令和5年度 食文化栄養学実習

奥嶋佐知子ゼミ■調理学研究室


「まめ」をマメに食卓へ
料理教室で伝える乾燥まめの魅力と活用術!

   乾燥まめを料理に使う魅力は、まめの優しい香りが堪能できること、自分好みの食感にできることだと考えます。そこで、この魅力を感じてもらうきっかけ作りがしたいという思いで、中高年男性を対象にした料理教室を運営しています。
   これまで、食べるまめの種類が限られ、活用方法が分からないという受講者の声を踏まえ、大豆、小豆、ひよこ豆、レンズ豆、金時豆、青大豆、大福豆、花豆とまめの種類を変え、それぞれの特徴を活かしつつ、限られた時間内でできる調理方法を検討してきました。また、教室運営と並行し、日本豆類協会が主催する豆の料理コンテストや豆の日シンポジウムなどへの参加を通じて、乾燥まめについての理解を深めてきました。
   料理教室では、これまでに使用したまめの中から、小豆 、ひよこ豆、大福豆の3種類を使用し、レシピを一冊にまとめた「乾燥まめのオリジナルレシピブック」を受講者に配布しました。レシピブックは、忙しい中でも気軽に調理できる時短レシピ、時間をかけてゆっくり調理するレシピ、シンポジウムで試食した際に感銘を受けた料理のアレンジレシピの3構成にし、それぞれのまめの魅力や、受講者に合わせたまめ情報をコラムページに記載しています。また、希望する受講者に乾燥まめの小豆、ひよこ豆、大福豆を小分けにしたものをプレゼントし、自宅での調理に繋げられるような取り組みも行いました。
   この試みにより受講者が以前より乾燥まめに関心を持ち、魅力を感じてもらうことができたのかアンケートにより確認し、考察します。今後、受講者ひとりひとりが自分好みのまめの食感や調理法を見つけ、お気に入りのまめを使って料理をすること、食べることへの喜びを感じられることを願っています。

料理だけじゃない!子供料理教室
〜たべっ子料理教室でチャレンジ〜

   料理教室に楽しく参加してもらう、食に興味を持ってもらう方法は料理をする事だけではありません。料理をして楽しい!食べて美味しい!だけではなく視覚情報からも食について興味をもってもらえる事はできないでしょうか?
   子供料理教室では、料理をする事を楽しみに個人や友達同士で参加をしてくれています。単純に料理をする事だけでなく、ハンバーグを自分の好きな形にこだわって作ったり、盛り付けの色彩を気にしたり、お皿の上の料理の見た目にもこだわりを持って料理教室に参加してくれています。そんな子供達に、料理を作って食べるまでには、作る事や盛り付け以外にも楽しいことがあるという事を知ってもらいたいと思いました。また、料理教室では試食をステンレスの調理台の上で行います。季節のテーマごとに変えている料理や、こだわりを持って作った料理を毎回ステンレスの調理台の上で食べることはもったいないのではないかと考えました。日本では、目で食べるという言葉がある様に、視覚情報は重視されます。そこで、お皿の上だけでなく、テーブルのセッティングにも目を向けてみようと思いテーマ決定に至りました。テーブルセッティングに目を向ける事は子供達にとっても食の視野を広く持つきっかけになるのではないでしょうか?参加者の中には、仲の良い友達同士で参加しているけれど、他の子とも仲良くなりたいという意思を持っている子がいる点、料理教室は料理を作る事を大前提としているのでセッティングには時間を長くかけられない点を踏まえて、調理台のグループごとに一つテーブルセッティングをしてもらう事にしました。セッティングしたテーブルに置く料理はグループで話し合ってもらい、料理の数を制限せず、好きな数置いてよいという自由なルールを設定しました。この事により、話をして仲を深めるきっかけ、他の人の盛り付けをみて新たな気づき、興味を持ってもらえるきっかけ作りになれば良いと考えました。自分達で飾ったデーブルによって更に料理が美味しく見えることを体感して欲しいです。
   その後、セッティングしたテーブルの写真を撮ってもらいInstagramに投稿します。当日に子供達の作った料理を見ることが出来なかった家族が、投稿した写真を見ることが出来ます。家庭で教室の様子が話題に上がり、楽しい様子を共有でき、家でももう一度料理をする機会や、食に興味を持ってもらえるきっかけを増やせたらと思います。

だしって実は便利だし!?

   皆さんは普段、どのくらいの頻度でだしをとっていますか?私自身、大学の調理実習の授業でだしのとり方を学んでから、自宅でも実践する機会は増えたものの、パックや顆粒タイプのものを使用することも多く、素材からだしをとる頻度はそれほど高くありませんでした。また、先輩方が運営する料理教室を見学した際に一番だしをとる機会があり、受講生に手順を細かく聞かれたことから、「そもそもとり方をよく知らない人が多いのではないか?」「普段からだしをとって料理に活用している人は少ないのではないか?」といった疑問を持ちました。そこで私は、「だしって実は便利だし⁉」というテーマを設定し、毎月行われている料理教室でだしをとり、それを活用するレシピを提案することにしました。
   そこでまずは基本的な部分から知ってもらおうと、だしの素材として使われる食材の特徴や、だしをとる手順や注意点を、授業で学んだことだけでなく一般書も調べ、受講生に「便利」「活用しやすい」と思ってもらえるような方法を選択してレシピに記載しました。定番の昆布やかつお節に加え、干ししいたけやエビを使用しただしのとり方、それらを活用したレシピも紹介しています。教室の回数を重ねていくごとに、レシピを見なくても迷うことなくだしをとれるようになっている方が増えてきているように感じました。また、自宅でも作ったという声や、ご家族からも好評だったという声をいただくことも多くなりました。
   さらに、自宅でも実践しやすくなるよう、電子レンジを使用した方法など、出来るだけ複雑でない方法を考えるだけでなく、冷凍での保存方法もあわせて伝え、日常でも継続的にだしを取り入れてもらえるよう工夫できることはないか模索しました。
   この提案で、受講生が以前よりもだしを身近に感じ、だしについて関心を持ち活用するきっかけになっていたら嬉しいです。

こころ先生のまめまめポイント!
たべっ子料理教室でエンジョイ

   得意な工作を使って大好きな子供たちに楽しい食育をしたい!という思いから「こころ先生のまめまめポイント!~たべっ子料理教室でエンジョイ~」をテーマとし、子供たちが意欲をもって参加してくれるような工作を活かした体験型のミニ授業、レシピブックの作成、インスタグラムで情報発信を行うことに決めました。
   料理教室で毎回配布するレシピブックと投稿するインスタグラムを作成するにあたって、キャラクター化した自分を掲載、カラフルな配色の選択、イラストや写真を活用することで、子供たちが食への関心を楽しく深められるように工夫するよう意識しています。また、オリエンテーションで子供たちに家庭の食に関するアンケート調査をした結果、家庭でよく食べる食材が「乳製品・肉・野菜・魚」だと分かりました。私は、普段から馴染みのある食材が子供たちにとって興味を持ってくれるきっかけになると考えたので、これらの食材を各回の食育テーマとして取り上げ、調理中の空き時間を利用して食材に関するミニ授業を行うことに決めました。例えば、「乳製品」がテーマの回では生クリームと食塩を入れたペットボトルを振ってバターを作りだす方法を実習するなど、実際に食材に触れる機会を作ったり、ハンバーグを作った「肉」の回では工作を活かし、スケッチブックに画用紙で作ったテーマに関する「知ってそうで知らなかった食育クイズ」を行ったりもしました。
   口頭で説明した時よりも、実物を使用して触れたり、体験した回の方が子供たちの反応は良く、今まであまり積極的でなかった子も、「〇〇って何からできているの?」「それ知ってる!」など、声を上げて参加してくれるようになりました。これまでの取り組みの中で、子供たちが楽しんで取り組めた「こころ先生のまめまめポイント!」は何かを確認し、子供たちの記憶に残る要因はどのようなことなのかをまとめていきたいと思います。

きのこと私

   私はきのこが嫌いです。外食時には、食べたい料理でもきのこが入っていることがわかると注文を諦めます。大学入学前は、ただきのこを避けてきましたが、入学後は調理学実習できのこにふれる機会が増えたことで、食べられるようになりたいという気持ちに変化したことがテーマ決定のきっかけです。
   ゼミで月1回運営している料理教室のレシピを検討する中で、自分のきのこ嫌いをどうにかできないかと考えました。そこで、自分が特に嫌いな、しめじ、しいたけ、まいたけの3種を中心に、切り方や調理法、味付けの違いと食べやすさについて研究してきました。
その結果を踏まえ、料理教室では、より食べやすいと感じる調理法の料理を提案しました。自分自身の感想だけにならないように、試作の段階でゼミメンバーの意見も取り入れ、さらに文献できのこと料理の味付け、調理法などの相性も調べ、提案する料理を決定しました。また、受講生はきのこが好きな人がほとんどであったため、料理教室ではきのこの味を消しすぎないようにしたことが工夫の1つです。
   以上の結果を踏まえ、きのこ嫌いの私が、きのこが嫌いな人に向けて、きのこを少しでもおいしく食べられるようにという思いで、「きのこ嫌いのためのきのこレシピブック」を作成しました。きのこの種類ごとに、いままでの活動の結果を活かして、「これならおいしく食べられる」、「これなら食べやすい」と感じられたレシピや、きのこを食べやすくしたポイントを記載しています。このレシピブックがあれば、嫌いなきのこでもおいしく食べられること間違いなしです。きのこが嫌いな人にはもちろん、きのこが好きな人にもぜひ見て、実際に作っていただけたら嬉しいです。

乾物変身術!
たべっ子料理教室でトライ

   子ども料理教室は、子ども達がはじめて触れる食材に出会ったり、はじめて食べる料理を知ったり、食を通して楽しさや美味しさ、達成感を得ることの出来る場であると考えます。
   料理教室の運営を通して、子ども達は想像以上に知らない食品がたくさんあることが分かりました。子ども達が成長し、自分で料理をするようになった時に食材選択の幅が増えることに繋がるよう、料理教室では普段食べることの少ない食材も知ってほしいと思いました。その中でも私が子どもの頃はあまり知らなかった乾物の美味しさをこの教室を通して知ってほしいと考えました。そこで、日本料理で馴染みのある食材である乾物を小さい頃から知り、自分が主体となって料理をするようになった時に使ってみようと思えるきっかけとなるとともに、古くから伝わる食材の伝承にも繋がると考え、乾物を使用した料理を提案することにしました。乾物の使い方を子どものころに知ることで、大人になったとき、買い置きしてある乾物を日常の食事に取り入れようという発想に結びつくと考えます。また、乾物は長期保存が可能なので食品ロス軽減にもなり一石二鳥です。
   使用する乾物は近隣のスーパーでも入手しやすい、お麩、切り干し大根、高野豆腐を使用し、小学生でも作りやすいレシピの提案を行いました。乾物を食事に取り入れるきっかけになるよう、一つの乾物が様々な料理に『変身』出来ることを実感できるような教室を企画・運営しました。和食だけでなく洋食やお菓子などにアレンジしたり、それぞれの乾物がどのような工程を経て作られているのかを教室で伝え、教室で実習した料理以外の「変身術」をInstagramで投稿し、子ども達が教室で学んだことを保護者の方にも共有できるようにしました。最後の教室で、学んだことにより子どもたちが食に興味を持つ事に繋がったのか、乾物を使用したレシピを家でも実践しているかを確認します。この場で得た経験が、今後子ども達が食材を選択する際活かされることを願っています。

アルコールと良いお付き合いをしよう大作戦

   皆さんはお酒を飲むことが好きですか?ゼミで運営する男性料理教室に参加していく中で、受講者にお酒好きの方が多いことに気が付きました。また自分もお酒を飲むことが好きで、ついつい飲みすぎてしまう日も少なくありません。二日酔いに悩まされることも多く、なんとか解決できないか?と考えるようになりました。そこから、お酒を飲むこともやめず、自分で制限をかけたりせずに二日酔いをできるだけ防ぎたいという思いが生まれました。そこで、肝臓にやさしい料理を提案することに決め、テーマを「アルコールと良いお付き合いをしよう大作戦」としました。
   私と同じように、お酒が体に悪いと知りながらも、ついたくさん飲んでしまう方も多いと考えています。しかし、そんなことは気にせずにお酒を飲みたいという思いから、「飲みすぎを気にせずにお酒を楽しめる」をコンセプトとした居酒屋を仮想します。そのために「肝臓にやさしい」にこだわった食材を使用した料理のみを提供する居酒屋を考えました。メニューは、定番メニューとして“とりあえず”“逸品メニュー”“〆の一品”“デザート”と季節限定メニューを考えています。この季節限定メニューを、「季節の料理を先取りしよう!」というテーマで行っている男性料理教室で提案し、実施しています。
   これまでの料理教室では、デビルズエッグや豆腐ハンバーグなど様々な料理を提案し、その中で、お酒好きな受講者の方々からそれぞれの料理にアドバイスをいただきました。その声をもとに、より「おつまみらしく」なるよう修正を加え、仮想居酒屋の定番メニューとともにレシピブックにまとめます。これを、最後の料理教室で受講者の皆さんに配布し、自宅でも居酒屋気分を味わいながらお酒を楽しんでいただきたいと考えています。