令和5年度 食文化栄養学実習

藤倉純子ゼミ■健康情報科学研究室


酒粕を知ろう!

   近年酒粕の生産量は減少している。短大での調理実習で酒粕を知らない友達がいた。栄養学を学んでいる人でも酒粕を知らない人がいるのなら、他の同年代の女性には酒粕を知らない人がもっと多くいるのではと考え、実習テーマにした。本実習では、対象者に酒粕の栄養価や調理方法、体に使用するなど日常生活に取り入れることができることを知ってもらうために、SNSを活用し情報発信をすることを目的にした。
   実地調査では3つの施設にフィールド調査を行い、酒粕の情報を得た。1つ目の千葉県香取郡神崎町にある酒蔵「寺田本家」の中にある「カフェ うふふ」では酒粕を洋風の料理に入れることで引き立て役にしていることや、酒粕が苦手な人向けにアルコールをしっかり飛ばしたメニューを開発していることを学んだ。2つ目の「発酵デパートメント」では、酒粕に多くの栄養成分が含まれているため肌トラブル解消等の効果があることや、酒粕パック・酒粕風呂等酒粕を美容に用いることを知った。そして、北陸の発酵食品についても学んだ。3つ目の「日本の酒情報館」では、他の酒蔵の情報や日本酒によってお酒の作り方が変わることを教えて頂いた。
   文献調査では、小学校給食の酒粕使用について調べた。兵庫県神戸市では灘五郷の酒粕を使用することや、島根県津和野町では古橋酒造等の多数の酒造があり、そこの酒粕を使用した酒粕汁が提供されることを学んだ。酒所の給食では酒粕を用いることがわかった。
   情報発信のツールとしてインスタグラムを使用し、コンテンツ内容は、酒粕についての説明の動画とレシピ動画の2本立てにした。ハッシュタグは、酒粕、発酵食品とし、多くの人に閲覧してもらえるようにした。説明動画では、酒粕についての地域の食文化、栄養価、できるまでの過程を作成し、投稿した。動画作成には、イラストを使用しBGM、テロップをつけ、対象者の若年女性が見やすいよう動画のテンポを速くすること等工夫した。レシピ動画では、酒粕の分量の調整を試行錯誤し完成させた。ブラウニーは酒粕の風味を強く感じる分量だと薄いブラウニーが出来てしまい、量の調整に苦労した。酒粕杏仁豆腐では、クルミを乗せることで食感のアクセントにすることを工夫した。
   動画視聴のコメントで、栄養価が優れているかの想像がしにくいという指摘を受けたことから、酒粕以外の材料は同じ粕汁とお味噌汁の比較をするなど、わかりやすく伝わるように改良を進めた。

珍味×バーチャル

   自分が中学生の頃に出会った「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」という漫画に影響を受け、様々な地域の珍味に興味を持ち、たくさんの人に知ってもらいたいと思った。またコロナ禍で在宅を余儀なくされた中、バーチャルユーチューバー(VTuber:インターネット上で動画配信を行うキャラクターのこと)という存在を知った。そこで本実習では、多くの人が興味を持ってもらうために珍味とVTuberを融合した動画を制作・発信することにした。
   本実習における珍味の定義は、「普段私達は食べないが一部地域では昔から食べられている食材、今では食べられていないが歴史的に食べられていた料理」とした。
   文献調査やインターネット検索、フィールドワークで、様々な地域の珍味である植物や昆虫、爬虫類、魚類、鳥獣類等の調理方法、入手方法、歴史、食文化などを調べてまとめた。
   動画内で使用するキャラクターはibisPaintで描き、Live2Dで2dモデルを制作した。Live2Dとは2Dによる立体表現ができ、原画の画風を保ったままキャラクターを動かすことができるソフトである。制作した2dモデルはVtube Studioを用いて自分の顔とモデルの顔の動きを連動させた。
   一つの動画では一つの珍味(食材)を取り上げ、歴史や調理法、実際に調理し食べた感想について制作した2dモデルを通じて紹介する。取り上げる珍味は、どんぐり・しいのみ、サボテン、イナゴ、コオロギ、カエル、ウミガメ、ワニ、棒あなご、カラス、すずめの10種とした。
   動画は調理の撮影をしたもの、2dモデルで珍味説明と食レポを撮影したものを、テロップ、BGM、効果音を入れるなどの編集を行い、1本あたり5分から10分にまとめた。できた動画はYouTubeに投稿し、閲覧数や視聴者からの評価、コメントを動画の評価とした。珍味をバーチャルで発信することで、多くの人に知ってもらうことができた。

ゲームで学ぶ災害食

   東日本大震災を東北で体験し、溶けたアイスクリームの勿体なさとスーパーマーケットで売れ残る食材は調理前のものが多いことを感じた。これら経験から、文献調査を行った結果、備蓄食品のローリングストック法があまり浸透・継続されていないこと、栄養バランスが偏りがちなこと、温かい料理が食べられない人が多く居たことを知った。
   本実習では、上記の課題を参考に、RPG形式の食育災害ゲームと災害時で活用できるレシピ本を作成した。学習目標は、制限された場面での有効的な食品選択ができること・栄養バランスの整った食事を考えることができること・制限されたエネルギー源を考慮したレシピを知ること・備蓄食材の利便性を知ることとし、ゲーム構成は1)ご飯を炊く2)スイーツを作る3)主菜を作る4)副菜を作る5)副菜を作る6)カレーライスを作る、の全6エピソードとした。ゲームの制作ツールは主にRPG DEVELOPER BAKINを使用した。対象は高校生を主とし、プレイ時間の目安は60分間とした。
   9月19日にU高校にて、高校生46名(2年Xクラス男1女45)を対象にエピソード2までの体験版【大なまずとおばあちゃんのレシピ本】をプレイしてもらった。プレイ時間は約20分間で、知識テストとアンケートをプレイ前及び、プレイ後に実施した。知識テストは11問、事前アンケートの項目は災害食の認知度、情報源の3問、事後アンケートの項目はゲームの進行度、学習項目やゲームの評価、料理の魅力度、自由記入欄の11問とした。プレイ前後の知識テストで災害食や災害下に対する理解度の変化、アンケートの5段階評価により、ゲームの学習効果を検討した。
   事前アンケートでは災害食の認知度は、知っているの回答が約96%であった。情報源は約87%が学校の授業という回答だった。Xクラスでは、災害食や災害時の対応などの食育授業が事前に4回あり、特にα米の調理実習の影響が大きかったと考えられる。事後アンケートのゲーム評価では楽しかった4.7点、再度プレイしたい4.5点とゲームの満足度は高かったが、ゲーム内のレシピの料理への魅力は3.8点とあまり伝わらなかった。知識テストの結果は、事前の平均得点は7.3点、事後は7.8点で特に体験版で学べる4問では事後の得点が有意に高くなった。このことから、このゲームによる食育は楽しく学べて効果的という評価を得たが、正答率が下がった項目もあり、十分に知識がついたとはいえないため、もっとわかりやすく学べるように改善が必要である。

外国人労働者のためのWeb制作
なぜなに日本!!

   人口減少が進む日本では、労働力不足の解消として、外国人労働者の受け入れが進む動きがある。しかしそれと同時に、外国人労働者が日本を選ばないという話題もよく耳にする。そこで、日本での生活をよりよいものとするために、外国人労働者のためのWeb情報サイトを制作することにした。外国人労働者の中でもターゲットを技能実習生に絞った。
   文献調査やアンケート調査を通して投稿内容を検討した。出入国在留管理庁の「在留外国人に対する基礎調査」から、技能実習生の職業生活上、社会生活上、日常生活上の問題点を把握した。そして、外国人が日本に来て困ったことや日本人が外国人に守ってほしいことの観点から「1緊急連絡先」「2食事のマナー」「3日本のルール」「4ゴミの分別」「5日本のお金」「6交通機関の乗り方」「7日本の祝日」「8語学翻訳アプリに飛ぶページ」「9公的機関のSNSを紹介するページ」の9項目の投稿内容を決めた。また、栄大生らしい観点から「ハラル・ヴィーガンのお店のマップ」「インドネシア料理の作り方」「ベトナム料理の作り方」の3項目も加えることにした。
   フィールド調査では、実際に技能実習生を雇っている方や技能実習生の方にインタビューを行った。また、インドネシア料理は、インドネシア寮を訪問した際に作り方を教えていただいたレシピを掲載した。
   開発ツールはPC、タブレット、スマホと様々な媒体に対応して作成することができるWordPressを使用した。投稿は優しい日本語を使用し、ふりがなをつけ分かりやすく伝わりやすくし、さらに言葉だけでは理解しにくいこともあると考え、実際の様子の写真も掲載した。また、一目見て何について投稿かが分かるように、アイコンにピクトグラムを用いた。ピクトグラムの制作では「pictogram」と「ibisPaint X」を使用した。
   投稿サイト名は「なぜなに日本!!」とした。技能実習生がよく使用しているFacebookにQRコードを掲載し、知人の外国人に口コミでの宣伝を依頼した。また、一般社団法人技能実習生生活支援機構(TITL)のFacebookにQRコードを載せていただき、多くの外国人の方に閲覧してもらえるようにした。