい→美味しい!
食品メーカーにおける販促レシピと料理動画作成の実際

  豆腐メーカー「三和豆水庵」のレシピ動画作成や、「ヤマサ醬油」などが開催する料理コンテストへの応募、新商品プレスリリースと実際の商品との比較調査、香辛調味料メーカー「エスビー食品」のオンラインセミナーの企画担当とSDGs企画のサポートを行いました。これら1年の活動から、企業側の立場で商品を知ってもらい、買ってもらい、美味しく食べてもらうための取り組み方法をまとめました。
  三和豆水庵でのレシピ動画では、働く女性をターゲットに電子レンジでできる副菜料理を手がけました。商品特長を活かすことに加えてレシピを3~4工程に絞ること、見た目の彩りと動画始まりの画像による引き付けを意識するといった、SNSならではのポイントを再確認しました。
  料理コンテストでは、開催目的や主要食材を活かすと同時に、対象人物を設定し、イメージを膨らませることで、具体的な提案にすることに力を入れました。
  エスビー食品では、会員に身近に感じてもらえるような企画に仕上げていくため、度重なる打ち合わせとアンケート調査と実験も行い、時間をかけて改善しました。ターゲットのイメージを軸にした一貫性ある提案にするとともに、企画過程を重要視し、説得力ある提案にしていくことの大切さを感じました。
  1年で体験した数々の企画やイベントを通じて、企業側の開発意図や目的、商品詳細を理解することが、販促の企画をする前提として大切であることがわかりました。また、世の中の動きからお客様視点で実際の利用シーンを考えてお客様に喜ばれる使い方を考案し、動画やレシピを通じて伝えることには手間がかかり、工夫が必要であることを痛感しました。お客様目線と企業目線の両方から、プロとしての仕事のテクニックを学生のうちに経験できたことが実習の収穫です。

もっと料理にさつまいも!カフェのメニュー開発
甘みのある素材を料理に生かすコツと企業の仕事の実際

  カフェ・カンパニーが展開するWIRED KITCHEN川越アトレマルヒロ店で、立地イメージを生かして、さつまいもと醤油をテーマにしたメニュー開発に取り組みました。
  まず文献調査を行い、川越芋の歴史と川越で栽培されている品種の特徴、醤油メーカーとその製造方法を調べました。また、担当店舗のアルバイトインターンの経験を通じて、キッチンの作業や使用する食材、開発する上での制約についても勉強しました。その中で、仕事を円滑に進めるためには、店舗スタッフと積極的にコミュニケーションをとることも重要だと実感することができました。
  春メニューは、さつまいもの甘味と醤油と昆布茶を隠し味にした和風クリームソースを掛け合わせたパスタを考案しました。食べ飽きないように花山椒でアクセントをつけ、季節感を演出するためにパステルカラーの食材を選定したことが工夫です。夏は、さつまいもとハーブを組み合わせる試食テストも行い、ローズマリーの風味をつけたアヒージョ風オイルパスタを販売しました。鷹の爪の辛味と醤油をアクセントにして芋の甘味を引き立てたところや、夏野菜を使って食べ応えや食感の変化を感じてもらえるように調整しました。秋メニューはカフェ丼スタイルの料理で、さつまいもにバジルを合わせたり、ターゲットの女性が好むチーズを使ったり、ワンスプーンで食べられるように設計しました。冬メニューはシュクメルリ風ごはんで、スパイスと醤油を隠し味に使ってさつまいもの甘さを生かしつつ、食事として成立する味のバランスを考えました。
  1年以上の活動を通じて、企業のメニュー開発には料理を考案する技術以外にも、多くの事務作業と正確な書類の作成、関係者と信頼関係を築くために感謝や礼儀の大切さを実感できました。

美味しそうってなんの「層」?
デザートにおける食材の重ね合わせ効果と法則の研究

  「和食レストランとんでん」でデザートメニューの開発を行い、「層」の構成パターンを研究しました。また、秋メニューのかき氷を考案し、商品化することができました。
  デザート商品を開発するにあたり、人気店や専門店、チェーン店のパフェなど、層状のデザートを調査しに行きました。さらに、コンビニやスーパーなども幅広く調査し、層の役割である味わいの複雑さと見た目の美しさについての法則を探しました。食材の重ね方は、甘味の次に酸味や苦味といったように、対比の味を組み合わせていくことで飽きずに食べ進められます。さらに、食感の要素をプラスすることで、複雑な味わいを演出できることが分かりました。また、様々な色や素材が重なりあった見た目は、食べる前からワクワク感が得られます。
  主にかき氷とパフェの提案機会をいただき、かき氷については、実際に販売することができました。チェーン店の商品開発を経験して、新しいパターンのデザートを提案したくても、ロスを抑えるために新規の食材や珍しい食材を扱うことは難しく、全てを実現することは困難だと分かりました。それに加え、作り手はプロでないため、簡易的な作業工程にすることも求められました。このような難しい条件はありましたが、限られた範囲内で工夫をしました。例えば、商品化したかき氷は、モンブランをイメージしたもので、3層にすることで、甘味と香りの組み合わせを楽しんでいただけるようにし、ナッツで食感に変化をつけました。1年半を通して、企画から販売まで体験しましたが、パティスリーやコンビニが競合する中で、様々な制約があるチェーン店でのデザート商品開発の難しさを痛感しました。食材の選択や組み合わせ方、オペレーション方法など、考え方を鍛えられた貴重な体験です。

地球に優しい新定番☆大豆ミートのメニュー開発
ヴィ―ガン料理考案と商品化のポイント

  カフェ・カンパニーが運営する新宿LUMINE1「wired bonbon」のメニュー開発を担当しました。植物性食材のデザートを扱う店舗でもある為、大豆ミートを柱にしたヴィ―ガンメニューを提供することに決めました。
  春は「和風べジ唐揚げプレート」、夏は「オレンジ香るべジヤンニョムプレート」、秋は「秋色煮込みべジバーグプレート」、冬は「温かいスープのセット」を考案し販売することができました。メニュー考案では、野菜の旨味成分活用や加熱方法の工夫、アクセントのある味付けを意識しました。例えば、大豆ミートの下味に野菜出汁を使い、揚げ調理で旨味を出し、オレンジママレードを使ってオリジナリティを出すなどです。大豆ミートの下味にはどれが向いているかのテストもしました。ヴィ―ガンという制約の中で、美味しさやカフェらしい華やかな盛り付けをすることの難しさも実感しました。さらには、店舗でアルバイトもしながら、作業と食材を把握しながら、お客様のニーズを考えました。多くの店舗調査をしたり、スタッフとのコミュニ―ケーションを大切にしたりしながら、商品化までを行うことは、想像以上に大変なことの連続でもありました。約1年半のゼミを通し、様々なメニュー考案に挑戦して、広い視野で考える必要性を実感しました。担当企業と店舗の仕事の他にも坂出金時いものアイディアコンテストに応募したり、オンラインゼミではテーマに沿った料理の考案もし、エスビー食品のイベント企画ではベジタリアン鍋も考案しました。多くの取り組みを通じて、商品開発ではお客様が求める事と店舗での実現可能性のバランスをとることが重要であり難しいと理解しました。メニュー開発の実際は楽しいだけではありませんでしたが、これらの貴重な経験は、就職後の仕事でも生かせる自信になりそうな気がしています。

レシピに込められた真相をリサーチ!
〜ユーザー需要を考えたメーカーの販売促進とは〜

  商品を買ってもらうためのレシピ考案と動画作成等の販売促進企画、料理コンテストの応募に取り組み、その方法と結果をまとめました。食品メーカーとしての企業側と利用者側の視点のバランスを取ることを心がけました。
  昨年11月から1月は、豆腐メーカー「三和豆水庵」の仕事で、レシピ動画を作成しました。商品の良さを引き出す難しさがありましたが、思わず目を留め、作ってみたいと思ってもらえるような、動画の長さ や料理の色合いも意識することが大事だと実感しました。1月から3月は、オンラインゼミになり活動が制限されてしまいましたが、ゼミ生同士で出し合ったテ ーマに沿った料理を自宅で作り、発表をするなどの工夫を凝らしました。アイデア力と、調理技術向上に繋がりました。4月から7月は、評価されるレシピのポイント検証も兼ね、食企業などの料理コンテストへ応募しました。全国焼肉協会主催の焼肉料理コンテストでは、「焼肉屋さんで食べたい麺料理」をテーマにトマトをふんだんに使用した「さっぱりシメる!真っ赤なイタリアン冷麺」を考案し、見映えやレシピにも工夫を 凝らして入選することができました。7月から9月は、「マルハニチロ」の冷凍枝豆を使用したアレンジレシピを考案しました。日本人の健康的問題と枝豆に豊富な栄養素に着目し、家族と食卓を囲んで健康的な食事を楽しめる工夫をしました。
  販売促進には、異なるユーザーのニーズや利用シーンを具体的に想像すること、自分がユーザーであった時にどんなことを求めるかを考えた情報発信をすることが重要だと考えました。また、情報ツールが多くなった今、写真・動画、SNS媒体を使い分ける事で、より良い販売促進に繋がると実感できました。