ラクトフェリンの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)予防効果に対する新知見の紹介
2021年1月08日 栄養科学研究所長 副学長 香川靖雄
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行によって、遂に再び緊急事態が宣言されました。従来通りの規制を繰り返すだけでなく、有効性が新たに確認されたラクトフェリンの定期的な摂取を改めてお薦めします。ラクトフェリンのCOVID-19予防効果に対しては、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所が「現時点では、(中略)科学的根拠を示すまでには至っていません。」としていますが、この伝染が始まったのが1年前ですから論文が無いのが当然です。その後新たに発表された科学的根拠を政府が伝えていないので、本研究所から皆様にお伝えします。
このCampione博士らの論文はbioRxiv(https://www.biorxiv.org/)という、査読前の論文原稿(プレプリント)に対して読者がお互いにコメントをすることができる生物学領域におけるプレプリントリポジトリに投稿されました。査読後に学術誌に掲載された論文ではないため慎重な解釈が必要ですが、報告された研究(図1)では、COVID-19患者をラクトフェリン治療群、標準治療群、そして非治療群に分けて30日間の経過を観察しています。そして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の消失に係った日数をPCR(Polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)で確認したところ、ラクトフェリン治療群では平均14.25日で消失したのに対して、標準的な治療群では27.13日、非治療群では32.61日も有意に多くかかっていました。さらに関節痛や筋肉痛などの症状の改善もラクトフェリン群で遥かに優れていました。
図1
一般的に特異免疫機構が働く他のウィルス性感染症と違い、コロナウィルスに対しては自然免疫が大きな役割を果たしていることが報告されています。被験者数は少ないですが、健常者(n = 4)やインフルエンザ患者(n = 5)と比べてコロナウィルスに感染している患者(n = 10)では自然免疫を賦活する役割を持つことが知られているラクトフェリンの発現量が増加するとの根拠が示されています(図2)。そして培養細胞等の厳密な実験から、ラクトフェリンによってコロナウィルスを予防できる事も詳細に確認済です。
本研究所ホームページで前回ラクトフェリンによるCOVID-19治療に成功したSerrano博士の論文と、ラクトフェリン摂取の多いモンゴルにおけるCOVID-19による死者数が0である事を紹介したところ、次の3点に対する反論が寄せられました。
①ラクトフェリンを与えて治療と予防に成功したが、ラクトフェリンを与えない非治療の対照がないので自然治癒かもしれない。 ②牛乳・乳製品の消費量の多い欧米で患者が多発している。 ③モンゴルの医療体制は信用できない。
図2
上記①に対してはCampione博士らによる実験から一応解決しましたので、②と③に対して説明します。まず②の「牛乳・乳製品の消費量の多い欧米で患者が多発している。」とのご意見に対して、ラクトフェリンは安全な人体成分ですが、牛乳には僅かしか含まれていないことに注意する必要があります(図3)。
図3
モンゴル人は馬、羊、山羊、牛、駱駝の五畜の乳製品を日常的に食べており、特に馬乳に含まれるラクトフェリン含有量は0.02~0.35 mg/mLと報告されている牛乳の6~100倍にもなります(図4)。欧米・日本ではラクトフェリンのある乳清を捨てて乳製品にしますが、モンゴルでは乳清まで使います。
図4
また、草原を生き抜く駱駝や羊が持つラクトフェリンの殺菌力は母乳の数倍も強いことが、様々な哺乳類から採取したラクトフェリンが大腸菌O-157に対して持つ最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration: MIC)※と最小致死濃度(Minimum Bactericidal Concentration: MBC)※を検証した実験から報告されています(図5)。
※最小発育阻止濃度(MIC)は一夜培養した微生物を阻止する抗微生物物質の最小濃度の指標であり、最小致死濃度(MBC)は一定量まで培養した細菌数を0.1%以下に減らすのに必要な濃度を示す指標です。 図5
モンゴルでは乳製品は「白い食事」と呼ばれています。山の様に積まれた乳製品はモンゴル人の主食として摂取する熱量の70%を占めます(図6)。結果としてラクトフェリンの摂取量も多いことが推察されます。日本人にはモンゴル人と同じ量の白い食事は無理なため、COVID-19感染予防のための代替案として腸溶性ラクトフェリン500 mg/日の内服を勧めたいと考えています。
図6
またご意見のあった③の「モンゴルの医療・調査体制」ですが、世界銀行のデータ(https://data.worldbank.org/)によると人口千人当たり医師数2.8人は日本(2.4人)より多く、病床数5.9床も世界平均(2.9床)の約2.5倍と報告されています。集中治療施設も349床で、詳細なコロナ医療統計、栄養調査は一流国際誌に公表されています。またモンゴルの統計局(National Statistics Office of Mongolia)はモンゴル語だけではなく英語でも統計情報を発表しており、国際的に高い情報発信力を持っています。
COVID-19の感染拡大を制御したモンゴルや中国と栄養学の領域で交流している日本国内の研究所は女子栄養大学栄養科学研究所唯一だと思います。ラクトフェリンに関し私自身、そして研究所は誰からの援助も受けていませんが、この非常事態において多くの国民に対して実行可能かつ感染予防に効果が見込まれる新しい具体策を提示し、普及することが求められていると考えています。国に対しても従来の規制を繰返すだけでなく、同様の姿勢でこの事態に臨まれることを希望しています。
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