令和4年度 食文化栄養学実習

藤倉純子ゼミ■健康情報科学研究室


メディアが与える女性の瘦身願望

 近年、過剰な痩せ願望や過度なダイエットで歪んだボディ・イメージをもつ若年層が増えている。YouTubeの広告やSNS等の投稿が《ダイエット》に関するもので多く溢れかえっている。痩せることが綺麗、可愛いと言われる事が当たり前になっている。自分自身も過度なダイエットをした経験がありメディアの発信する情報が疑問に思った。そこで10代〜20代の女性を対象にメディアが与える痩身願望有無の実態を把握することを実習目的とした。
 体型を気にするのは日本人だけなのか疑問に思い「ボディ・イメージ」「若年層」「やせ」「ダイエット」をキーワードに文献調査を行った。体型を気にするのは日本人だけであること、第二次世界大戦を境に日本の食生活が欧米寄りに傾き、脂質と炭水化物を多く摂取するようになったこと、ルッキズム(外見至上主義)の根源、日本人のボディ・イメージの歪みは自己肯定感の低さから起こることがわかった。過度なダイエットは骨量の減少、低出生体重児出産のリスク等の関係があること、低出生体重児として産まれた子供は糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高いこと、またコロナ禍で摂食障害になる10代の割合が1.6倍と増加していることがわかった。女子大生を対象に、自己体型認識、睡眠、運動、朝食の頻度、メディアからの情報有無についてアンケート調査を実施した。
 間違ったダイエットをすることで自分自身の身体だけではなく、女性は妊娠出産に大きな影響を及ぼすこともある。だからこそ多くの日本人女性が自分の見た目に捉われることなく、自分自身で正しい情報を取捨選択し、行動変容を促すことができるような情報をInstagramを通して発信を続けていきたい。

”何をどれだけ食べたらいいの?”食育ゲーム

 近年、共働き世帯が増加傾向にあり、平成29年の調査では約60%が共働きをしており、さらに子どもが高学年になるにつれて割合が増加していることが分かった。そのことから、食事を自分で用意する必要がある子どもがいるのではないかと考え、小学校高学年を対象とし、自分の適量を知ってもらうための食育ゲームを開発することにした。子どもに親しみやすいゲームを学習材料にすることで、気軽に楽しく学び、最終的に自分自身でバランスの良い食事を選択できるようになることを目標とする。
 ゲームの開発ツールはScratchを使用した。方法は1~3のレベルのゲームを通して、食品レベル、料理レベル、料理の組合せレベルの順に学習する。ゲームの前後には解説のページを挿入し、内容への理解をより高めていく。第1レベルでは四群点数法を基にした正しい食品を選択するゲーム、第2レベルでは料理の中に何の食品がはいっているか選択するゲーム、第3レベルでは一食分の献立を作るゲームを作成した。3つのレベルのゲームを通して理解が深まるように、第1レベルで出てきた食品で作られる料理を中心に第2レベルの問題を出題し、その料理を第3レベルにも用いることで第1レベルから第3レベルのつながりがあるゲームにした。また、小学生を対象としているため、ゲームに出てくる料理はカレーライスや肉じゃがなど給食の人気メニューを中心とし、解説のページにはふりがなを振るなどの工夫を行った。
 ゲームは学内の学生や小学生に体験してもらい、いただいた意見を基に改善を重ねた。また、多くの人が食育ゲームを体験できるように、Web上にScratch作品を共有して公開し、自分の適量を選択できるようになる人が増えてほしいと考えている。

お米を楽しく学ぼう!

 日本の米の年間消費量は1970年〜2020年までの間でおよそ半分の約44kgも減少している。国内の米の自給率は100%に近く、食料自給率の中でも大きな割合を占める。そこで、将来的な米の消費拡大に繋げるためにはまず、米について知ってもらうことが必要であると考えた。そのため、対象を小学生高学年とし、記憶に残る楽しい米の食育を行うことを実習目的とした。
 食と農の科学館やチームラボに足を運び、文献調査を重ね、記憶に残る学習には「体験」が重要であることが分かった。食育の内容として、文章を読むだけではなく、絵を描く、シールを貼り付けるなどの手を動かすワークブックと、視覚的な印象が強く残るプロジェクションマッピングを活用する。調理学研究室協力のもと、子供料理教室にて小学4〜6年生の9名を対象に実際に米の食育を行った。白米と胚芽米の食べ比べをして気が付いたことを書くワークと、「ごはん」という言葉を聞いて思い浮かぶ絵を描くワークを体験してもらった。ワークブックはA5サイズのノートカード形式で、米や具を選択しておにぎりを作るワークや、身近にある米食品・米料理を探すワークなど、飽きずに楽しく学べるワークを15種類ほど作成して配布した。プロジェクションマッピングは米が出来上がるまでの過程を、文字は少なくしてイメージを伝えることを意識し、PowerPointで映像制作を行った。機材は小型ポケットプロジェクターと三脚を使用し、机上と茶碗の中に収穫から精米までの流れを投影した。
 これまで作成したワークや動画は、小学生をはじめ、より多くの人に米について知るきっかけや、食育の教材として活用できるようにSNSやインターネットに掲載する。本実習で学んだことをもとに、今後も日本の食文化である米食の選択を増やすきっかけを作っていきたい。

アレルギーがあっても食べられるスイーツの提案
〜家族や友達と美味しいスイーツを囲みたい〜

 祖母は添加物のアレルギーを持っている。食べたいものが食べられないところをそばで見てきて、アレルギーを持つ人にも美味しく食べてもらえるスイーツを開発したいと考えた。本実習の目的はアレルギーの有無に関わらず、身近な人とスイーツを囲むきっかけを作ることである。情報発信の方法としてレシピサイトにてレシピを発信を行い、同じスイーツを囲むきっかけを作りたい。対象者は18〜22歳である。
 スイーツの開発にあたり、何が原因食物になっているのか、好きなスイーツはなにかについてJ大生にてアンケートを実施した(92名)。それを基に「小麦、卵、乳製品」を除いたスイーツを作ることとした。チーズケーキはチーズ(乳製品)、タルトは小麦、プリンは卵を主材料とする代表的なスイーツだと考え、この3種類を作ることに決定した。現状、アレルギー対応スイーツはレシピがあまり普及していない。そのためヴィーガン対応スイーツのレシピ、アレルギーコンテストのレシピ集を参考に試作を始めた。固まり方や舌触り、食味について8人に実際に試食してもらい、意見を聞いてさらに試作を重ねた。チーズケーキは豆腐や豆乳・白味噌、プリンは豆乳を特に多く使うことから大豆の特有の香りが残る。そのため風味やコクを補うためにメープルシロップやバニラオイル、カラメルを使用した。また、タルトでは米粉を使うため、米飴や米油を使用して生地が脆くならないように工夫した。  レシピを発信する上では、再現性が高くなるよう、材料を記載する際に少々などの曖昧な表現を避け、g表示に統一した。また、作成過程の状態がわかりやすいような写真を撮り、レシピに貼り付けるように工夫した。本実習を通して、アレルギーの有無に関わらず同じスイーツを楽しく囲めることを知ってもらいたい。また、これからもボーダーレスなスイーツの提案を通じ、共食のきっかけ作りを続けたい。