卒業したら、中華料理の本場で料理の修業をするために中国に留学します。半年間は北京で語学を勉強しますが、その間にいろいろな土地を訪れてみて、一番気に入った料理がある場所で本格的に学び始める予定なんです。私がやりたいのは麺料理と点心。将来は「麺点師」という資格を取りたいんです。
 麺点師というのは中国の調理師の資格のひとつで、麺料理と点心を専門に作る人のこと。中国でしか取得できない資格です。中国でも調理師は国家資格ですが、餃子師や麺点師などと細かく分かれているんです。麺点師にもさらにランクがあって、5級から特級まであります。目標は、麺点師・特級の資格を取ること。そして、さらに自分だけのオリジナリティを加えて、自分だけの点心や麺料理を作れる個性的な料理人になるのが私の夢なんです。
 料理は小学1年生ぐらいから見よう見まねで作っていました。父は会社員、母は保育園の保母さんで共働きでしたので、祖父母が面倒を見てくれていたんですが、自分と妹の食事を何となく作るようになって。そのうち友だちや祖父母にも作ってあげたら評判がよかったんですね。自分が作ったものを誰かが食べて「おいしい」って喜んでくれるのがすごく嬉しくて、それでどんどん料理が好きになっていったんです。だから、料理人になるのは小学生の時から決めていました。中華料理、さらに麺料理と点心に目標を絞ったのは高校に入ってからです。麺料理と点心に惹かれたのは、皮などの生地の段階から自分の手でこねて作れるから。ゼロからちゃんと自分で作っている気がして、相手に食べてもらった時に喜ばれるとうれしさが倍増します。
 実を言うと、大学に進学するつもりはあまりなかったんです。高校で調理師の免許は取得したので、卒業後は高度な調理技能を教えてくれる専門学校に行くつもりでした。でも、ここの大学案内を見た時に、文化栄養学科の「食のスペシャリストを養成する」という言葉にすごく惹かれ、授業内容でも自分の好きなテーマで実習できる「文化栄養学実習」という科目に特に魅力を感じました。高校の先生の勧めもあって、推薦で受けたら合格しました。正直な話、専門学校と大学、どちらを選ぶか迷いました。でも、専門学校に行って就職するのでは、ごく当たり前の料理人になるようで、つまらなく感じたんです。だったら、もっといろんなことが勉強できる大学に行き、型にとらわれず、自分のいい面を伸ばせるような生き方をしたかったんです。
 私は料理が上手なだけじゃなく、「食」についていろんな方法で表現できる料理人になりたいんです。料理ができる過程をマンガやアニメを自分で作って見せるとか、お客さんを楽しませたいのです。私は、絵を描いたり歌を歌ったり、写真を撮ったりするのが料理と同じほど大好きなので、そういうものも取り入れたいんです。自分の好きなことを大切にするのは、ひとつの才能だと思います。友だちにはやりたいことがないという人もいましたが、本当は好きなことがあるのに、気づいていないだけだと思います。だから、後輩に送れるエールがあるとすれば、いま自分が好きなことをずっと好きでい続けて、ということ。途中で好きなことが増えてもいい。好きという気持ちを大事にしていけば、きっと何かが見えてくると思います。