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「熱中症やけがなどの応急処置」講演要旨

女子栄養大学教授  鎌田  尚子

マネージャーは素晴らしい仕事
   養護教諭として実際に働いていた時は、養護教諭の良きパートナーとして、マネージャーの方に大変お世話になったことがあります。マネージャーは、選手のために汗を流したり、一緒に涙を流したり、悩んだりという、とても素晴らしい仕事であると思います。選手からは、直接お礼を言われることは少ないと思いますので、私がかわってこの場で「ありがとう」とお礼をいいます。また、選手の健康管理、体調管理ができるという力は、今後のあらゆる場で活かされると思います。
   まず、熱中症を予測する「暑熱環境計」というものがあることをご紹介します。これは持ち運びができ、その場、その地点の環境を数値として計測できるものです。これにより、選手の体調管理、熱中症を未然に防ぐことができます。また、気象庁のホームページには、「熱中症予防情報」が出ていますから、それを利用することも有効です。マネージャーの仕事では、そうしたデータ、科学的な根拠も必要になります。

熱中症とは
   熱中症への対応には、積極的な予防、なってしまった時の対応、日常の健康管理があります。「熱中症」は、仮に40度以上の熱が出た場合でも、20分以内に下げられれば、助かります。ただ、きちんとやるべきことをやらないと、死に至る場合があることも忘れてはいけません。
   では、熱中症とはなんでしょう。熱に中る(あたる)といい、体外の高温環境と運動による発熱の調節が出来なくなって起こります。高温下で起こる場合、汗の停止、体温上昇、血液の循環が弱くなるといった症状があらわれ、症状によって熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病(重症)というように大きく分けられます。こうした「熱中症」が起こる環境因子としては、高温、高湿度、風通しの悪い服、直射日光といったことが考えられます。実際には、急に暑くなったときや蒸し暑くじめじめしているとき、直射日光が当たるとき、風が少ないとき、強い運動をしているときに起こります。ですから、外だけではなく、部屋の中でも起こるわけです。
   どういう状態の時におこりやすいか。これは、疲れている、寝不足である、暑さに不慣れである、太っている、水分を摂っていない、食事を摂っていないといった時に起こりやすくなります。疲れているという場合、肉体的だけではなく、精神的に弱っている時も要注意です。これらは、日頃の生活習慣が大きく関わってきます。朝食を抜いたり、夜更かししたりと生活のリズムが整っていないことは、大きなマイナスです。
   次に熱中症の見分け方です。マネージャーは、選手の側にいます。ですから、意識がなくなるといった症状になる前に、気づいていただきたい。まず、元気がなくなる。そして、呼吸が速く、浅くなる、大量の汗をかく、いつもの動きができない、いつもの頑張りがないといった状態は、熱失神の前段階です。この時に、「休みなさい」とマネージャーがストップをかけてください。
   次に、熱中症の中程度は、誰が見てもおかしいという状態です。よろよろする、走れない、力が入らない、頭が重い、腹痛、吐き気がするあるいは吐く、脈が速くなる、そして皮膚が蒼白で冷たく、多量の汗をかく、逆に皮膚が赤く乾燥し、熱いといった症状が現れます。こうなる前にマネージャーストップをかけましょう。
   重症になると、汗をかかなくなり、意識がない、返事が鈍い、言っていることがおかしい、身体の異常なほてりといった症状が現れてきます。こうした時は、服をゆるめる、意識の確認を行う、顧問に連絡し、すぐに手当てをするとともに、救急車を呼ばなければなりません。非常に危険な状態です。おかしいと思ったら、とにかく休ませることが重要です。
   対応としては、軽症・中等度の場合は、涼しいところに運ぶ、衣服を緩め寝かせる、足を高くする、水が飲める場合は0.2%の生理食塩水やスポーツドリンクを飲ませる、手足を心臓に向かってマッサージする、そして励まします。この段階で良くなったように見えても安静にし、病院へ連れて行った方が安心です。また、重症の場合は、濡らしたバスタオルを身体にかけて冷やしながらクーラーのきいた部屋に移し、うちわであおぐ、首、わきの下、足の付け根の太い血管の部位を濡れタオルを取り替えながら冷やす、足を20cm高くして心臓に向けてマッサージすることが必要です。

マネージャーができる熱中症予防
   では、熱中症を予防するためにマネージャーができる点について、お話しします。まず、毎日の健康管理・観察が大切です。睡眠をしっかりとる、食事をしっかり摂ることを奨励しましょう。そして、疲労を早く回復させるためにストレッチや深呼吸、マッサージ、入浴・足浴、好きな音楽に合わせて軽い運動をするといったことも大切です。また、水分補給は、運動前にコップ1杯、練習中にも30分おきにコップ1杯摂ることをこころがけましょう。
   次に、応急処置についてです。「RICE」という言葉を知っているでしょうか。これはRest(安静・休息)、Icing(冷やす)、Compression(固定する)、Elevation(あげる)の頭文字の略で、ねんざ、打撲、骨折、肉離れといった骨、関節、筋肉、じん帯、皮膚の外傷に対して行う応急処置の仕方を現しています。
   それぞれには、組織の修復作用を助ける、痛みと腫れをおさえる、腫れを抑えて修復作用を手伝うといった働きがあり、Cの固定には、治りを早くする目的もあります。
講演スライド1(約145KB)PDF  講演スライド2(約40KB)PDF

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広報部学園広報担当 Last updated: 06/12/28