食品栄養学研究室

西村 敏英(教授)
学  位
農学博士
専門分野
食品科学
担当科目
食品学総論、食品機能学

研究室紹介

食品栄養学研究室は、2017年4月より新たな研究テーマを設定し研究教育活動を行っています。
毎日の食生活は、健康を維持するためにとても重要です。バランスの良い食事をすることは言うまでもありませんが、近年、動物性食品たんぱく質の摂取が重要であることがわかってきました。食品栄養学研究室では、動物性食品たんぱく質の健康維持における役割と食べ物のおいしさに関わる研究を実施しています。健康維持に関する役割に関する研究では、動物性食品に含まれるたんぱく質由来のペプチドやイミダゾールジペプチドの抗酸化作用等を解析しています。また、食べ物のおいしさに関する研究では、おいしさの1つの要因である「コク」の定義、「見える化(客観的評価)」並びに、「国際化」に関わる研究活動を行っています。
また、これらの活動を通して、問題発見能力、問題解決能力、コミュニケーション能力並びにディスカッション能力を身に着けた学生の育成を目指しています。さらに、活動の成果を社会に還元することを目指しています。

研究紹介

〈健康機能に関する研究テーマ〉

食肉は良質のたんぱく質の供給源として健康維持に重要な食品である。また、たんぱく質由来のペプチドには、血圧上昇抑制作用、カルシウム吸収促進作用、抗酸化作用などの様々な機能が明らかとなってきた。本研究室では、ペプチドの抗酸化作用を研究している。

1. 食肉たんぱく質由来のペプチドの抗酸化作用

豚肉を酵素処理で分解して得られたペプチドをストレス負荷マウスに摂取させると、ストレス性胃潰瘍を抑制することを明らかにした(図1)。また、抗酸化作用を有する食肉たんぱく質由来の機能性ペプチドを単離したので、その作用機序を解析している。

図1.豚肉由来ペプチドの摂取によるストレス性胃潰瘍の抑制効果

2. カルノシン合成酵素のKOマウスを用いたイミダゾールペプチドの生理作用の解明

食肉には、カルノシンやアンセリンと呼ばれるイミダゾールジペプチドが多量に含まれている。このペプチドは、抗酸化作用並びに抗疲労効果等の機能が知られているが、生体内での生理作用は解明されていない。本研究室では、イミダゾールジペプチドを合成できないKOマウスを用いて、このペプチドの生体内での真の生理機能を解明することを目的として研究する

〈食べ物のおいしさに関する研究テーマ〉

食べ物のおいしさを決める要因の1つにコクがある。しかし、これまでコクの明確な定義はなされていなかった。そこで、本研究室では、おいしさを決める要因であるコクを定義し、その「見える化」と「国際化」を目指している。

1. コクの「見える化」と「国際化」

コクは、味、香り、食感のすべての感覚刺激によりもたらされる総合感覚であり、より多くの刺激から生じる「複雑さ」、それらの刺激による「広がり」と「持続性」の3つの要素の強弱により客観的評価ができると定義した(図2と「解説原稿」(「食品と開発6月号」Vol.53(6), pp20-23(2018))。現在、コクのある食品に関して、「見える化」を解析している。

2. コク増強因子であるうま味物質と脂質の発現メカニズムの解明

コク増強因子として、うま味物質と脂質が知られている。これらのコク増強発現メカニズムを解析している。うま味物質は、食べ物の口中香の感じ方を最大で2.5倍強めることを明らかにした(図3)。また、脂質は香気成分を保持することにより、コクの複雑さと持続性を増強することを示した(図4)。現在、実際の食品でコクの増強メカニズムを解明している。

図3.うま味物質の添加が口中香の感覚強度に及ぼす影響
図4.脂質のコク増強効果

卒業研究の指導方針

研究テーマに関する日々の実験を通して、「課題の発見・解決能力」を身につけます。具体的には、学生各人が実験の組み立て(Plan)、実験の実施(Do)、実験データの解析(Check)並びに次の課題解決のための方法(Action)をマンツーマン形式で指導され、このPDCAサイクルを繰り返し回すことで、上記の能力を養うことができます。また、研究室全体での演習(セミナー)では、文献紹介や実験の経過報告を通して、各人が食に関する幅広い知識を学ぶと同時に、「プレゼンテーション能力とディスカッション能力」を養うことができます。

学生のコメント

松本麻里(保健栄養学科 栄養科学専攻4年)

本研究室では「課題を見つけ、自ら問題解決に向けてPDCAサイクルを回す」という行動方針を掲げ、未知の研究内容について各人がその研究の第一人者になるという意識で日々研究活動に励んでいます。未知の研究内容であるため、既に研究されている内容を調べ、そこから課題が何であるかを考えて実験を始めていきます。学生の力だけでは研究が進められないことも多々ありますので、先生方の強力なサポートの下進めていくことが出来ることが本研究室の良い点です。
私は、バターのコク付与・増強効果について研究しています。バターは食べ物のおいしさを引き出す素材として様々な料理に使用されています。現在、バターの加熱で生成される成分とその持続現象について解析しています。
本研究室での学びは、研究内容の学習に限らず自分で考えて行動する習慣がつけられます。これは社会に出てからも大いに力になるものだと思います。この研究室では目的意識を持って学生生活を送りたい、自分をもっと成長させたいと考えている方は、ぜひこの研究室で自分の可能性を広げてみてください。

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