令和4年度 食文化栄養学実習

宮内正ゼミ■文化学研究室


ポチる瞬間が最高潮

 “これって、本当に欲しかったモノ……?” 欲しいと思って購入した物や服、お菓子これらは本当に欲しかったモノなのでしょうか。私たちが何か物を購入するとき、あらかじめ決めていたものを購入する計画購買は1割程度に過ぎません。ほとんどが衝動買いです。前回の研究で衝動買いは、純粋衝動購買、想起衝動購買、提案受入衝動購買、計画的衝動購買の4つに分類されること、衝動買いをしてしまう原因は、自分の社会的地位や家計、流行などの社会的・経済的・文化的要因に加えて、自身の心理状況などの個人的要因やセールなどの外的要因が大きく関わっていることが分かりました。
 みんなが持っているから自分も欲しい、という気持ちに駆られたり、期間限定や値引きのポップに釣られてつい購入してしまったりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。しかし、それらの購買行動は自らが本当に欲した訳ではなく、周囲の状況に流されたり、自分のネガティブな気持ちや高揚した気持ちを落ち着かせたりするための行動の一つに過ぎないのではないでしょうか。それゆえ、購入したモノに対してではなく、購買行動それ自体で満足してしまい、結局、購入した商品を使わない、などと、買うだけで満足してしまうという現象が起きます。こういうケースでは、本人自身、後から振り返ってみると購入した理由を思い出すことができず、購入したモノに対する満足度も低い、ということが分かりました。
 今回の研究では、4つに分類された衝動購買の中の純粋衝動購買に焦点を当て、人が衝動買いをしてしまう原因についてさらに追究するとともに、衝動買いにおける商品購入満足度、人々に衝動買いをさせるための企業や小売側の施策、衝動買いの抑止方法について考察します。

スポーツ観戦における食の役割

 皆さんは現地でスポーツ観戦をしたことがありますか? 私はよく地元にあるバスケットボールのプロチームの試合観戦に訪れます。そこでは会場にお祭り時のように出店が並び、観客は飲食物を手に持ちながら試合観戦をします。考えてみれば、スポーツ観戦することと飲食することは本来無関係であるはずなのに、なぜ人々はスポーツ観戦しながら飲食をするのか、不思議です。
 この疑問から研究を始めました。中間発表では、スポーツ観戦しながら飲食することと何らかの関係があるのではないかという関心から、外食と屋台の始まりの歴史的背景について文献調査を行いました。さらに、現地調査としてアンケートも実施し、利用目的やその理由について尋ねました。そのアンケート結果からスポーツ観戦会場における飲食には「特別感」が求められていることが分かりました。特別感を演出する要因には、「食べ物」「空間」「みんなで盛り上がれる場所」の三つがあるのではないかと考えました。これら三つの要因から「スポーツ観戦において食は楽しさを向上させる役割を担っている」と考察しました。
 今回の発表では、新たに行った現地調査で分かったスポーツの種目の違いによる観客の楽しみ方の違いを、野球・サッカー・バスケットボールを比較しながら発表します。実は、これまで私はバスケットボールの試合しか観戦したことがありませんでした。そこで、思い切って、野球とサッカーの試合会場に足を運んでみると、あまりにも観客の楽しみ方に違いがあることに驚きました。中間発表で得られた考察をもとに、プロスポーツチームに対して行った商品提案も含めて、スポーツ観戦における食のあり方や今後の展望について発表します。

カフェという場所を考える

 若い世代にとっても身近な場所となっているカフェ。休憩がてらに少し立ち寄ったり、友人と会話しながら食べることを楽しんだりと、利用シーンは人それぞれである。最近ではSNSの影響が大きいこともあり、カフェを調べる時はネットよりSNSで検索する方が、より詳しくたくさんの情報が手に入る。街中には様々なカフェが存在し、懐かしさを感じる喫茶店風のカフェや流行を取り入れたカフェなどがあるが、特にSNS上で話題になったカフェには、写真で見た飲食物を目当てに訪れるようになる。そうなるとこれまでのカフェの目的や意味とは異なってくるのではないかと思い、なぜ人々はカフェに行くのか、訪れる目的とカフェ空間について調査することにした。カフェ空間は利用目的と関係していると考え、空間にも着目しながら、今後カフェはどのような場所になっていくのか考察していく。
 前回の発表では、これまでに訪れたカフェのなかから大きく3つに分類し、利用シーンや年齢層といった特徴を見ていった。そこで現在新しくできるカフェは、話題性があり目当てのものを食べに行ったり、見た目がおしゃれで美味しそうな食べ物の写真を撮ることが目的になっているのではないかということに気がついた。また紅茶専門店のカフェのような一つの食べ物を専門的に扱うお店や、動物カフェのような特定の事柄を売りにしているカフェが存在することも知った。
 今回の発表では前回の発表で気づいたことを踏まえて、様々な形態のお店を比較しながらどのようなサービスを提供しているのかを読み解いていく。さらにカフェ空間は、居心地との関係がありサービス提供の一つなのではないかと考え、空間に魅力があるお店も紹介したい。今後カフェに行くにあたって、普段とは違った楽しみ方をできるきっかけになれば嬉しい。

和食と日本酒と居酒屋と。
~あったらいいな、こんなお店~

 皆さんは『居酒屋』と聞いて何を思い浮かべますか? 「お酒を飲む場所」と思い浮かべる人が大多数だと思います。しかし『居酒屋』はただ、お酒を飲むだけではなく、もっと魅力があり、奥が深いと感じたことが、私が『居酒屋』にはまったきっかけでした。
 そもそもこの研究をしようと思ったのは、創作系の居酒屋めぐりが好きなこと、「映える」だけでクオリティがいまいちと感じた店があったこと、SNSででトレンド入りしていなくてもクオリティの高いお店が多く存在すること、そして、日本酒を好きになったことです。初めて三軒茶屋で居酒屋めぐりをした日のことをいまでもときどき思い出します。料理、空間、接客、お店の雰囲気、すべてに魅力を感じました。
 また、『居酒屋』は飲んで食べるだけでなく、人と人をつなぐ場の一つなのではないかと実感します。人情、懐かしさ、郷愁、同僚・仲間との合流・懇親・コミュニケーション、他のお客さんとのやりとり、店員さんとの何気ない、気どらない会話。友人とお酒を片手に語りながら、そこでしか出会えないおいしい肴を楽しむ、これが私の思う『居酒屋』の魅力です。
 6月の発表会では、様々なお店で現地調査を行い、『居酒屋』を、「写真映え」「レトロ居酒屋」「トレンド・居酒屋」という三つに分類し、「内観・外観」「料理」「店員さん・お客さん」という三つの観点から比較しました。今回の発表会では、『居酒屋』はどのようにして生まれたのか、『居酒屋』に何を求めて人々は足を運ぶのか。また、他の飲食店にはない『居酒屋』ならではの魅力を研究し、なぜ魅力的に見えるのかを考察します。そして、お料理・お酒・接客スタイル・店舗空間の雰囲気から、私が考える理想の『居酒屋』、あったらいいな、こんなお店を追究していきます。

私の家のごちそう
~家族と料理のつながり~

 私は家族が作ってくれる家庭料理について研究しています。大学入学後に一人暮らしをはじめ、家庭料理のありがたみを感じるようになったことから、このテーマについて研究することにしました。私は母と祖母が料理が得意だったこともあり、幼い頃から食べることが大好きでした。実家である長野県はおいしい野菜や果物がたくさんあり、それらを駆使した料理を食べて育ってきました。庭の畑で採れた新鮮な野菜や果物は非常においしく、季節ごとに旬の食材を活かした調理をしてくれました。母はレシピ本や実家にある薪ストーブを使った料理をよく作り、祖母は伝統ある郷土料理や先祖から伝わる調理方法で料理を作ってくれます。レシピ本や薪ストーブを使った母の料理は、ローストビーフやミートパイ、ピザなど洋風な料理が多く、レシピを母がアレンジしているので他にはない我が家の味だなと感じます。一方祖母は、山菜おこわや松茸の土瓶蒸し、きんぴらごぼうなど和食が多く、旬の食材を昔から伝わる伝統ある方法で調理してくれます。
 前回の発表会では、私のこれまでの食経験をもとに我が家の家庭料理とレストランの料理を比較し、異なる点として調理方法、調理器具、料理の盛り付け、サービスなどを挙げました。また、人との関わりとしてレストランは特別な雰囲気であり本格的な料理が楽しめる場所であり、我が家の家庭料理は独自の味付けから温かみや懐かしさが感じられることがわかりました。今回の発表会では、家族へのインタビューを行い料理に込められた思いについて考察します。そして、これまでの研究を通し、私にとって家庭料理とはどのような存在なのかを明らかにします。みなさんが家庭料理について興味関心を持ち、家族への有難みを感じるきっかけになればうれしいです。

お菓子の謎と魅力

 いまはどこでも手軽に手に入り、いつでも食べることのできるお菓子。お菓子は私たちの日常に欠かせないものとなりつつある。そんな身近なお菓子をみなさんはどんな時にどんな場所で食べるだろうか。前回の発表では私たちの生活においてお菓子とはどのような存在であるかについて追究した。私にとってお菓子とは、癒しの存在である。なぜなら、疲れた時や幸せになりたい時などにお菓子を食べると幸せな気分になれるからである。お菓子を自分のための癒しのために食べることが多い。さらにコロナ禍になってからは、ひとりで過ごす時間が多くなり、以前と比べるとひとりでお菓子を食べることが多くなった。
 しかし、私の友人やアルバイト先の人は、よくお菓子をコミュニケーションの一つの手段としていろんな人と話しながらお菓子を食べるのを楽しんでいる。会社によっては、お菓子が机の上に置いてあるところもあるそうだ。なぜなら、そのお菓子がコミュニケーションを活性化させるのだ。そして、なによりひとりでお菓子を食べるよりも人と一緒に食べるほうが美味しく、楽しいのである。実際に、私は旅行のお土産のお菓子をあげたことがきっかけで会話が弾み、以前よりもさらに仲良くなった友人がいる。そして今思えば、私も昔から駄菓子屋さんで安いお菓子を食べながら、友達とのコミュニケーションをよく楽しんでいた。なにより、お菓子を人と一緒に食べると普段から食べている馴染みある物でより一層にお菓子が美味しく感じることがあるのはなぜだろうか。お菓子には、美味しいや癒し、幸せ以外にも位置付けや役割あるのかもしれない。人と食べるといつもより美味しく感じるということについてもさらに追究をしていく。

あなたにとって、ごはんとは?
ごはんという日本語の不思議

 日常生活の中で、あなたはどのようなときに"ごはん"という単語を使用しているでしょうか。炊いた白飯を指したいとき、友人をご飯に誘うとき、食卓に並ぶ料理の数々をまとめて言うとき。さまざま思い浮かぶと思います。
 前回の中間発表会では、"ごはん"という単語の意味がどのように変化してしたのか。"めし"との違いは何か。"ごはん"というシュチュエーションの考察。以上3つを行いました。結果として、白飯から始まり、それを含む料理の数々、最終的に食を営む空間全てを指すように変化したこと。"めし"は、室町時代の「食べる」の尊敬語である「召す」が名詞化したものであり、"ごはん"は、室町時代に漢語の「はん」という言葉が「お(御)」を加えたものであること。"ごはん"を使用するシュチュエーションを5つ挙げ、"ごはん"の事例集として、日常生活でどのようなときに使っているのか、またどのようなニュアンスが付与されているのかをそれぞれ考察し、言葉の前後の文章、相手、その状況によって意味が違うということがわかりました。今回の発表会では、アンケートをもとに、私たちが"ごはん"というものに対して持っているイメージや感じることなどの分析と考察、日本語に興味を持っている外国人に理解してもらえるリーフレットの作成を行います。
 日本語は、時代とともに新たな意味を付与されながら変化を遂げてきました。日本という集団の中で生活していると、無意識に使用している言葉の中にも、さまざまな意味が混在するひとつの単語を違和感ひとつ覚えず理解し、使い分けていることが多くあります。ふだん何気なく使用する"ごはん"という日本語の不思議さ・奥深さに触れてみてはいかがでしょうか。

回転寿司の世界

 私は回転寿司に行くのが好きです。少なくとも月に二回、多いときは週に一回は行きます。 回転寿司は、高級品というイメージのあるお寿司が一皿 110 円からと安価な価格で提供され、友人や家族はもちろん、一人でも気軽に利用することができます。また、レーン上をおいしそうなお寿司がぐるぐると回転していく様子を見るのも楽しみの一つです。こうして回転寿司に通ううちに、時間帯によって利用者の年齢層に違いがあることに気がつきました。年齢層が違えば当然、選ぶお皿の種類も違うはずです。それだけでなく、一人なのか誰かと一緒なのか、その一緒に行く人が誰なのかによって、その食事シーンのもつ意味合いも違ってくるのではないか、と。学校の友人なのか、アルバイト先の同僚なのか、 家族なのか、付き合っている彼/彼女なのか。それによって、久しぶりのお出かけのごはんなのか、バイト帰りの遅い夕食なのか、恋人との楽しいおしゃべりのひとときなのか、など。
 中間発表では、ちょっとした特別な食事、憩いの場、デートの一環、軽く済ませる食事等、一緒に行く人によって利用目的が多様であること、このように様々な使い方をしている人たちを、同じ店舗空間の中に受け入れていることが分かりました。これらのことから、多様な目的や用途に利用できる許容性や柔軟性こそが回転寿司の魅力であることがわかりました。回転寿司の魅力である許容性のある演出をどのように仕掛けているのか、他の外食店との違いや店選びの基準、ネタだけではなくサイドメニューの役割といった中間発表では紹介しきれなかった回転寿司の奥深い世界についてを発表したいと思います。私の発表を聞いて少しでも回転寿司に興味を持ち、足を運んでくださったら嬉しいです。

スターバックスコーヒーはなぜ人気があるのか

 近年、SNSなどを見るとカフェの需要が増えていることが分かります。なかでもスターバックスコーヒーは幅広い世代に親しまれています。スターバックスはなぜこれほどまでに人気があるのでしょうか。
 スターバックスは外観や内装に様々な工夫が見られます。地域の土地柄を感じさせる店舗、地域を象徴するモニュメントや建物や風景を生かした店舗が数多く存在します。店内をみると、勉強している人や読書をする人、会話を楽しんでいる人、さまざまな用途でスターバックスを利用している人が見られます。
 友人たちにスターバックスの利用目的を尋ねると、自分のご褒美に利用する、雰囲気が落ち着くので利用する、などの回答とともに、SNSに投稿したいので利用する、という回答があることに気づきます。「SNSへ投稿したい」という利用目的は、SNSが普及した現代ならではのものであり、いまやスターバックスの人気に大きく関わっているのではないのかと思います。一方、商品については、季節限定のフラペチーノが人気です。このフラペチーノと SNSという二つの要因がスターバックス人気の鍵ではないでしょうか。たとえば、Twitterで、フラペチーノの新作情報をどこで知るのかを尋ねると、SNSで知るという項目が断然、一位になります。こうした傾向はスターバックスに限らず、他のカフェでもあてはまることではないかと思います。近年、InstagramやTwitterなどを利用して宣伝するカフェが多く見られるという現象はまさに、SNSとカフェが大きく関係していることを物語ることだと言えるでしょう。
 絶大な人気を誇るスターバックスの客層や利用目的などの調査を行い、人はカフェに何を求めて利用す るのか、なぜここまでカフェ文化が発展をしたのか、カフェとSNSとの関わりとはどういうものか、について考えます。

今日の心地よさ
〜なぜ人はカフェを利用するのか〜

 皆さんはどのようなときにカフェを利用しますか? おいしいコーヒーを味わいたいとき、休憩や気分転換をしたいとき、友人や知人とおしゃべりがしたいとき、食事や軽食をとりたいとき。近年ではコンビニや自動販売機で売られているコーヒーの種類が増えたり、インスタ映えするようなカフェや「おうちカフェ」という自宅でカフェ気分を味わう人がコロナ禍で増えたり……。このように人々が多様な目的で利用するカフェとは、いったい何が求められているのでしょうか。
 中間発表会では、全国展開、地域展開、個人経営の三つのカフェの現地調査を行いました。外観、内装、過ごし方、客層の四つの比較項目を設定し、利用の仕方を考察した結果、女性の利用者が多く、年代別の過ごし方に大きな違いがあることがわかりました。これまでのカフェのイメージは、コーヒーをくつろぎながら飲む居心地のよい空間でしたが、コーヒーを味わうためだけの目的ではなくなってきており、カフェという言葉の意味する範囲は広がっています。皆さんの街のいたるところにあるカフェは私たちが気づかないうちに時代を経て変化し続けているのです。
 今回は、カフェというイメージや役割が時代をつうじてどのように変化し、今の私たちが認識している「カフェ」へと変化していったのかを明らかにし、カフェにおける「心地よさ」とは何かを考えます。また、前回の調査結果をもとに、なぜ女性がカフェを求めるのか、年代別に人々はそれぞれ何をカフェに求めているのかを解明します。そして、以上の考察をつうじて、家庭でも学校でも職場でもない第三の場所である「カフェ」がどのようにして精神的な「心地よさ」や「支え」をもたらしてくれるのかを考えます。

ぼっち飯ってかわいそう?
~ひとり行動・ひとり時間で得られるもの~

 突然ですが、皆さんはひとりで外食をしたことがありますか? 「ぼっち」でご飯を食べるのはかわいそうなことですか? 恥ずかしいことですか? 学校や職場で一緒に食事をする相手がいないことに一種の恐怖を覚えることをランチメイト症候群といいます。近年はインターネットが普及し、SNSなどを通じてオンラインでコミュニケーションをとることが増えました。その反面、人と直接関わり合うことに苦手意識を持つ人も増えています。みんなでランチをとることにストレスを感じる背景には、このような時代的な要因もあるのかもしれません。
 しかし現在では、ぼっち飯をつらいと思う人ばかりでもないようです。コロナ禍でソーシャルディスタンスを意識し、黙食をせざるをえなくなったおかげで、コロナ禍以前に比べると、より一層ひとりで飲食店へ行くことに抵抗がなくなってきているのではないでしょうか。
 さらに、ぼっち飯という表現だけでなく、おひとりさま席のことを「ぼっち席」という表現も聞かれるようになりました。ファミレス、食堂、カフェなどで、ひとりで食事をすることを前提として用意されている席のことをこのように言うことがあります。これまでは、ひとりで入店しても、複数人が利用できるテーブル席に案内されることも多く、かえって「申し訳ない気持ちになる」ことも多々あったかと思います。しかし、そういうとき、あらかじめぼっち席が用意されていると、「申し訳ない気持ち」や「後ろめたい気持ち」を覚えることなくゆっくりと過ごすことができます。近年では、テーブル席を減らしてぼっち席を増やす店舗も多くなっていて、ひとりで来店するお客さんのためにさまざまな工夫を凝らすところも増えています。大学の学生食堂にも、ぼっち席を導入しているところがあります。じっさい、ぼっち飯の実態はどのようなものになっているのかについて発表します。

和食の美とは
幕の内弁当を中心に

 日本料理は「美しい」といわれる。日本料理はなぜ美しいのか、美しい料理とは何か、について追究する。もちろん、日本料理や和食と言っても、その意味範囲は広大である。ここでは、日本人の生活を支えている身近なもの、弁当について考察する。
 中間発表では、第一に、幕の内弁当という対象とは何かついて検討した。幕の内弁当は食の外部化による日本の弁当産業が益々発展してきた背景をもとに、伝統的な食文化の反映であると同時に、流行やトレンドを常に追いかける消費文化の生み出す商品である。すなわち、あるターゲットや目的が決まっている「デザイン」された対象であることがわかった。同時に、文化・歴史的背景を調べると、それは「間に合わせ」ものして定義されていることがわかった。第二に、具体的にどのような研究分野と研究領域に位置づけることが適切であるかついて考察した。美しさについては、美学・デザイン学の分野であることがわかった。そこで、美学の定義や美学用語を調べ、美しいという判断(カントの趣味判断)について、美しい判断の種類(カントの自由美・付随美)について発表した。
 以上の考察を踏まえて、今回は次の三つのことについて考えたい。一つは、デザイン学の側面から幕の内弁当の在り方や価値について考えることである。二つは、付随美についての検討を進めることである。三つは、デザインされたことの美しさについて、「日常美学」という観点から調べることである。以上の研究をもとに、「幕の内弁当の今後の在り方や美的価値」についてのより深い考察を発表する。最終的に、幕の内弁当を通じて日常的なものである日本料理に秘められていた美的経験について論じ、新たな日本料理の価値が発見できる研究にしていきたい。