栄養イノベーション専攻
微生物学・臨床検査学研究室
中屋 祐子 准教授
低温で増殖可能な食中毒菌を知っていますか?
冷蔵庫の中でも増殖する食中毒菌Listeria monocytogenes(リステリア菌)はご存知でしょうか?ご存知ない方、多いかと思います。欧米では多くの集団感染が報告されていますが、国内での発生は散発的です。また、リステリア菌は、潜伏期間が長く、原因食品の特定が困難であることから、食中毒の統計に載らないことが、広く知られていない理由です。
主な原因食品はready-to-eat(RTE)食品(加熱せずに喫食可能な食品)であり、免疫力が低い高齢者などは髄膜炎や敗血症などを引き起こす重篤な感染症です。この様なことから、コーデックス(国際食品規格)委員会は、食の安全性の確保のために、リステリア菌の規格基準(表)を定め、基準を満たさない食品は流通してはならないとしました。検査の対象食品は、欧米ではRTE食品全般ですが、国内では限られた食品のみとされています。その理由は、現在の日本では、食品へのリステリア汚染があっても、菌量が少ない状況であるからです。しかし、近年、輸入食品の増加やRTE食品の普及に伴い、リステリア菌による食中毒の増加が懸念されています。
安全の基準
【米国・EU諸国・日本のRTE食品におけるL. monocytogenesの規格基準】
対象食品 | 規格基準 | |
アメリカ | RTE食品全般 | 陰性/ 25g (検出されてはならない) |
EU諸国 | RTE食品全般 | 100 cfu/ g以下 (保存中に増殖の可能性がない食品群) |
日本 (平成26年~) |
•非加熱食肉製品 •ナチュラルチーズ(ソフトおよびセミハードに限る) |
100 cfu/ g以下 |
食品安全委員会食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
漬物のリステリア汚染実態調査(卒業研究の様子)
先生からヒトコト
私たちの研究室では、検査の対象食品ではないRTE食品の汚染実態を調査しようと考え、漬物のリステリア汚染について実験しています。
「食」は私達の生活にとって欠かせないものです。私達の健康を守るために、食の安全性について一緒に考えていきましょう。