教授 堀江修一
助教 福島真実、平石さゆり(栄養科学研究所)
大学院修士課程 梶村佳世
卒論研究生
生活習慣病は「私達が日々の暮らし方を是正すれば健康になれる」ことを期待して付けられた名称のようですが、その原因を分子レベルで解き明かすことによって、予防法や治療法が生まれてきます。その鍵を握るのが、脂肪細胞と血管内皮細胞の研究です。脂肪細胞は巨大な内分泌臓器と考えられるようになり、そこで造られて分泌されるアディポサイトカインは全身の細胞に大きな影響を及ぼします。一方、全身の細胞に酸素や栄養素、ホルモンなどを運搬する血管の一番内側にある血管内皮細胞は、ヒト一人分の全身の細胞を1つずつ繋げた場合は総延長が9~10万km(地球の約2周半)にもなる長さで、内腔面積は約3000m2という巨大な臓器です。すなわち、肥満や糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、あるいは心筋梗塞や脳卒中、ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)などの静脈血栓症は、両細胞の機能異常と密接に関連しています。実際には、血管内皮細胞や脂肪細胞から血液中に放出される成分や細胞内の代謝を調べて血栓の準備状態や内臓肥満を基盤とする病的状態を判定し、治療に役立てること、また時間栄養学の観点から、食事をする時刻や食組成によって体内の様々な因子の発現リズムに及ぶ影響について研究しています。
実験の結果や研究の方向性について教職員、大学院生、卒研生でワイワイ、ガヤガヤ話していると、自然に連帯感が生まれ、「何でも前向きに頑張って行こう!」という気持ちになります。当研究室では、食生活の改善によって脂肪細胞や血管内皮細胞の機能を制御し、生活習慣病や血栓症の予防・治療法の開発、抗癌剤への応用など実際の臨床の場に貢献できる研究をしたいと考えています。
一方、大学院の研究では、病気の治療や予防に対する最先端の医学的アプローチについて理解するだけではなく、遺伝子情報を駆使したオーダーメイド医療などの高度な医療技術の急展開に伴って浮かび上がってきた様々な倫理的問題について学びます。すなわち、最新のバイオ関連技術を利用することによって新たに生じてきた功罪について、医師や研究者、患者や家族、発展途上国の弱者や企業側のそれぞれの視点に立って考えながら、現代社会の中で生命倫理の重要性を理解できる人材の養成を行います。
① 食生活から見た概日リズム(体内時計)と血栓症、肥満
② 脂肪細胞の活性化や脂肪の蓄積を抑制する因子を介した生活習慣病の予防と治療
③ 血管内皮細胞による癌細胞の浸潤・転移の抑制作用
④ 栄養指導による生活習慣病の予防と改善
当研究室の研究内容は、産学官との連携が可能。
私達の健康は食を基盤とした生活により成り立っています。環境の変化により遺伝的な変容を遂げてきたヒトの遺伝子と食の果たす本来の意味との関係について考えながら、飽食、ダイエットによる貧食や絶食、偏食、あるいはサプリメントや薬物、自然界に存在しない成分の接取が私達の健康に及ぼす影響について、時間栄養学や生活習慣病との関連で研究していくことはとても大切なことです。長寿社会になり、また食糧不足が叫ばれる地球的規模の視点からも、私達の研究は原点に返った極めて基本的で、かつ重要な研究として特徴付けられると考えています。