スープの魅力

　「食を学びたい」
　小さい頃から食べることが大好きだった私は高校生になって漠然と、そう思うようになりました。
　女子栄養大学 食文化栄養学科に入学することを選んだのは、栄養学はもちろんのこと、 日本や世界の食文化、調理、商品開発について学べると思ったからです。

　１年生の前期に行われた平成25年度第1回食文化栄養学実習発表会※で、私は松田ゼミの発表に興味を持ちました。 そのとき4年生だった先輩は、手作りの制服を着て、カフェについて発表していたのです。 「カフェの運営について学びたい」「カフェメニューの開発に携わりたい」 「3年間で身につけた調理技術を生かし、料理を通して“想い”を知ってもらいたい」と考え、 3年生後期から始まる食文化栄養学実習※では松田ゼミを選択しました。

　今年度の松田ゼミは、月に約2回、学内施設で、カフェの運営を行っています※。 内装・メニュー開発・制服デザイン・コンセプトなど、カフェの運営に関係すること全て、先生に相談しながら決定し、 それぞれ各個人のテーマを進めていきます。

　また、松田ゼミでは代々伝承されている一つのテーマがあります。それは、「シフォンケーキ」です。 ただのシフォンケーキではありません。ベーキングパウダーを使わずにメレンゲだけで大きくふわふわにするレシピです。 これは、先輩方に直接教えていただきます。

　今回は、私の取り組んでいるテーマについてご紹介します。 私は、ランチのワンプレートについて、他のゼミ生２人と協力しながら日々試作を行っています。 ランチプレートは「メイン」「シフォンサレ（食事系シフォン）」「スープ」とテーマを大きく3つに分け、 私は「スープ」について取り組んでいます。スープに着目したきっかけは、一般的なワンプレートランチにおいて、 スープは質素・簡素なものが多く、どうしてもオマケのようなイメージがあったことからでした。 そこで、もともと大好きなスープに焦点を当て、今回は、あるときは主役、 またあるときは引き立て役になるようなスープを作りたいと考えました。

　それでは、実際に提案した4月のスープをご紹介します。4月といえば春。 春らしい食材を取り入れたいと考え、旬の「たけのこ」に注目しました。
　最初の試作で作ったのは水煮のたけのこを使用した、「たけのこのオニオングラタンスープ」です。 しかしこれは、「季節感がない」「冬っぽい」「水煮のたけのこが美味しくない」といった、 ゼミ生・先生の意見から、改善が求められました。
　次に提案したのは「あさりとアスパラガスのスープ」です。 たけのこに縛られずに、他の旬の食材を使用することも考えました。 しかしこれも、「どこにでもありそう」「アスパラガスが退色する」 「他の料理との彩がよくない」「地味」といった意見から、こちらも採用見送りとなりました。

　一つの料理としての「味・旬・見た目」だけでなく、他の料理とのバランスを考えながらワンプレートとして完成するものを考える。 商品開発の難しさはここにあると思います。

　ゼミ生同士で相談しながら、何度も何度も試作を繰り返します。 0.１ｇ単位で食塩量を気にしたり、スープに入れたままにしておくと退色の恐れがあるものは提供の直前に 別ゆですることで未然に防ぐなど…注意しなければならない項目はキリがありません。 しかしその一つ一つをクリアしていくことで、コンセプトやテーマに合った料理が出来上がるのです。
　最終的に、「たけのこのポタージュ～ピリ辛鶏団子入り～」を提供しました。 季節感が出た上に、たけのこをハンドミキサー（ブレンダー）を使って細かくし、玉ねぎと一緒にポタージュにするという新発想で仕上げました。 少し重めのポタージュに辛めの鶏団子を入れピリッとさせ、最後まで飽きずに食べられる味になりました。 見た目には、ラー油を数的垂らし、青ネギを散りばめて春らしい彩りのある一品にしました。 他の料理とのバランスもよく、アンケートでは良い意見をたくさんいただきました。

　現在は、秋・冬メニューの開発に精を出していますが、なかなか食材が見つからなかったり、 使いたい食材があっても簡単に手に入らなかったりすることがあり、思うように試作が進みません。 こういった大変なこともありますが、「美味しかった、また来るね」「○○と××の組み合わせって斬新だけどおいしいね！」 と笑顔で食事をしているお客様をみると、街中にある本当のカフェを運営をしているかのようでうれしくなります。
　また、来客数が前回より上がっていると、ゼミ生全員で喜び合います。 徐々に伸びてきているので、今後もいろいろな壁に当たるとは思いますが、ゼミ生一丸となって精一杯取り組んでいきます。