令和4年度 食文化栄養学実習

宮澤紀子ゼミ■食品化学研究室


Twinkle☆GreenPepper
ピーマンの新しい魅力

 ピーマンは第二次世界大戦以降、洋食や中華料理の普及に伴い、日本で広く普及した食材です。一般的な食材であるのにも関わらず、他の食材と比較して主役級メニューのレパートリーが少ないというアンケート結果がありました。そこでピーマンを自ら育ててみることとピーマンが主役のメニュー提案を通じて、魅力を発信することを目的としました。
 1つ目の取り組みは、貸農園と家庭菜園で種からのピーマン栽培に挑戦しました。栽培環境や品種により味、大きさ、色に変化が現れるのかを検証し、より魅力的なピーマンを見つけるためです。収穫したピーマンの官能評価を行ったところ、貸農園と家庭菜園では、品種間に味の違いはみられませんでしたが、生と焼きでは焼きの方が食べやすい、苦味が少ないといった調理方法による違いがみられました。この結果から、ピーマンメニューを考案するのであれば、焼く調理を取り入れた方が良いと考えました。
 官能評価の結果を踏まえ、2つ目の取り組みとして、ピーマンが主役のメニューの開発を行いました。まずはピーマンを物足りないと思っている人に向けて、たくさんピーマンを使ったメニューを考案しました。ピーマン料理の定番、肉詰めをハンバーグへ、マルゲリータをピーマンづくしのクアトロピーマンマルゲリータにアレンジしました。次に、ピーマンがあまり得意ではない人へ向けて、他の具材との調和を考えたメニューとして肉巻きピーマン、3色丼、4色丼、青椒肉絲ドリア風、ピーまを考案しました。考案したレシピは、全ておすすめできる仕上がりとなりました。完成したレシピは、SNSやレシピサイトで発信しました。発信したレシピが、1人でも多くの人においしいと思ってもらえることを期待します。本実習での取り組みの成果を通じて、ピーマンを食べるきっかけ、好きになるきっかけになればと思います。

おいしく食べたい!あまり見ないきのこたち

 私はきのこが大好きで毎日きのこを食べています。スーパーでは人工栽培されたシイタケやエノキタケなどのきのこがいつでも並んでいますが、珍しいきのこはほとんど見かけません。そこで実習テーマとして、日本国内で人工栽培されているきのこの中で、まだ市場に広く流通していないきのこを取り扱いたいと考えました。そして、きのこのおいしさや魅力について発信することを通じて、珍しい食用きのこの認知度を向上させ、消費に貢献することを本実習の目的としました。
 まず、対象とするきのこの選定を行いました。きのこは農林水産省の統計資料を基に自身で選定基準を設け、ヤマブシタケ、ハナビラタケ、タモギタケとしました。次に、選定したきのこの特徴、それらに適する調理法などを把握するため、既存のレシピを用いた調理と試食を行いました。その後、把握した特性をまとめ、それらを反映させたオリジナルレシピの制作を行いました。レシピ制作の際には「タモギタケは独特な強い香りがあるため、香りを少し押さえる材料を加える」など、きのこの特徴的な香りや味を活かしつつ食べやすくすることを心がけました。次に、嗜好性の評価とレシピの改善箇所を抽出するため、官能評価を実施しました。その結果、きのこの特性を活かすためには、きのこ以外の食材の量を再考する必要があり、特に香りの強い食材は使用する量に注意しなければいけないことがわかりました。そして繰り返し試作を行い、改善箇所を反映したレシピを完成させました。最後に、完成したレシピをクックパッドに掲載し、きのこのおいしさと魅力を発信することができました。本実習で取り組んだ活動が、珍しいきのこについて知り、食べるきっかけとなること、さらには食への興味や関心を高めることで消費に貢献することを期待します。

発見!新たなぬか漬けの魅力を開拓!

 普段皆さんは漬物を食べますか?私は、幼いころから漬物が大好きで、家では少なくとも2種類の漬物を常時ストックしています。今まではきゅうりや大根などありきたりな食材を使った漬物を食べることが多かったのですが、あまり見たことがない意外性のある新しい漬物の顔が見てみたいと思うようになりテーマに設定しました。
 近年、簡単にぬか漬けを作ることの出来るぬか床キットが市場に広まったことから、SNSでは『#ぬか漬け生活』などの投稿が増えています。そこで4種類のぬか床キットを購入して漬物を作ってみたところ、原材料のほとんどが共通するぬか床でも酸味の強さや味の浸透具合などに違いがあることが分かりました。違いの原因を追究するため、ぬか床の原材料に使用されている米ぬかの品種を変えることで違いがあるか検証試験を行いました。同じ銘柄の水と食塩、品種の異なる米のぬかのみを用いて実施したところ、うま味に差がみられたため、ぬかの品種が食味に影響することが分かりました。調製したぬか床の中で、私は千葉県産コシヒカリの米ぬかを使用したぬか漬けが一番好みでした。スーパーやコンビニで漬物の市場調査を行い、意外だと感じた食材をピックアップし、千葉県産コシヒカリのぬか床で漬けた結果、料理のアクセントになり、かつ美味しく食べられるなどの新しい可能性を見つけました。新たな発見ができた漬物で簡単なアレンジ一品レシピを考案し、魅力をさらに追及しました。
 私は本実習を通じて、漬物には幅広い魅力と可能性があることが分かりました。私の取り組みをきっかけとして、多くの人が漬物を食べてみようと思っていただけたら嬉しいです。今後も自分好みのぬか漬けの開発に挑戦していきたいと思います。

玄米を食べたい!
~手軽においしい玄米の食べ方~

 皆さんは玄米に対してどのようなイメージがありますか。玄米に関する調査結果から、玄米に対して健康に良さそう、栄養が豊富そうという意見がある一方で、食味が好ましくなさそう、調理が難しそうなどの意見があることを知りました。私自身も、玄米の独特な臭みやぼそぼそとした食感から、玄米を美味しく食べられたことがありませんでした。しかし玄米は、精白米にはない糠や胚芽の栄養が豊富に含まれており、精白米に比べて栄養価が高いという特徴があります。そのため、生活に取り入れることでより健康を意識した生活ができるのではないかと考えました。そこで本実習では、玄米を使った美味しく作りやすいレシピの提案を通じて、玄米が苦手な人やこれまで食べる機会のなかった人に玄米を食べるきっかけを作ることを目的としました。クックパッドやクラシルなどのレシピ検索サイトで既存のレシピの特徴を調べたところ、炊き込みご飯や炒飯の利用が多いことが分かりました。このことから、それらの調理方法は玄米と相性のよいのではないかと考え、本実習では、炊き込みご飯と炒飯に絞って、オリジナルのレシピ提案をすることにしました。まず、玄米の炊き込みご飯や炒飯に合う食材や、作り方の特徴を知るために、既存レシピをいくつか試作しました。試作した結果、香りに特徴のある食材を使用することで、より玄米の独特な臭みや食感を感じづらくなることが分かりました。オリジナルレシピでは、それらの食材を使用し、既存のレシピよりも手軽に作れ、苦手な人でも食べられる食味になるよう意識しながら作成しました。考案したレシピを玄米と精白米でそれぞれ調理し、食べたときの特徴を把握するために官能評価を行いました。そして考案したレシピはクックパッドやインスタグラムにて発信しました。レシピを通して、日常の食事の中でより多くの人に玄米を取り入れてもらいたいと考えています。

お米の楽しみ方を広げる

 新型コロナウイルスが流行したことで、おうち時間を活用し、料理やお菓子作りをする機会が増えたことにより小麦粉やホットケーキミックスの需要が高まり、供給が追い付かないというニュースを目にしました。そこで、常に家にある身近な食材で、お菓子作りで使う小麦粉の代わりになるものを考え、「米」を使用することを思いつきました。
 「米」は世界で食べられている穀物であり、日本人にとって最も身近な食材だと思います。一般的に「米」は炊飯し、「ご飯」として食べています。そこで、米をお菓子作りの材料として使用するという新たな活用方法を提案することで、ご飯として食べる以外にも米の楽しみ方があることを紹介することにしました。
米を使用したお菓子について調べ「生米スイーツ」に出会いました。生米スイーツの中でも、手軽さ、簡便さを重視し、本実習では、「生米マフィン」を扱うことにしました。米はコシヒカリやあきたこまちなど様々な品種があります。品種ごとに仕上がりに違いが生まれるのかを知るため米に含まれるでんぷんのアミロース量に着目し、ふんわりやもっちりなどの特徴を明らかにするため、低アミロース米から2品種、高アミロース米から2品種ずつ使用し試作を行いました。
その結果、低アミロース米はもっちり感、高アミロース米はふんわり感が強いとわかりました。そこで米の品種の違いによるもっちり感やふんわり感に着目しレシピを考案しました。また、軽食やお菓子として、カボチャマフィンやオニオンマフィンなどのレシピも考案しましたので、それらを発表の中で紹介します。
 米の消費量は年々減少しています。米離れが進む中で、令和4年度農産物の産地品種銘柄設定等の状況によると、銘柄数は921にのぼります。好みの品種を見つけ、ご飯としてだけではなく、異なる利用法で米を楽しむ機会が増えることを期待します。

カラーピーマンで日常に彩りを
~ドライカラーピーマンでレシピ考案~

 皆さんはカラーピーマンにどのようなイメージを持っていますか?カラーピーマンとは従来の緑色とは異なるピーマンを指します。色は7色確認されており、赤、黄、オレンジは完熟果、黒、紫、茶、白は未熟果です。また形も様々あり、ベル型、扁平型、くさび型などがあります。そんなカラーピーマンは甘みがあり食べやすい食品ですが、レシピの種類は限られています。そこで乾燥させドライカラーピーマンに加工することで食材の可能性を広げ、レシピの幅が広がると考えました。本実習では生産から消費までを繋げて取り組むことをテーマに、実際にカラーピーマンの栽培を行うと共に、収穫したものを加工し、レシピの提案を行いました。2022年4月末に苗を購入して栽培を開始しました。同時に市販のカラーピーマンを使用してドライカラーピーマンの乾燥方法の検討を行いました。乾燥方法は天日干しと温風乾燥で実施しました。その後それぞれの味の違いなどを官能評価し、温風乾燥に決定しました。カラーピーマンの栽培では害虫発生や育成不良のトラブルが起きましたが、対策を重ねることで、9品種を収穫することができましたが、品種によって収穫量に偏りが出ました。収穫したものを温風乾燥でドライカラーピーマンに加工し、官能評価を行いました。その結果をもとにレシピの考案を行いました。試作を繰り返し、ドライカラーピーマンの甘さを活かしたレシピと酸味を活かしたレシピの合計4品を考案できました。完成したレシピはクックパッドなどのSNSでの発信と冊子の作成を行いました。本実習ではカラーピーマンの栽培を通じて、食品を栽培する難しさに触れることができました。また、ドライカラーピーマンという新しい食べ方の提案と新たなレシピの提案を行うこともできました。これからもカラーピーマンを多くの人に広めていき、カラーピーマンの消費拡大を願っています。

坂戸市産ハチミツを使用した簡単レシピの提案

 埼玉県坂戸市は、ミツバチと共生できる環境づくりを目指して、市民ボランティアとともにミツバチプロジェクトに取り組んでいる。大学のある坂戸市が、2013年度から全国で初となる自治体によるミツバチの飼育を開始したことを知り、プロジェクトに興味を持った。プロジェクトはミツバチの飼育を通して、坂戸市の自然環境の保全、ハチミツを特産物とした商業の活性化を図ることを目的に活動している。そこで本実習では、プロジェクトに参画し、坂戸市産ハチミツを使用したオリジナルの簡単レシピの開発を通じて、坂戸市のハチミツを広める活動を行った。
 まず活動への理解を深めるために、ハチミツに関する文献調査や養蜂場の見学、採蜜体験を行った。そしてハチミツレシピ第一弾としてスイーツ、ドリンク、ドレッシングの簡単レシピを考案し、坂戸市のホームページで発信した。レシピは「ハチミツをもっと身近に」をテーマに、単純な材料でポリ袋や電子レンジを使用することで、一般家庭でも手軽に作れるものを目指した。次にハチミツレシピ第二弾として主菜や副菜のレシピを中心に考案した。第二弾では、坂戸市産ハチミツの販路拡大のために、考案したメニューを組み合わせ、市内の社員食堂で提供するための定食のメニューとしても提案した。定食はハチミツ尽くしのメニューとし、ハチミツの風味が活かせるように試作と試食を繰り返した。また定食メニューは簡単に作れることのほか、栄養バランスも考慮し、健康意識を高めるメニューを目指した。こちらも考案したレシピは坂戸市のホームページで発信する。
 発信したレシピを通じて、ハチミツが砂糖の代わりに甘味料として様々な料理に活用できることを知ってもらい、ハチミツの消費拡大と、坂戸市の商業の活性化に繋がることを期待している。

広める!アボカドをスイーツで!
~生産者の想いと共に~

 近年、日本の市場にアボカドは定着してきていますが、よく目にするのはスーパーで売られている輸入のアボカドではないでしょうか。そこで国内で生産されているアボカドを取り上げて、国産アボカドの魅力発信と新たな食べ方としてアイスクリームの提案を行うことにしました。
 まずは、アボカド栽培について文献を調べて理解を深めました。そのなかで生産者がどのような想いでアボカドと向き合っているのかなど、生産者のことをより深く理解したいと考え、生産に関わる方に国内での「栽培方法」と「栽培に対する想い」についての2項目に分けてインタビュー調査を行いました。約10年前まで日本の暖かい地域でしか栽培できなかったアボカドが、今では暖かい地域に限らず、新潟県などの寒い地域でも栽培できることを知りました。一般家庭でも栽培されるなど、徐々にアボカドを栽培する人や層が増えていること、数多くの品種のアボカドが作られていることが分かりました。
 栽培方法ややりがい、国産アボカドにどのような魅力があるのかなど多くのことをインタビューした中で、回答にあった「品種の豊富さ」と「品種の違い」という部分をレシピ提案に取り入れました。アイスクリームの試作において、スーパーで手に入りやすい食材を使う、簡単な工程で作ることができる、アボカドの色味を活かすということを軸にしました。国産アボカドの品種の豊富さや違いを活かすために、さっぱり、香ばしい、クリーミー等のテーマを設定し、それぞれのテーマに合う食材とアボカドを組み合わせて新しいものを考案しました。考案したレシピはクックパッドに掲載し、発信しました。
 本発表と配信レシピが、多くの人に国産アボカドのことや新しい食べ方がまだたくさんあるということを知るきっかけになればと期待します。

国産りんごの特徴を活かしたレシピ開発!

 日本には2000種類もの品種があるりんご。皆さんはどの品種のりんごが好きですか?料理検索サイトのクックパッドでは、品種の特徴を活かした料理はほとんど掲載されていません。そこで、収穫量割合が約8割を占めている青森県産と長野県産のりんごを使用して、品種ごとの特徴を活かしたレシピ開発を行うことで、よりりんごの魅力を知ってもらうことを目的としました。本実習において使用するりんごの品種は、収穫量割合が5割を占めているふじ、次いで収穫量割合が高いつがる、王林、ジョナゴールドとしました。まず、りんごの品種による特徴を明らかにするため、りんごの試食と官能評価を実施しました。官能評価は家族を対象として、甘味、酸味、香り、舌ざわり、色彩、総合を5段階で評価し、結果を甘味と酸味の強弱を示すチャート表にまとめました。次に、りんごを料理に使用した時の特徴に変化があるのか明らかにするためアップルパイの試作を実施しました。以上のりんごとアップルパイの試作と官能評価より、ふじりんごの酸味より甘味の方がやや強い特徴、ジョナゴールドの酸味の特徴など、それぞれの品種による特徴を明らかにできました。これらの結果より、りんごの特徴を活かしたオリジナルレシピ開発を実施しました。そこで、本実習でのレシピ開発のテーマを「一汁三菜+デザートorドリンク」と設定し取り組むことに決めました。テーマの理由は、大学4年間の講義で一汁三菜を食事に取り入れることの大切さを学んだからです。そこで、大学での学習を本実習でも取り入れたいと考えました。オリジナルレシピは、ふじりんごの酸味より甘味の方がやや強い特徴を活かした炊き込みご飯、ジョナゴールドの甘味より酸味が強い特徴を活かした酢豚、王林とつがるの甘味の特徴を活かしたサラダ、スイーツを考案しました。レシピ開発がりんごの魅力を知ってもらうきっかけになることを期待します。