令和5年度 食文化栄養学実習

浅尾貴子ゼミ■フードマーケティング研究室


ごちそう豚汁のメニュー開発
魅力と価値のある商品を追求したゼミ活動の記録

   アークランドサービスHDが運営するごちそう豚汁専門店「ごちとん」のメニュー開発を中心に行いました。外食企業でのメニュー開発において、大切にしたポイントが3つあります。
   まず一つ目は、お客様が食べたいと思う商品を作ることです。豚汁は日常的に食べられているため、外食といったビジネスでお金をいただく以上、家庭との差別化、価値が求められています。夏メニューでは、暑い時期に合わせた温度帯で冷たい冷製豚汁を販売しました。季節を連想させる食材を組み合わせ、ご飯に合う味付けとして塩味が特徴の味噌をベースにするなど工夫をし、多くのお客様に食べていただけました。
   二つ目は、実現可能な調理工程を考えることです。豚汁において、味噌と豚肉は必須であり、その中で素材選定や塩分の調整、盛り付け、オペレーションなどを考えることは欠かせません。アルバイトを通じて、店舗でのアルバイトでお客様の調査や店舗状況の観察を経験しました。特に提供直前の盛り付けの食材数は少ないと効率が良いことを知りました。優先順位付けをして商品設計を考えることは開発者にとって大切です。
   三つ目は、会社の利益につながるかを考えることです。他店舗と同じような商品を出しても価値がありません。お客様があっと驚くようなごちとんにしか出せないユニークな豚汁を作り、売り上げに貢献できるよう心掛けて開発をしました。
   この他にも、無印良品の販促物づくりや、コープみらいのスマートミール基準のどんぶりの提案、坂戸市の野菜である青なすやバターナッツかぼちゃを使用したレシピ動画の作成を行いました。販促物やレシピ動画では、誰でも簡単に作ることのできるようなお手軽さや、食べてみたい、作ってみたいと思わせるような料理になるよう心掛けました。どんぶりの開発では、お客様目線で企画を進める重要性や難しさ、お店に様々な制約がある中で基準に合った美味しい商品を作れるかなど、知識を得ることができました。
   ゼミ活動の一年半を振り返り、周りの人と共同して商品を作ることや何を優先付けするかなど柔軟な思考力も身についたと感じています。発表会では、魅力と価値のある商品にするためのポイントやこれまでの活動について発表します!

フルーツを美味しいカフェごはんに変えるワザ
カフェメニュー開発の難しさと調味の工夫まとめ

   カフェ・カンパニーが運営する「フタバフルーツパーラー新宿マルイ本館店」で、フルーツを使用したメニュー開発に取り組み、約1年で4種類の料理を開発しました。お客様にフルーツを食事の一部として楽しんでもらうことを目標に、肉・魚のメイン食材と組み合わせ、調味料の種類と使い方を工夫して研究を進めてきました。
   フルーツは甘いため、食事メニューとして成り立たせるためには調味を工夫しなくてはなりません。調味の工夫ポイントは3つあります。甘さと対比する味付けとして、塩味と酸味の活用でフルーツ本来の甘味を引き立たせること。辛味を加えて味にアクセントをプラスすること。香りを活用することです。例えば秋メニューでは、ぶどうとローストビーフにぶどうジュースやかぼすごしょうを使用し、すっきりとした味わいになるように仕上げました。フルーツはそのまま入れても食事メニューにはなりませんが、複雑な旨味・適度な辛味・塩味を取り入れること、香りの活用が効果的であると試作を繰り返し発見することができました。
   メニュー開発では、どんなものが求められているのか常にお客様目線で考えることに加え、付加価値としてここでしか味わえないようなオリジナリティを出せるように意識することが大切です。また、販売するだけではなく振り返り、理由や背景を知ることはそれを次に活かすためにも重要になります。
   その他の活動では、無印良品でのレシピ提案や坂戸市の野菜を使った料理動画の作成、コープみらいのお弁当提案にも取り組んできました。レシピ提案では家庭にある調味料で作れることを考え、店頭でレシピの配布を行いました。料理動画の作成では食材を生かして作ることや簡単で真似しやすいことを意識し、YouTubeにて動画を配信しました。お弁当提案では調理法に加え、容器についての知識も学ぶことができました。
   全体の活動を通じて、メニュー開発は料理を考案するだけではなく、販売するまでに必要となる多くの事務作業と正確な書類の作成、お店のことを考えた分かりやすいオペレーションづくり、関係者とのコミュニケーションや感謝を忘れないことも大切であると実感しました。動画やレシピ、メニュー表という業務からは、販促物は商品の一部として重要だと学びました。開発メニューが実際に販売された達成感やお客様の反応を直に見られたことが貴重な体験となりました。

食の仕事のスキルを身につけた1年半の記録
5つの開発から習得した働くコツと企業の仕事の実際

   1年半のゼミ活動を通して5つの開発を経験しました。昨年は「無印良品」のアレンジレシピ考案をし販促物を作成しました。商品の良さを引き出す難しさを実感しましたが作ってみたいと思ってもらえるような料理の色合いやオリジナリティが大切だと実感しました。二つ目は「女子栄養大学×J Aいるま野×坂戸市」のレシピ動画の作成です。YouTube動画に飽きてしまうことがないよう短く簡潔にまとめたり、家庭によくある調味料を使用したりと、常にお客様目線での動画作成を心がけました。三つ目は外食チェーン店「吉野家」でスマートミール基準の丼の提案をしたことです。栄養バランスの調整がとても難しく特に食塩相当量と脂質量は基準値をすぐにオーバーしてしまうため、その都度食材の変更、だしやトマトベースを使うなどの調味の工夫をして提案しました。四つ目は、「コープみらい」でのスマートミール基準のお弁当惣菜の考案です。使用食材の選定や調理工程を考慮する難しさ、外食とは違う惣菜オペレーションの実際を理解しました。五つ目はアークランドサービスホールディングスが運営する「純豆腐中山豆腐店」と「東京とろろそば」のメニュー開発で、こちらに最も注力しました。
   外食メニュー開発では数ある飲食店から選んでもらえるブランドを目指し、訪れるお客様のターゲット層や嗜好性を考慮しながら食材の組み合わせ方、調味、盛り付けに着目しました。外食企業で好ましい味の調整、特に食塩相当量には苦労しましたが何度も試作を繰り返し、完成しました。開発メニューが実際に販売され、商品を喜んでくださるお客様や家族がいたこと、会社の方々に評価していただけた事など、とても大きな達成感と嬉しさがありました。
   1年で体験した数々の開発やイベントを通し、違う考え方の人がいても尊重すること、多くのスケジュールがある中での優先順位付け、コミュニケーション力、やりこなす力、基本的な資料作りの技術などの働くために必要なこととお客様が求めている事と企業側の想いや目的、店舗でのオペレーションや制約の重要性、価値を高めることを常に意識すること、盛り付けや調味等総合的な調理技術を高めることなどの開発に必要な思考が身についたように思います。
   発表会では以上のようなゼミ活動で習得した企業と働くコツやポイント、外食企業での開発を中心にそれぞれをご紹介します。

食の付加価値づくり
─開発専門職セミプロ17ヶ月の記録─

   「100本のスプーン東京都現代美術館店」「二階のサンドイッチ」「WIRED CAFEルミネ立川店」でのメニュー開発に加え、「コープみらい」のお弁当開発におけるパッケージデザイン、「女子栄養大学×JAいるま野×坂戸市」のさかど野菜レシピ動画作成などに取り組み、様々な切り口から食の付加価値作りに挑戦しました。
   外食企業のメニュー開発では、デザイン性と健康イメージを付加価値作りの2つの軸とし、それぞれの表現方法を探究しました。デザイン性においては、ユーモアのあるコンセプト作りはもちろん、世界観の忠実表現を常に意識しながらネーミングや販売方法を工夫しました。健康イメージにおいては、春は食物繊維量、夏は植物性素材の使用、秋は緑黄色野菜量、冬はたんぱく質量に注目し、ヘルシー感訴求の要素としてプラスαでアピールできるようなメニュー設計をしました。
   お弁当のパッケージデザインではまず、売り場映えが良いものにすること、そしてスマートミール認証というひとつの健康的な食事基準をクリアした商品であることが、付加価値としてお客様にポジティブに伝わるようにすることを目標に進めました。もともと得意なイラストを食品の販促物として活かすプロセスを経験し、伝えるためのデザイン作りの難しさを実感しました。
   さかど野菜のレシピ動画作成では、地元野菜を手に取るきっかけとなるような付加価値作りが必要でした。レシピ考案では、各野菜のおいしいポイントを活かした料理を手軽な材料で組み立て、複雑すぎない手順に落とし込むこと、動画編集では、音やテロップ一言一句にこだわり、面白さやシズル感から映像としての魅力を向上させること、というように、2つの方向から試行錯誤を繰り返すことで、より効果的に野菜に付加価値を与えることができたのではないかと思っています。
   以上のように、ゼミ活動を通じて幅広く食関連の業務に携わり、各々の場面に最適な食の付加価値の表現方法を考えてきました。創造力を食分野で発揮する方法を学ぶことができたことに加え、お店の人や本社の方、卸売業者さんなどとやり取りしながら進める中で、計画性をもって進めていく意識や、コミュニケーションの大切さも再認識できたことが大きな収穫です。発表では開発専門職セミプロとして奮闘した、盛りだくさんな17ヶ月間の集大成をお見せします!

身体とココロにやさしい外食企業のメニュー開発
ターゲットに合わせた商品開発の設計

   「身体は食べたもので作られる」という言葉があるように、食事は健康維持にとても大切だと考えています。私は子供が好きなので、産み育てる女性を初めとして、人々の健康に貢献出来るメニュー開発を行いたいと考えていました。
   主な実習先である100本のスプーン豊洲店では、2つのメニューを発売しました。最初に手掛けた春のドリンク開発では当初、ファミリー層のお客様でもある妊娠期女性の栄養基準を満たした商品を考案したいと考えていました。しかし様々な制約条件に苦戦し、試作を繰り返した結果、飲む苺のショートケーキの発売をするに至りました。また、販促方法によって売上は大きく変化することを実感するきっかけになりました。同店の食事メニューでは鉄と葉酸に着目しリゾットを考案しました。1/2日分推奨量を摂取出来ること、スプーン1本で簡単に食べられながらも、外食ならではの特別感がでるよう心がけ設計しました。冷凍商材の栄養価を考慮することや、店舗の運営事情によりスケジュール通りにいかない等の困難がありましたが、発売に至り嬉しい気持ちです。
   𠮷野家では働く女性に向けたスマートミール基準の丼を6種類考案し、試食テストも行いましたが、採用には至りませんでした。店舗の作業条件に合わないことや、ブランドらしさと創作性の間で説得力を持った開発が難しく、チェーン店のハードルの高さを実感しました。コープみらいではスマートミールのお弁当を考案しました。客層は高齢者が主で、味の想像がしやすく馴染み深いメニューを好む方が多いです。調理方法も限られており、惣菜の特性上使用できない食材もあります。条件を満たしながら高付加価値を意識した商品設計に尽力しました。さらに、JAいるま野向けの坂戸野菜を使用したレシピ動画の作成を行いました。特徴を活かしつつ、少ない材料と手順で一般の方でもチャレンジしやすいレシピを心がけ、動画の編集も手探りながら、簡潔に伝わるよう工夫しました。
   その他に昨年は、無印良品アレンジレシピの提案、学内カフェ運営のお手伝いも行いました。ゼミ活動を通じてメニュー開発はただ料理を考案するのではなく、ターゲットや店舗環境に合わせた商品の設計が必要であることが分かりました。また、多くのスケジュールがある中で計画的に物事を進める力や、コミュニケーション能力が重要だと実感しました。

みんな大好き*トマトのカフェメニュー開発
お客様が求める付加価値づけのコツと商品化の実際

   私はトマトが好きなので、トマトを使ったメニュー開発をすることにしました。野菜の中でも特に人気が高く、リコピンなどの栄養価が高いトマトに加えて、発酵調味料を組み合わせた料理を考えました。
   約1年半のゼミ活動では、主にカフェ・カンパニーが運営する「WIRED KITCHEN川越アトレマルヒロ店」にて4種類のメニュー開発を行いました。
   トマトは夏の印象が強く、酸味や甘さ、うま味が特徴の野菜です。そのため、年間を通して付加価値としてトマトを使用するためには、トマトを入れる比率、加熱による使い分け、見た目の工夫、の3つの工夫が必要だと開発を通してわかりました。例えば、夏メニューではガッツリとした油淋鶏を夏でも食べやすいよう、たっぷりトマトを使用したソースでサッパリとさせることで最後まで食べられるようなメニューにしました。
   また、お店側にいるとお店への負担を考えてしまい、作業のしやすいオペレーションを優先したくなります。しかし、開発で最も大切なことはお客様が食べたいと思えるメニューにすることです。常にお客様目線を優先しながらお店目線とのバランスを取ることが開発において重要な要素の1つだと実感しました。
   この他にも、「無印良品」でのレシピ提案、坂戸市の野菜を使用したレシピ動画の作成、「コープみらい」のスマートミール弁当の開発などを経験し、それぞれのお客様が何を求めているのか日々考えてきました。
   コープみらいでのお弁当開発では、工程数、衛生面での食材選定の制約を考えながら、お客様の求める栄養訴求やメニューの考案を行い、出来立てを提供する外食企業とは違った工夫が必要でした。
   さかど野菜のレシピ動画作成や無印良品へのレシピ提案では、真似しやすいように、なるべく家にある食材で作れるようにし、食材数と工程数を減らす工夫をしました。
   これまでの活動を通じて、オリジナリティが求められるカフェメニューやお弁当開発でも、創作ばかりでなく定番要素とのバランスを取ることも大切であると分かりました。ただ奇抜なメニューにするのではなく、それぞれのお客様が求めるメニューを常に考えることの重要性を実感しました。