令和5年度 食文化栄養学実習

宮澤紀子ゼミ■食品化学研究室


八丈島と光るきのこ

   皆さんはきのこを観賞用として楽しんだことはありますか?私は、視覚で楽しめるきのこがこの世に存在するのか疑問をもち、調べたところ光るきのこの存在を知りました。光るきのこは、温暖多雨の特定の場所にしか生息していません。日本で確認されている16種類のうち7種類の発光きのこが生息する八丈島という東京都伊豆諸島の島を本実習の調査地に選びました。八丈島という場所を初めて知り、どのような場所なのか調べていくなかで、八丈島を取り上げた観光本がないことに気がつきました。観光サイトやネットの情報はありましたが、たくさんのサイトを開かなければないことが少し不便に感じました。そこで私は、自身の体験を通じて得た情報をもとに、光るきのこの特設ページを設けた八丈島の観光冊子を作ることにしました。まず、八丈島観光レクリエーション研究会にコンタクトを取り、光るきのこの生息地や発生時期などの情報を得ました。また観光サイトの情報を基に八丈島の郷土料理や名産品を楽しめる飲食店、宿泊施設を探し、取材や冊子への掲載協力の依頼交渉を行いました。光るきのこの発生時期に合わせて、アポのとれた飲食店や宿泊施設の取材、絶景スポットやアクティビティなどの撮影計画を立て、2023年7月27日~31日の3泊4日で八丈島へ調査に行きました。島を探索すると本土では味わえない雄大な自然と落ち着いた雰囲気を味わうことができました。観光冊子では光るきのこの現在の生息状況や文献で調査した発光メカニズム、食べられるのかなどの疑問にも答え、島ならではの郷土料理や景色、アクティビティを紹介しました。
   私の発表を通じて、八丈島の夜に光る幻想的なきのこの魅力や八丈島という東京都の離島の魅力を伝えたいと思います。

きのこパンのある生活
─きのこを使ったパンのレシピ開発─

   私はパンが大好きだ。パンは食パンやロールパン、ベーグル、フランスパンなど、材料が同じでもその配合割合が違うだけで 様々な特徴のあるパンが出来上がる。一方、きのこは種類によって味や香り、食感に特徴があり、嗜好性を活かした食べ方がされている。そこで本実習ではきのこの特徴を活かしたオリジナルのきのこパンのレシピを開発したいと考えた。ターゲットは、女子大学生とし普段から料理やお菓子作りをする習慣があり、最近パン作りを始めたきのこが好きな人と設定した。開発したレシピは、パンやきのこ好きな人に向けてインターネット上で公開することにした。
   市場調査では、具材にきのこが使われているパンをインターネット上で検索し、使用形態や味付けなどを調べた。その結果、トマトソース系やホワイトソース系など洋風のものが多く、具材に使われているきのこの種類は多種類あること、季節感があり特に秋や冬限定で販売しているものが多いことがわかった。また、山梨県内のパン屋を対象に、パン屋の特徴や販売しているパンの種類などを調べた。その結果、総菜パンや菓子パンの種類が豊富な店、パンそのものを活かす店、県内の食材を使ったパンを取り揃えている店など、それぞれに特徴があることがわかった。次にきのこの調理性を把握するために、5種類のきのこの油炒めを作り嗜好特性を評価したところ、食感に大きく違いがあることがわかった。また、生地にきのこを練り込んだパンを試作し、きのこの利用法を検討した。
   市場調査やきのこの試食などの結果から、オリジナルパンは、和風の味付けのもの、サンドイッチ系、菓子パンとすることにした。試作と試食評価をおこない、オリジナルのレシピ案をつくった。レシピ案は、ターゲットとしている女子大学生の意見を反映させる為に、学生向けにパン教室を計画した。パン教室から得た意見をふまえてレシピをブラッシュアップし、きのこパンのオリジナルレシピを完成させた。完成したレシピはインターネット上のレシピサイトに掲載をすることで、きのこやパン好きの人に発信した。私の活動を通して、パンやきのこのある生活を楽しんでもらいたいと思う。

梅干しブームの一役に!
~育てて、作って、販売して!梅干しの魅力いっぱい~

   梅干しが日本の伝統的な食であることを忘れてはいませんか。「塩分が気になる。」、「ごはんよりパンが好き。」ように、健康志向や食の多様化により梅干しを食べなくなった人は多いのではないでしょうか。私は梅干しが大好きでしたが、最近食べなくなったと感じていた矢先、ある梅農家さんの「梅干し倉庫がパンクしている」というツイートを見つけました。さらに「梅干し離れ」がSNSで話題になっていることを知り、梅干しをテーマにした活動を通じて、梅干しの消費拡大とともに、梅干しの新たな可能性と魅力を広めたいと決心しました。資料を調べるなかで、梅干しは、日本で昔から貴重な保存食として重宝されてきたことや、古くは薬として利用していたことなどを知りました。梅干しと日本人との結びつきの強さを知ったことで、さらに日本の食卓、そして梅農家さんの思いを守らなければならないと感じました。
   実習では埼玉県越生町にある梅農園山口農園で梅の生産から梅干しの製造、販売までの工程に携わりました。山口農園は、梅を生産する農家(1次産業)ですが、生産だけではなく、梅干しや梅ジャムなどの加工品製造(2次産業)、店頭販売やカフェ運営(3次産業)までを含めた一体化した産業として、農業に取り組んでいます。6次産業化に取り組む農園での様々な活動を通じて、安全で品質の高い梅干しを消費者に届けるためには、大変手間がかかっていることを実感しました。農園での活動の他、梅メニューを扱っている飲食店を対象に市場調査を行ったり、梅の品種による梅干しの食味の違いを官能評価したりしました。得られた結果をもとに、梅の品種による嗜好特性や梅のもつ機能性、また栄養バランスや塩分などを考慮した梅干しメニューを考案し、山口農園隣接の梅凛カフェで提供しました。第一弾のカフェ運営では、働く女性をターゲットに、疲労回復をテーマにして考案したメニューを販売しました。また、考案したメニューはインターネットで公開し、より多くの人々へ発信しました。
   私は本実習の活動を通じて、楽しみながら梅干しがもつ多くの魅力に触れることができ、さらに梅干しが大好きになりました。梅や梅干しに関する広い入り口作りをし、さらに親しみを持ってもらえるように今後も継続的に活動していきます。この取り組みをきっかけに、日本の伝統食材である梅干しを一人でも多くの人に楽しんでもらえたら嬉しいです。

食べられないきのこを好きになる

   みなさんはきのこを食べることは好きですか?私は、きのこの独特な風味や食感が苦手で、食べることを避けてきました。食べ物の好き嫌いをなくし、食の幅を広げるため、きのこを好きになりたいと思っていたところ、ある本を読んで山や森に自生している「野生のきのこ」などの存在に気が付きました。そこで本実習では、きのこを丸ごと楽しむことをテーマに、きのこを食べるだけではない「新しい楽しみ方」を提案することにしました。
   まず本実習では、きのこに関する情報を、書籍や映像から得られるものを「知識」、自己の実体験を通じて得られるものを「体験」と定義したうえで、これらを分類して活動に取り組みました。「知識」は国立国会図書館での蔵書検索や日本きのこマイスター協会の認定講座の受講、「体験」は埼玉きのこ研究会、国立科学博物館での特別展「毒」、ヨコハマきのこ大祭、きのこ専門の飲食店などへの参加としました。
   国立国会図書館での蔵書検索では、922件の蔵書から巻号省略し抽出した42件を対象に調査を行い、その結果をまとめました。きのこマイスター認定講座では、人工栽培されているきのこを中心にきのこの生理・機能総論、食生活と健康、きのこの流通・販売といったきのこに関する講義を受けました。
   観察会では山や森の中に自生しているきのこを実際に観察しました。食べられるが名前を聞いたことがないきのこや、見たことのない毒きのこなど多種多様のきのこを見ることができ、視覚からも楽しむことができました。ヨコハマきのこ大祭は、きのこを見て!食べて!愛でる!きのこ好きによる、きのこ好きのためのイベントです。新鮮なきのこや加工品、きのこグッズ、アート作品、レストランメニューなど、きのこを存分に楽しむことができるコンテンツがあります。
   これらの活動から得られた情報を、独自で設定した基準で評価し、きのこをどれくらい好きになれたのか、きのこを好きになれた要因について考察を行いました。きのこは食品としてだけではない魅力があることを実習を通して改めて認識できました。本活動や発表を通じて、きのこの食べるだけではない新しい楽しみ方を知り、経験するきっかけになればうれしいと思います。