令和5年度 食文化栄養学実習

衛藤久美ゼミ■国際食コミュニケーション研究室


プラントベースフードを日常に
健康と地球環境にやさしい選択

   私は健康的な食生活について調べていく中で、健康にも地球環境にも優しいプラントベースフードを活用した食生活に関心を持った。日常生活に取り入れようと考えたが、高価格であることや食事への取り入れ方、美味しさなど課題があるように感じた。本実習の目的は、身近なスーパーマーケットで購入可能なプラントベースフードを用いて、「健康」と「美味しい」の両立に繋がる食生活の提案をすることである。中間発表会では、プラントベースフードの定義や植物性食品と栄養面での特徴、地球環境との関係、プラントベースフード商品に関する市場調査の結果を発表した。今回は、簡単・時短をキーワードに考案したプラントベースフードを用いたレシピを発表する。
   まずレシピ考案のために、2つのことを行った。1つ目は、日本人成人の食生活課題について調べた。文献調査より、レシピを考案する上で、簡単に時短で作れることがバランスの良い食生活を送る上で重要だと分かった。2つ目は、スーパーマーケットで身近に販売されているプラントベースフードを調査することを目的に、市場調査を行った。豆乳やアーモンドミルクなどのプラントベースミルクや大豆ミートを販売しているスーパーマーケットが多く、自社ブランドから販売している店舗もあった。ここからスーパーマーケットのプラントベースフード市場は、拡大していることが分かった。
   と、身近で購入可能なプラントベースフードである豆乳と大豆ミートを使用したことが特徴である。これらを冊子にまとめ、11月に行われる地域住民対象イベントでは作成した冊子の配布や、レシピに関する講話を行う予定である。
   実習を通して食材を購入する際に意識するだけで、健康にも地球環境にも優しくなれることが分かった。全ての食事をプラントベースフードで置き換えるのではなく、日常の食事から手軽に取り入れていくことが大切だと実感した。

Farm to Fork and Future
一人一人の食の選択で豊かな未来を

   私は、WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)の利用やファーマーズマーケットでのボランティア活動を通じて、地球環境に好影響を及ぼす農法である環境保全型農業(自然栽培や有機栽培など)について知り、興味を持った。本実習の目的は、地球環境に好影響を及ぼす農法である環境保全型農業により栽培された食材を通じて「一人一人の食の選択肢一つでこれから先の地球環境を豊かにすることができる」ということを発信することである。
   これまでに、文献調査や有機農家へのヒアリングから有機農業の基本的な知識を得た他、有機農業と地球環境の関わりなどについて学んだ。また、さまざまな有機農家の元へ足を運び、農作業の手伝いなどをすることで農家さんの農業に対するいろいろな想いや、現代における農業の課題についても学んできた。
   中間発表会以降はこれまでに学んだことを活かしてワンデイカフェの開催、イベントへの出店活動を行った。
   「好吃宇宙(ハオチーウチュウ)」という「美味しい宇宙」を意味する活動名で活動した。コンセプトは、生きる上で必要不可欠で人の生活を満たす「食」を通じて、環境問題や日本の農業の問題点をより自分ごとと考えてもらうきっかけを作り、野菜一つを有機野菜に選択するだけでも地球環境を豊かにすることにつながるということを一人でも多くの人に伝えることとした。
   また、使用する食材は援農先から仕入れた野菜を使用し、自身が考案、調理した野菜や植物性食品中心の中華料理を、小川町のシェアキッチンで提供した他、援農先の農園が主催するイベントへ出店し販売した。
   今後は、より多くの人に環境保全型農業やこの活動について知ってもらうために、これまでの活動をまとめた動画を作成し、SNSを通じた情報発信を行う予定である。
   本実習を通じて、改めて地球環境にさまざまな好影響を及ぼす環境保全型農業の魅力に気づき、私たち地球市民一人一人が、何を食べるかが人と地球の健康の改善につながると考えた。そのため、今後も自身の食を通じた情報発信活動を継続し、環境保全型農業の魅力や、食べるものを選択するという一つの選択が、私たちと、私たちの地球のための大きな選択になるということを一人でも多くの人へ発信し続けたいと感じた。

災害時、あなたは何食べる?
ゲームと冊子で災害時の食に備えよう

   以前、ガスや水が限られた状態で調理を行い、災害時はさらに調理が困難だと考えた。防災意識を高めるため、災害時の食について身近に学べ、実践しやすいゲームと災害時に役立つ冊子を作成することを実習の目的とした。中間発表会では、文献調査により分かった災害時の食に関する問題、災害に関するゲームの体験、文献を基にガスコンロを使用した炊飯について発表した。今回は、1.災害時の食に関するゲームの作成と実施、2.メニュー考案、3.冊子の作成について発表する。
   1つ目の災害時の食に関するゲームは、災害時の献立を考えるカードゲームを作成した。災害時に起こりうる状況や栄養バランスをゲームのルールに関連づけた。8月のオープンキャンパスにて、ゲームの体験を実施した。参加者からは、備蓄する食品の参考になったとの声を頂き、災害時の食について考えるきっかけを作ることが出来た。
   2つ目は、火を使わずに出来る料理とパッククッキングで作る料理を考案し、試作を行った。料理で用いた食品はゲームと同様の食品を活用し、ゲームの振り返りにも使えるようにした。また、ライフラインが止まった時に再現しやすいよう工夫した。
   3つ目に、災害時に役立つ冊子を作成した。災害について、ライフラインの途絶、災害時の食事で気を付けること、災害食について、ローリングストック法について、考案したメニューを記載した。SNSでなく冊子という形にした理由は、災害時でも対応しやすいためだ。より多くの人に災害時の食を身近に考えてもらえるよう、地域住民対象イベントで冊子の配布とポスター展示し、情報発信を行う予定である。
   この実習を通して、災害時における食の問題について学ぶことが出来た。また、災害時のみならず、普段からカセットコンロを使用した調理を行うことやローリングストック法を実践することが大切だと実感した。

タイ米の魅力を伝えたい!

   短期留学でフィリピンに行った際に、初めてタイ米を食べて思ったよりも美味しかった。それまで私はタイ米=パサパサしていて美味しくないというイメージがあったが、実際に食べてみたところ、今までのお米とは違う味や食感と出会いとても感動した。しかし友人は美味しくないと食べなかったことに驚いた。そこで本実習の目的は、日本人でも美味しいと感じるタイ米料理を提案することである。中間発表会ではタイ米について、フィリピン料理やそこで使われている調味料について、ゼミ内で行ったタイ米の官能評価について発表した。今回は市場調査の結果について、タイ米のアレンジレシピやそれを載せたリーフレット作成について発表する。
   一つ目に、日本で食べられているタイ米料理を知ることを目的に市場調査を行った。東京都内にあるフィリピンレストラン三店舗を訪問し、その結果本場の味を再認識することができた。二つ目に、それを基に留学先で一番美味しいと感じた「ガーリックライス」や家庭料理である「アドボ」と呼ばれる肉料理、「シニガンスープ」と呼ばれる酸味の効いたスープ等を試作した。これらの試作を重ねゼミ内で試食会を実施し、ゼミ生の意見を踏まえてレシピを改善した。三つ目に、リーフレットを作成した。タイ米の魅力を一人でも多くの人に伝えることを目的に、タイ米がどのように食べられているか、タイ米の入手方法や価格、タイ米の美味しい炊き方やサフランライスとガーリックライスのアレンジレシピ、さらにフィリピンで実際に食べた料理などについても掲載した。出来るだけ堅苦しい説明にならないよう文章を簡潔かつ分かりやすくまとめることを意識し、写真も載せることで見ている人が飽きないよう工夫した。多くの人にタイ米を知るきっかけになって欲しいと思い、地域住民対象イベントで配布する予定である。
   実習を通して、これまで知らなかった料理や調味料を知り、まだまだ知らない食が多く存在しているのだと実感した。また、多くの人に食材の魅力や良さを伝えるためには、様々な工夫が必要なのだと気付いた。

食のスキルを高める食育
─自信を持って楽しく食べよう─

【実習動機・目的】
   私は幼少期に孤食の経験があり、成長するにつれて子どもの頃から食のスキルを高めておけばよかったと後悔することが増えた。そのため、そのような思いをせず自信を持って食事ができる子どもを増やしたいと考えた。本実習の目的は幼児期から学童期の子どもを対象に食のスキルを高める食育を計画・実施することである。
   本実習における「食のスキル」とは、「楽しく食べる子どもに」(厚生労働省、2004年2月)を参考に、食を営むのに必要な能力のこと、具体的には食べ方や食事づくりの技術だけではなく、自分にあった適切な食べ物の選択、一緒に食べる人への気遣いなど、食事全体を構想し、実践できる力を含むこととした。
【実習内容】
   食育のテーマに、食事前後の挨拶、配膳、よい姿勢、箸の使い方の4つを食のスキルとして取り上げることに決めた。また、食育教材について文献調査をし、子どもが視覚的に楽しむことが出来る紙芝居に魅力を感じた。中でも紙芝居の受け身になる場合があるという欠点を解決する参加型紙芝居を作成することとした。今回は食事マナーに関する食育の考案と実施について発表する。
   テーマは「マナーじょうずをめざそう!」とし、今回の食育の目標は1.食事前後の挨拶を知っている子どもを増やす、2.正しい配膳位置を知っている子どもを増やす、3.食事中のよい姿勢を知っている子どもを増やす、4.食具の正しい使い方を知っている子どもを増やす、の4つとした。紙芝居は、幼児の女の子を主人公とし、子どもたちが一緒に体験することで主体的に学べることを心がけた。また、年齢に合わせた言葉選びや説明をするなどの工夫をした。考案した食育は保育園や地域住民対象イベントで実施予定である。
   今回の実習を通して、相手にわかりやすく説明することや理解度に合わせた教材を作る必要性などを実感した。

SOGIに関わらず快適に過ごせる食事環境

   LGBTQ+の抱える問題は様々あり、食に関係するものも存在する。飲食店においては、男女でサービスが違う場合の誤りや同性カップルが一部のサービス利用を認められないことなどがあると指摘されている。プライベートな話が上がりやすい食事の場で、当事者はプライバシーの露呈を懸念することもあるという。本実習の目的は、このような食の場面での不安や不快を取り除くため、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity:性的指向と性自認)に関わらず、誰もが快適に過ごせる食事環境について提案することである。今回は、LGBTQ+フレンドリーな飲食店の調査結果、SOGIに関する意識調査アンケートの結果、情報発信の3点について発表する。
   まず、性的少数者を差別することなく友好的な関係を築こうとする態度を示す「LGBTQ+フレンドリー」であることを表明している飲食店4店舗に実際に訪れ、店舗ごとの異なる特徴や共通点がわかった。次に、SOGIに関する意識調査アンケートを実施した。大学生のSOGIに関する言葉の認知度やLGBTQ+に対する意識を明らかにし、考察と情報発信に活かすことを目的とした。2023年10月に、食文化栄養学科の1〜4年生を調査対象とし、Microsoft Formsを利用したインターネット調査を行った。主な調査項目は、SOGIに関する知識・意識・経験・行動、快適に感じる食事環境、SOGIについて知りたいこと、基本的属性である。このアンケートの調査結果をまとめ、考察したことを発表する。また、アンケート調査結果からわかったターゲットの知識や知りたいことをもとに、SOGIに関わらず快適に過ごせる食事環境づくりに向けた提案を行い、これらについてまとめたパンフレットを作成し、情報発信する予定である。