病院管理栄養士
IMSグループイムス葛飾ハートセンター 栄養科
福勢麻結子さん(2012年卒業)
病院の管理栄養士の仕事は、治療食の提供や栄養指導、栄養療法の提案等で、治療の一部を担います。
治療食は、塩分制限食や糖尿病食、腎臓病食、刻み食やミキサー食等患者様の病態に応じて提供しています(当院は直営の為、管理栄養士も調理業務を行っています)。
栄養指導は、入院や外来で通院している患者様に食事のアドバイスをしたり、集団栄養指導として「心臓病教室」も開催しています。
また、チーム医療に参加することも管理栄養士の仕事の一つです。特に栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)は管理栄養士が中心となり、医師、看護師、薬剤師等の多職種とともに、栄養障害やそのリスクを抱えた入院患者様の支援をしています。栄養障害の患者様の中には、口から十分に食事を摂ることができない方もいますので、特にNSTの管理栄養士は、食事以外の栄養療法の知識も必要になります。
NSTでは、多職種がそれぞれの専門性を活かして意見交換をしますので大変刺激を受けます。また、患者様の良好な経過をみることでやりがいも感じます。
Q. 仕事上で印象深いエピソードには、どんなことがありますか?

過去の失敗や苦手意識に捉われずに前向きに取り組むことは、仕事をする上で大切なことだと思います。

管理栄養士は、医師へ栄養療法を提案することも仕事の一つですが、特にNST 専従となると避けては通れません。臨床が苦手な私にとっては、最も苦痛な業務でした。医師からの質問に満足に答えることができず、不甲斐無い思いをすることは多々ありました。しかし、知識不足はその都度補い、速やかに医師へ報告するように努めました。この経験は結果的に知識を深めることになり、糧となりました。また、幾度も経験を積むことで徐々に自信もつくようになりました。

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Q. 就職後「女子栄養大学で学んでよかった」と思ったこと、
また理由を教えてください。

「食は生命なり」を教育理念としていますが、臨床においてはまさにその通りだと痛感しています。

手術やリハビリ等日々の治療に耐えるためには栄養は不可欠ですし、治療の基盤になります。患者様は食欲が無い方や食事を摂れない方がほとんどです。管理栄養士は栄養の専門家ですので、栄養不良やそのおそれのある患者様への栄養療法を、積極的に医師や多職種に提案する必要があります。最適な栄養療法を提案し、「実践していく力」は本校で養われたものだと思います。

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Q. 具体的な職業について考え始めたのはいつごろですか?またそのきっかけはなんですか? そして、いまその職業に就いていますか?

本学に入学した当時からスポーツ選手の栄養管理をすることが夢でした。就職先としては商品開発の道を志望しており、スポーツ飲料や栄養強化食品などでアスリートのサポートができればと考えていました。大学3年生の10月ごろから就職活動を始め、様々な企業の採用試験を受けましたが、いずれも内定をいただくことはできませんでした。

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Q. あなたが働いている職場はどんなところですか?。

病床数52床の循環器・心臓疾患の専門病院で、循環器内科、心臓血管外科で構成されています。

小さな病院ですが、その分医療スタッフ間の連携を密にとることができ、コミュニケーションを取りやすいことが魅力だと思います。

栄養科の職員数は管理栄養士5名、栄養士1名、パート2名です。1日の基本的な人員配置は、調理、仕込みに管理栄養士又は栄養士が各1名、栄養指導を含めた事務作業、NST専従に管理栄養士が各1名、盛り付けや清掃などをパートが担当しています。出勤時間帯は大きく分けて早番、日勤、遅番となります。

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Q. 現在の職業を選んだきっかけはなんですか?

臨床は苦手でしたので、病院への就職は志望していませんでしたが、現在の職業を選んだきっかけは2つあります。

まず、就職活動に難渋したことがそのうちの1つです。採用試験は、給食会社、中小企業、公務員、保育園等様々受けましたが、いずれも内定をいただくことはできませんでした。現在の職場に決まったのは大学4年生の12月末で、最も避けていた臨床の道を選ばざるを得なくなりました。

2つ目は、資格を存分に発揮したいという思いからでした。管理栄養士の活躍の場は多岐にわたりますが、中でも直営病院は管理栄養士としての知識や技術を全て必要とされます。当時の私は非常に自信がありませんでしたが、その反面憧れも抱いていたこともあり、採用試験を受けました。

苦手なことに向き合うことは辛く不安も多いものですが、就職活動での苦労を考えると、仕事の困難は幾度も乗り越えることができました。

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Q. どんな時に仕事のやりがいを感じますか?

患者様の良好な経過を見ることができたときは大変やりがいを感じます。

臨床では、主治医の治療方針に基づき様々な職種が関わり、必要に応じて提案をしていきます。管理栄養士はその一部を担いますが、十分に食事を摂ることができなかった患者様が回復され、退院後に元気な姿を見せに来てくださると非常に嬉しく思いますし、仕事の活力になります。

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Q. 仕事がある日の平均的な1日のスケジュールを教えてください。
Q. 略歴と職務経験を教えてください。

【略歴】
平成24年
3月 女子栄養大学実践栄養学科卒業(管理栄養士国家試験受験資格取得)
4月 IMSグループイムス葛飾ハートセンター栄養科入職
5月 管理栄養士国家資格取得
平成28年
4月 副主任昇格
【職務経験】
平成24年
4月 厨房業務(調理、仕込み等)
5月 個別栄養指導、その他事務作業(栄誉管理計画書の作成、食事箋処理等)
6月 NST、褥瘡回診への参加
11月 NST専門療法士研修修了
平成25年
3月 集団栄養指導(心臓病教室)担当
4月 NST加算立ち上げ業務を担う
10月 集団栄養指導(心臓病教室)を1回/3ヵ月→毎月開催へ
平成26年
4月 NST加算算定開始 NST専従となる
平成27年
11月 第3回IMSグループ栄養研究発表会参加(口演)
平成28年
2月 第31回日本静脈経腸栄養学会学術集会参加(口演)
4月 NST専任業務終了(栄養指導、事務作業、厨房業務等の再開)
7月~12月 食材発注担当
12月 市民公開講座にて講演
平成29年
2月 第32回日本静脈経腸栄養学会学術集会参加(口演)、原著論文作成

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Q. 現在の生活形態(一人暮らし、夫婦共働き等)を教えてください。また、仕事と私生活、それぞれに対する価値観、メリハリやバランスのとり方で工夫していることなどがあれば教えてください。

現在は一人暮らしですが、実家暮らしを4年ほど続けていました。

勤務時間帯が不規則な仕事のため、勤務先に応じて選択する必要があるかと思います(施設によっては寮を設けているようです)。

医療は日々進歩しますので、安全な医療を提供するためにも根拠に基づいた栄養療法を提供できるよう、知識を身に着けることが重要です。そのため、仕事後の自己研鑽の時間は必要なこともあります。しかし、趣味を満喫する時間も十分にありますし、業務の効率化を図り定時に終わらせることで、仕事の質も上がると考えています。

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Q. 困難にぶつかった時、どうやってその場を切り抜けましたか? 気分転換や息抜きの方法があれば教えてください。

1年目の病院の管理栄養士は、まず厨房業務を任されることが一般的です(直営の場合)。多くの患者様の病態に合わせて提供する為、食事の味付けや形態、量、アレルギー等人それぞれです。大量調理が得意ではなかった私にとって、慣れるまで大変苦労しました。

また、上司の教育方針から、栄養指導やNST等様々な業務を任せていただけるという恵まれた環境にありながらも、逆に自分の許容量を超え、自信を失うこともありました。

しかし、就職活動に苦労したこともあり、退職という選択肢はなく、厳しくも優しい上司のご指導や、同期が相談相手となり切り抜けることができました。

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Q. 学生時代、学業以外で打ち込んだことがあれば教えてください。

学業に追われる日々でしたが、その傍ら部活動やアルバイトもしていました。

部活動はマラソン部で部長を務めていました。練習は2回/週程度で学業の息抜きになり、学科の壁を越えて大切な仲間も増えました。その他、文化祭での模擬店や合宿の企画、大会の手配等もしていました。

アルバイトは自宅近くの洋菓子店で接客をしていました。通学に1時間半かかりましたので、主に休日を利用して勤務をしていました。仕事を身に着ける術や接客技術を学ぶことができ、就職後も活かすことができました。

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Q. 将来の夢(目標)を教えてください。夢をかなえるために今何をしていますか?あるいは何をしていくべきだと思いますか?

NST専門療法士の資格取得を目指しています。受験するためには、経験年数5年以上や、その他取得すべき単位や症例の提出等が必要です。仕事の傍ら資格取得に向けて勉強中です。

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Q. 同じ仕事を目指す後輩へ、一言メッセージをお願いします。

病院の管理栄養士は、常に学ぶ姿勢や積極性、協調性が大切だと思います。頑張ってください。

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(掲載内容は、平成29年4月現在のものです。)
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