令和4年度 食文化栄養学実習

奥嶋佐知子ゼミ■調理学研究室


「ちょいしおデリ」でおいしく減塩!
〜男性料理教室〜

 「身近な食品で作るおいしい減塩料理を提案したい」という思いを持ち、教室で提案する減塩料理を「ちょいしおデリ」と名づけ、中高年男性を対象に料理教室を月1回計11回運営しました。初回の教室で、受講生は自宅で調理する機会があまりなく、減塩に対してマイナスのイメージを持っていることが分かりました。そこで、「簡単な調理手順で薄味でもおいしい減塩料理の提案」と「教室を通して自身の食塩摂取量を意識してもらうこと」の2点を目的に活動しようと決意しました。
 料理の提案は、「素材のうま味や辛味、風味を活かした料理」と「市販加工品や惣菜を使用した料理」の2項目に着目しました。ジャスミン香る炊き込みご飯で風味を活かした料理、ハニーマスタードジャーマンポテトでソーセージとマスタードの味のみでもおいしく食べる工夫を提案しました。運営していく中で、市販加工食品や惣菜は完成された味付けのためどれも好評で、惣菜の利用は調理経験が少ない受講生でも味を調えやすいことに気づきました。また、レシピには毎月提案する料理の「ちょいしおポイント」を記載し、組み合わせると減塩に効果的な食材の紹介や、市販の調味料の食塩相当量がどのくらいなのかを知っていただくための「早見表」を作成し、普段の食事の食塩摂取量を意識していただけるよう工夫しました。
 取り組みを7回実施した後、減塩についての意識や行動を再度確認したところ、減塩を意識するようになった人や、提案した料理を家庭で作って下さった方が多く、開始前よりも減塩への意識を向上させることができたようです。教室を通して、減塩でも簡単においしくできる方法を知っていただくことで、受講生が家庭でも前向きに「ちょいしお」に取り組み、継続していただけることを望んでいます。

お家時間に料理動画を
Enjoy cooking~楽しく食を学ぼう~

 Enjoy cooking~楽しく食を学ぼう~をテーマに、子ども料理教室を運営している。料理教室見学時、子ども達の姿を見て「料理教室では時間が限られており、切り方などの基礎を教える時間がない。」「包丁の使い方が危険な子が多い。」ということに気が付いた。そこで動画を活用して、家でも安全に楽しく料理をしてもらうことを目的に、切り方と調理の基礎を専門とする子ども向けの料理動画を作成しようと考えた。動画作成にあたり、既存の料理動画と子供向けアニメの特徴について調べ、子ども達が飽きずに何度も見たくなるよう1分以内で作成することに決めた。
 4月から受講する子ども達のために、動画の作成に取り掛かった。「野菜の切り方」は、回を追うごとに難易度を上げていくことを意識し、皮のむき方、半月切り、乱切り、せん切り、みじん切りの順に、動画を作成した。「料理の基礎」では、計量スプーンの使い方、お米の炊き方、カツオ昆布だしの取り方などを作成してきた。教室で作る料理は、にんじんのせん切りを使用したナムル、玉ねぎのみじん切りを使用したハンバーグ、実際にだしをとったみそ汁など教える切り方や基礎内容に合わせて決定した。
 作成した動画を調理の空き時間に子ども達に見せ、家でもう一度見ようと興味、関心を持ってもらうよう努力してきた。その結果、子ども達から「先生の皮むきの動画見たから、りんごの皮むきたい!」という声があがり、自主的に包丁で皮むきをしてくれたことが印象に残っている。
 「野菜の切り方」と「料理の基礎」の動画はわかりやすかったのか、動画の利用により料理に対する関心が高まったのか、家庭で実践する機会が増えたのか等についてアンケートを行い、考察する。

あなたは知っている?備蓄食品の可能性

 自然災害が多い日本では、いざ災害が起きた時に困らないよう、食品の備蓄は必須です。備蓄食品と言えば乾パンなどの非常食が主流でしたが、近年は「備える・食べる・補充する」のサイクルで日常的に食べている食品を多めに備蓄して災害に備える、ローリングストックが推奨されています。私は、家庭に備蓄された食品を工夫して、より美味しく食べるレシピを提案したいと思い、このテーマを選びました。
 運営している男性料理教室の受講生は、缶詰やレトルト食品を備えている方が多いことが分かりました。そこで備蓄食品を3日間食べる生活をしてみたところ、缶詰やレトルト食品はそのまま美味しく食べられ、下処理が少ないという利点があることに気がつきました。一方で、繰り返し食べることで、味に飽きる、野菜が不足する、デザートが無いなど、食事の満足度が低いという問題点が見つかりました。
 料理教室では、多くの受講者が備蓄していた缶詰やレトルト食品を使い、簡単で、味の飽きや野菜不足を解消するレシピを提案しました。例えば、ツナ缶を使った餃子は、すでに具材が加熱処理済みのため、豚肉を使った餃子に比べて調理時間が短く、生焼けなどの心配もありません。そのため、料理に不慣れな受講者でも失敗することなく作ることが出来ました。また、ホットケーキミックスやアーモンドミルクなど現在受講者が備蓄していない食品を提案することで、備蓄食品でもデザートが作れることを体験してもらいました。さらに「世界の料理を作ろう」という料理教室全体のテーマに沿うことで、同じ食品を繰り返し使用しても、国による味付けや調理法の違いで幅広い料理ができることを実感してもらえたと考えます。備蓄食品を使った教室での体験を通じて、受講者がローリングストックによる食品の備蓄を積極的に行い、備えた食品で時短、手間なしの美味しい料理を作って欲しいと思います。

知って楽しく作っちゃお!!
Enjoy Cooking~楽しく食を学ぼう!~

 「子供たちが料理を楽しむと共に、学びも得られる料理教室にしたい!」
 私はこの思いを持って、子供料理教室を運営しています。受講者は、遊び盛りの小学生なので、一方的に知識を教えるだけでは興味を持ってもらいづらく、記憶にも残りにくいです。そこで私は、「遊び感覚でできたら楽しく学べるのではないか?」と考え、“体を動かすゲーム”を通して、食の知識を身につけてもらいたいと思いました。
 料理教室では、各回のテーマに合った献立を立て、レシピブックを作成します。子供たちが読みやすいよう、イラストを多く入れてカラフルにしたり、作る時のポイントを書くよう心がけました。テーマによっては、レシピブックとは別にゲーム用の冊子や資料を作成しました。内容は、子供たちが自宅で料理や食事をする時に取り組みやすい、「準備・片付け」「食事のマナー」「栄養について」の3つです。「準備・片付け」では、ガスコンロを使う時に注意することと洗い物の順番、「食事のマナー」では、正しいお箸の持ち方と配膳位置、「栄養について」では、五大栄養素の役割、朝ご飯の大切さ、献立を立てる時のポイントを伝えました。
 毎回、料理教室で行う“体を動かすゲーム”を子供たちが真剣に楽しそうに取り組み、そこで経験したことを翌月の料理教室でも実践していたことは、とても印象に残っています。子供たちは、自宅で料理や食事をする時も「ガスコンロの近くに燃えやすいものがあると危ないから片付けよう!」「毎日朝ご飯を食べよう!」など、ゲームを通して学んだことを意識して実践しているか、アンケートで確認中です。ゲームが、より食に興味を持つきっかけとなり、日々の食事を大切に思ってもらえることを願っています。

新発見!眠っていた調理器具の活用術

 キッチンバサミ、スライサー、ピーラーを使った料理を提案し、「キッチンに眠ってしまっている調理器具の活用方法を伝えること」が私のテーマです。これら3種の「切るための道具」を使いこなすことで、普段から作っている料理が包丁とは違った調理過程となり、新感覚で楽しむことができるよう意識しています。また、まな板を使わずにそのままお皿やフライパンの上で切ることで、使用する調理器具を最小限に抑えることができ、洗い物の削減にも繋がることに気付きました。
 私たちが運営している男性料理教室では、切るための道具を使用したレシピを紹介しています。一通り全ての調理器具を使用してみたところ、包丁が苦手な受講生にとってキッチンバサミは、使いやすい調理器具だとわかりました。反対に、スライサー、ピーラーは多くの受講生が苦戦しながら使用している様子が見られました。その理由を受講生に聞いてみたところ、「切り初めはとても使いやすいが、だんだんと小さくなるにつれて手を切りそうで怖い」という意見があり、最終的には包丁で小さくなった食材を切っている受講生が多くいました。この意見を参考に、安全面のことを考えると、スライサーとピーラーだけで食材を切ることは危険で、難しいということがわかったので、包丁と併用して使用することが有効であるということに気づきました。同じ料理を作っても包丁とは違った見た目や食感を味わうことができたり、包丁では難しい「厚さや太さを揃える」ことが可能で火の通りが均一になるなど、それぞれの良さを教室では伝えてきました。今までの使いづらいイメージによって、持ってはいるけれどキッチンに眠ってしまっていた切るための道具を、今後は普段の調理過程の一部に加えてもらい、洗い物の削減にも繋げることができたらよいです。