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テーマ、「在日外国人の食生活と日本型食生活」。山本です。
よろしくお願いします。
目的は在日外国人の食生活の実態調査と、
食をテーマとした日本語学習のためのリーフレットの作成です。
3年次は日本の食べ方に注目して、実習を進めていました。
3月には、イタリア大使館職員のご夫人を対象とした料理教室を開催しました。
メニューは松花堂弁当でした。
先生の師範中にも熱心に質問がでて、
日本の食事に大変興味を持っていることを実感しました。
そうして実習をすすめていたところ、坂戸市の日本語教室から
日本語料理教室を開いてほしいという依頼がありました。
料理教室の参加者は日本語教室に参加している学習者です。
日本語教室は中央公民館、千代田公民館、北坂戸公民館の3箇所で週に1回1時間半ほど開かれています。
参加者は日本人と結婚した人、留学生、仕事のために来日した人などで、来日期間や出身国、日本語のレベルなども様々です。
日本語のボランティアスタッフともにそれぞれに適した内容で、読み、書き、会話など日常生活に密着した日本語の学習をおこなっています。
この日本語教室の一環として行われた日本語料理教室は生活に密着した日本語を学ぶこと、体験しながら日本語に触れることでより日本語を効果的に理解することを目的としていました。
しかし、私は日本語に興味をもっている方たちに日本語を学ぶだけでなく、
この料理教室をきっかけとして日本の食事や健康的な食べ方にも
興味を持ってもらいたいと考えました。
 
日本語教室の一環として本大学を主宰として2回開催しました。
メニューはご覧のとおりです。
日本語教室に参加、料理教室を開催しているうちに、
在日外国人は自国にいる場合と手にはいる食物、人との関係、生活リズムなどが変化することで
食生活にも変化があるのではないだろうかと考えるようになりました。
より効果的に日本型食事と呼ばれている食事パターンの紹介をするために、
日本語教室に参加をしている学習者を対象とした現在の食生活の実態調査を行いました。
 
アンケートは3回、普段の日の朝食、昼食、夕食とそれぞれの食事について伺いました
アンケートの回答では詳しく把握しきれない部分については直接に話を伺うことにしました。
 
質問は日本語で行いました。
学習者の出身国が多様であること、この調査が自分の食事を振り返って理解し、
日本語で表現することで生活に密着した日本語表現を学ぶことも視野に入れているという理由からです。
 
ひらがなであれば読むことは可能な方もいるのですべてにふりがなをふりました。
 
読むことが困難である方、日本語理解の難しい方はスタッフの方に協力していただいて質問の内容や回答の方法を理解して回答していただくことにしました。
また、食事というプライベートな部分のことで、アンケートに書くということに抵抗を感じる人もいたため、
自分自身がボランティアスタッフのお手伝いをして、日ごろの「食」に関することを話題にして伺いました。
これはアンケート結果にはいれておりませんが、リーフレットの作成に役立てました。
食事のバランスについては、普段よく食べるメニューを書いてもらうことで、一汁二菜などの食事として形が整っているかどうかを判断しました。 一汁二菜をイメージさせるために主食にあたる「ごはん、パン、麺その他に該当するもの」、
主菜にあたる「メインディッシュ」
副菜、副々菜にあたる「サブディッシュ」、そして「飲み物」、「その他」に項目を分けました。
これは最終的に日本の食事、食生活を理解しやすいように自分の食事を分類できるようにするため、このような項目で分けることにしました。
それぞれの日本語教室の特徴を説明します。
中央公民館は平日の午前中に開催しており、主婦のかたが多く見られます。
日本人の配偶者をもっている方も多くみられます。
ボランティアスタッフも日本人の主婦が多く見られるため、日常生活をテーマとした会話に力をいれて学習しています。
 
北坂戸公民館では土曜日の昼間に行われています。平日は働いている人が多く日本語検定を目標としている人もいます。他の公民館に比べて読みや書きにやや力をいれた学習をしているようです。
 
千代田公民館は平日の夜に行っています。昼間は働いている人や留学生が多く見られます。テキストを多く使い、読みに力をいれて学習をおこなっています。
 
複数の公民館で日本語教室に参加をしている人には最初にお会いした公民館を参加公民館とし、昼食、夕食についても一番最初にとった朝食のアンケートで参加した公民館を有効とすることにしました。
 
複数の公民館で日本語教室に参加をしている人には最初にお会いした公民館を参加公民館とし、 昼食、夕食についても一番最初にとった朝食のアンケートで参加した公民館を有効とすることにしました。
朝食の摂取状況についてです。「毎日とる、時々とる、とらない」の選択肢で回答していただいたところほとんどの方が毎日とると答えています。
朝食として形が整っているかどうかを判断するために、
「朝食でよく食べるメニューはなんですか?」という質問で回答者に書いてもらいました。
結果は一部の方が一汁二菜あるいは一汁三菜が整っているだけでだけにとどまりました。
実際の食事は食パンあるいは惣菜パンに牛乳やコーヒー、果物という方が多く、
整っていた方は日本人の夫や夫の家族がいて朝食はご飯と味噌汁があるような朝食をよく食べている方に多く見られました。
一汁二菜というイメージは和食をイメージしがちですが、
実際には朝食に和食を選んでいる人は少なくなっています。
そのため、リーフレットの朝食のページに和食だけを提案するのでは日常にそぐわないものになってしまいます。日常生活にとりいれやすく、またより身近に一汁ニ菜のイメージをもってもらうためにも洋食ものせることにしました。
 
朝食の内容を話題に会話をしていると、自分の配偶者の両親、つまり日本人の高齢者と自分たちとで食事の内容を変えているという話も伺いました。
そこでリーフレットにのせる料理は、ほとんど同じ材料をつかって和食、洋食の朝食を提案することにしました。
さらにパンと牛乳だけといった単品のメニューではなく一汁二菜の朝食のよさも提案できるようなものにしたいと考えました。
こちらはリーフレットの一部です。
次に昼食についてです。まず摂取状況についてです。
ほとんどの人が摂取しています。
次に昼食をどこで食べるか、伺いました。
結果はご覧のとおりです。
この結果は昼食のアンケートの回答者が
北坂戸公民館と千代田公民館の参加者で占めているからです。
公民館の特徴でも、ご説明いたしましたが
北坂戸公民館と千代田公民館は平日働いている人や留学生が多いため、
外出しているという回答が多くなったという結果になったと思われます。
昼食として形が整っているか、これは朝食同様、よく食べるメニューから判断しました。
アンケートの回答方法をあらかじめ外出している人が多いという仮定を元に
食べる場所、週何回くらい食べるか、よく食べるメニューを自由回答にしました。
外食をしている人の多くは近くのラーメン屋や食堂、あるいは社員食堂をあげる人が多く、
自分で作った弁当を持っている方もいらっしゃいました。
中学生も参加しているので学校給食という回答もありました。
 
社員食堂の定食、学校給食を回答した場合は一汁二菜が整っていることとしました。
 
整っている人が38%と外食で一汁ニ菜に触れているひとが多いようです。そのイメージから一汁ニ菜を身近に感じてもらうためにリーフレットの昼食のページでは定食の形で説明することにしました。
 
昼食で一汁二菜がそろわなかった人に多く見られたメニューは
ラーメンやうどんといったもので、比較的早く食べられること、
定食に比べて安価であることも理由のようです。
こちらが実際に作成したリーフレットの一部です。
定食を選ばない食事をしている人にもラーメンをタンメンに変えることで野菜が多くとれることや、うどんに小鉢などの副菜を加える提案をすることにしました。
 
これは会話の中で、ラーメンやうどんは食事としていけないのかという指摘があったからです。
私はラーメンやうどんの食事を否定するのではなく、よりよくするための提案をしたいと思っています。
次に夕食のアンケート結果です。参加公民館はご覧のとおりです。
次に出身国です。朝食や昼食においてもほとんど変わらず、
アジア圏、特に中国出身の方が多く見られます
年齢構成です。20代の割合は多いですが、
ほかの世代の方も多く参加していることがわかります。
男女比です。参加公民館からもわかるように中央公民館に参加している方には主婦が多いので、
結果として、女性の割合が高くなっています。
家族構成です。
朝食のときと同様、食事一人暮らしより同居の比率が高くなっております。
夕食の摂取状況です。
毎日と答えた人がほとんどでした。
家族と同居していると答えた人は100%
夕食は家族全員、あるいは何人かと食事をするという回答でした。
一人暮らしの人は一人で食事をするという回答でした。
実際にとったアンケートです。少し読みにくいですが、実物は展示してありますので後ほどご覧ください。例をあげてわかりやすくなったのか、解答欄に主食、主菜、副菜を正しく入れられる人が見られるようになりました。
 
日本語のまだよくわからないかたには説明が必要なのですが、説明する側の日本人にメインディッシュという分類がうまく伝わらなかったようなので主食、主菜、副菜という表記も必要だったとおもいます。
夕食の一汁二菜の整っているかどうかという結果です。
他の食事に比べて比較的そろっている方が多く、そろっていないという人のなかでも汁物だけがないなど、乱れが比較的小さいように思われます。
食事は中国料理と日本料理が半々だといいますが、
実際に食べている食事を振り返って書いてもらうと
炒め物が複数でてくる食事が多く、自分の得意な中国料理が作られる傾向にあると思われます。
こちらがよくみられた夕食の例です。
例えば日本語では炒めてある料理ははひとくくりに炒め物、あるいは野菜炒めと称しますが、
中国には強火で一気に炒めるだけでなく、一度揚げるようにしてから炒めるなど、
炒め物にもさまざまあるようです。
 
味のバリエーションはあるものの油の量を考えますと日本の家庭料理に比べやはり多いため、リーフレットでは自分の得意な料理を生かすことができ、さらに油の量を減らすことができるような調理法を提案したページにすることにしました。
また和洋折衷にすることで、日本人にも学習者にも受け入れられやすいものになったと思います。
以上のアンケートの集計、実際の会話から得た情報をもとに実際にリーフレット作りをしました。
普段使っているテキストのような日本語の物語やただ語彙を増やすためのものでなく、
より楽しんで日常会話の上達もめざすため、リーフレットは会話形式ですすめることしました。
アンケート同様、普段使う漢字はそのまま用い、その上に振り仮名をふりました。
また、日本人同士には伝わる省略や感覚で伝えるようなあいまいな表現は極力避けるようにしました。
 
例えば、食事を共にする人に対する質問の場合に指摘されました。
食事はどなたとりますか。回答、全員で、家族何人かと、という表現において、
全員で、の「で」はどういう意味だとか、
食事をとるの「とる」とはどう意味なのか、食べるとはどこがちがうのかなどという質問が出ました。
 
日本人には感覚的にうまく伝わっても、学習者には表現によって伝わらないことがわかりました。
また、ボランティアスタッフの方も説明に困っておられたので
そのような表現は避けるようにしました。
 
また、リーフレットの登場人物の間柄を少し親しい人間柄にすることで
難しい敬語の表現を避けました
また日常生活の日本語になれていない学習者にとっては、
主食、主菜、副菜、汁物、など専門的な用語はさらに難しいため、
それぞれに色のマークをつけ、色で視覚的に分類ができるようにしました。
掲載する料理の選択は日本語教室に参加させていただいて
学習者の方と会話をしながら得た情報をもとに選びました。
 
具体的に注意した点を上げますと、
安価で、すぐに手に入れられる食材であること、
日本人の配偶者がいる人の場合は夫の両親と同居している場合が多いようで、
日本人の高齢者の好みに合う料理を教えてほしいということ、
日本料理ばかりだと自分が満足できないので、うまく組み合わせられるようにしたい
ということがあげられました。
 
また、新米主婦とベテラン主婦、一人暮らしのあまり料理をしないひとなど、
調理技術にも差があるため、簡単な調理法を用いました。
こちらがリーフレットの一部です。リーフレットは回しますのでごらんください。
わかりやすさとみて楽しいかどうかにも気をつけてレイアウトなどをきめました。
 
第二回日本語料理教室があったさい、参加者に実際にリーフレットを読んでいただき、内容や、日本語についてわからない点を指摘していただきました。
今回はアンケートではなく、会話の中で伺うことにしました。
アンケートにしなかったのは、日本語教室が会話を学ぶ場でもあるということと、
自由回答を書くという作業がまだ難しい人が多いということ、
書くことに比べて、学習者は会話の方が表現しやすいという理由からです。
 
自国語のようにさらさらと読むわけにいかないため、一度にすべて読んでいただくことはできませんでしたが、内容自体はアンケートをふまえたためでしょうか、たいていの箇所はすんなりと受け入れられました。
 
改善点として日本語の数字の読み方にも苦戦している人がいらしたので、数字にも振り仮名をしました。例えば、一つ、一回、一汁など同じ1というものでも読み方が違うことに苦戦しているようでした。
 
また二つの文がつながって一文になっているような表現は難しいといわれました。
その箇所です。
 
指摘してくださった方と話して、その部分、「いう」を漢字にすることで読みやすいことがわかり、漢字に振り仮名をふることにしました。
 
また、内容がわかっても少しかたく感じたのか、
栄養のことはわかってはいるけれど・・・・と身近に感じてもらえない印象になったようなので、もっと楽しんでやれるようにクイズを加えることにしました。
また、クイズをすることで理解度も深めることができるとも考えました。
考察、提案です。
自分の興味のある身近なことをテーマとして取り上げることは楽しんで学習することや学習の意欲の向上につながるようです。
 
食事というのは当たり前のことですが誰でもが取ります。
そのため、食事のことは話題にしやすいのではないでしょうか。
 
また、自分の国を離れると自国の料理や自分の家庭の味には強いこだわり、誇りをもつようです。
例えば昨日の夕食は何を食べた?という質問に答えることで,食材は何を使ったとか、料理方法の説明がでてきます。例えば、こんな食材を使って、うちではこんな風に料理するのよ。と説明します。
 
日本語でうまく伝えられないと、中国出身の方は漢字を使った筆談を交えて、英語圏の方は英語を混ぜて自分のことを何とか説明しようとします。
 
そのときにボランティアスタッフが日本語ではどういう風にいうか、日本語ではなんと説明するかを教えます。そうすることで、学習者の身近な日本語の語彙が増えますし,会話自体も弾み、楽しめます。
例えば日本語教室に通っている人の中には日本語を話せるようになって仕事をしたいという人もいます。日常的な会話はどんな仕事にも必要ですが、スーパーでの仕事を見つけたいという人には今回のアンケートやリーフレットは有効だったようです。
また、食を通して日本語を学ぶことで、食そのものにも興味をもち、食生活を大切に思うになるという効果もあり、相乗効果が得られるのではないかと思います。
これらのことからも日常的な日本語を学ぶのにはとても適したテーマであるように思われます。
今回制作したリーフレットやアンケートを展示しておきましたのでご覧になってください。
以上で発表を終わります
ご清聴ありがとうございました。