令和4年度 食文化栄養学実習

浅尾貴子ゼミ■フードマーケティング研究室


お客様の心をつかむ◎カフェメニュー開発
健康と安心と美味しさとオリジナリティを実現する方法

 カフェ・カンパニーが運営するWIRED KITCHEN川越アトレマルヒロ店でアーモンドミルクを使用したメニュー開発に取り組み、約1年間で4種類販売することができました。実習先の会社では、できるだけ食品添加物を使用しないでメニュー開発を行う試みを実施しているので、食材探しにも工夫が必要でした。
 メニューを考案する際に一番大切にしたことは、お客様に食べてみたいと思ってもらうことです。そのために、様々な角度から調査を行なって商品のポイントを考え、健康と安心と美味しさとオリジナリティのバランスがとれることを目標にしました。
 テーマ食材は、ビタミンEなどの栄養価が高いことで人気とも言われているアーモンドミルクに決めました。春メニューでは組み合わせにバジルを使い若草色の見た目にして季節感を出し、スライスアーモンドで香ばしさをプラス、レモンを添えて最後まで美味しく食べられるようにしました。夏メニューでは発酵食品の白みそを使い健康感を加え、薬味のみょうがと大葉でさっぱりと胡麻の香ばしさや素揚げした海老の食感を楽しめる一品にしました。秋メニューでは、無添加の出汁を隠し味に、トッピングの食材を5色以上にすることで彩りを良く、雑穀を入れることで食感の変化が感じられるようにしました。冬メニューでは食物繊維が含まれる海苔をふんだんに使いました。
 全体を通じて課題だったことは、無添加や条件に合った原価をふまえて食材選びをすることが難しく、食材の数が増えると手順の決め方や伝達にも工夫が必要だということです。発表会ではメニュー開発の方法や実際とともに、お客様に食べてみたいな、と思ってもらえるためのテクニックをご紹介します!

ピリッとツルっと!韓国風おうどんメニュー開発
外食企業での活動を中心に食に沼り続けた1年の記録

 カトープレジャーグループが運営する「つるとんたんBIS TOKYO」のメニュー開発を担当しました。
私自身が辛いものが好きなこと、調査した辛味に関する嗜好性アンケートの結果から、辛さをアクセントに使用したうどんメニューをテーマにしたいと考えました。
 夏メニューは、韓国料理のビビンバをお手本に辛味にチョジャンを使ったおうどん、秋は辛い冷製麺料理であるビビン麺をお手本に辛味にコチュジャン、冬は韓国発トレンドグルメのロゼクリームをお手本に辛味にレッドペッパーを使って開発しました。つるとんたんらしい味と見た目に仕上げるため、香味野菜を使い、味に深みを出すことで家庭では味わえない美味しさにし、トッピングする食材に緑色・黄色・赤色の3色を使用することで、彩り豊かなメニューになるよう工夫しました。「つるとんたんらしい味」について知ることが課題でしたが、常にお客様目線で考え、ひと手間を惜しまない姿勢や工夫がまた食べに来たい味につながっていくのだと分かりました。また、企業の方との確認作業、報告、相談などのコミュニケーションもメニュー開発をする上で欠かせない重要な作業だと学びました。
 ゼミ活動では他にも、食品メーカーの講習会を通じて専門食材の勉強をしたり、7回の学内カフェ運営お手伝いで調理や店舗運営を一緒に経験し創意工夫したり、小売業の販促物を作成する機会があったり、食品メーカーの販促動画に出演したりと、多くの経験をしました。毎週ゼミ生の調査や活動の報告を聞くことからも、仕事の難しさや開発に関する知識を得られる機会になったと感じます。以前よりも、様々な人と協働するコツや多くのことをやりこなせる工夫も身に付いたように思います。発表会では担当企業での商品化と、ゼミでの1年間で得られたことをまとめて発表します!

環境とからだに優しい*ヴィーガンメニュー開発
カフェ企業で求められる知識とテクニックのまとめ

 カフェ・カンパニーが運営する、新宿LUMINE1「wired bonbon」のメニュー開発を行いました。女性のお客様が中心でヴィーガンスイーツを扱う店舗であるため、植物性食品を使いつつ身体を温める食事メニューを提案することに決め、1年間で4つの季節に合わせた料理を開発し実際に販売しました。
 ヴィーガンは植物性の食材のみを使用した料理なので、肉や魚介・卵・乳製品は使えません。メニュー考案の際には各料理に合う代替品を研究しました。春メニューでは大豆ミートのから揚げとスクランブルエッグ状の大豆加工品を使用し、サラダプレートに主菜級のボリューム感アップを狙いました。夏メニューではミンチ状の大豆ミートで野菜たっぷりのライスボウルを開発。全体混ぜたときに味をつけた大豆ミートが均等にいきわたることや、混ぜやすくすることを考えました。秋メニューでは、テンペというインドネシア発祥の発酵食品を使用し、ギリシャ料理のムサカをアレンジした料理を考案しました。ナイフでカットしたときの満足感や食べ応えアップをねらいました。冬メニューでは乳製品の代わりにヴィーガンホワイトソースや植物性のチーズ風製品を使用し、熱々のドリアを考案しました。
 メニュー開発では、お客様のニーズに合ったものを提案することに加えて、店舗の作業に配慮することも必要であり、バランスを取ったレシピ開発が求められていると実感しました。店舗でアルバイトをしながらお客様がお店に求めるものはなにか観察したり、仕込みにかかる時間やオーダー後の作業工程を知ることで、開発に生かせる点がいくつもありました。発表会ではヴィーガンの置き換え食材の選び方や新商品情報収集の重要性、調理の工夫、外食企業における効率化についてお話しします!

外食メニュー開発《シニア向け》5つのポイント
ファミリーレストランにおける嗜好性と商品化の実際

「和食レストランとんでん」でメニュー開発に取り組み、パフェとランチメニューを商品化し、サラダやおかゆの商品提案や試作の仕事を経験することができました。訪れるお客さまのほとんどが60歳以上のシニア層の方々なので、嗜好性についても考慮しながら進め、好まれる商品のポイントを5つに整理しました。
 まず一つ目はネーミングです。北海道産メロンパフェを考案した際は、極上という言葉で特別感を演出しました。二つ目は意外性です。店舗においてある食材も組み合わせながら、アクセントに紅茶ゼリーを使用し、オリジナリティを出しました。三つ目は、見た目のインパクトで、パフェの食材を器からはみ出る盛り付けにし、華やかな見た目にこだわりました。四つ目は食べやすさです。ランチメニューでは、ざんぎを通常の半分サイズにカットし、かじらなくても良いように工夫しました。そして五つ目は、飽きにくさです。酸味やサクサク食感などを加えることで、食べ進みたくなる工夫をしました。
 メニュー開発のために店舗でのアルバイトもしていたので、スタッフ目線では作業しやすいオペレーションを優先したくなります。しかし、お客さまの視点から求められていることも考え、それらをバランスよく取り入れることが開発者に求められる感覚だと実感しました。どちらか1つの視点に偏らないようにすることが大切だとわかりました。
 1年半を通じて、企画書作成からメニュー表用の撮影など、実際に商品化に至るまでの流れを経験することができ、周りの人の意見を取り入れるなど柔軟な考え方も身につきました。発表会では、シニア向けの商品を作る際のポイントや、外食企業の商品開発スケジュールについてもご紹介します!

からだにやさしいマクロビ料理を召し上がれ!
こだわりポイントと効率アップの工夫と代替食材の記録

 マクロビと日本文化をテーマに、学内カフェを4月から合計7回運営しました。学園内留学で学んだ調理技術を活かし、お客様にとって新たな発見がある料理を提供することを目標としました。マクロビには動物性食品や調味料・精製品の使用制限があります。その中でもお客様に喜んでいただけるよう料理にこだわることに加えて、作業効率のバランスをとることが難しかったです。
 1回目営業の4月では御膳を提供しました。品数は11品、使用する食材も家庭にないものを多く取り入れることで、目新しさのある献立を目指しました。しかし、使用食材や調理工程が複雑なことが作業性の問題でした。2回目の5月では、品数を減らして提供しました。電子レンジの活用等で効率的な作業手順を工夫しましたが、実際に調理をする際には動線を想定しておらず、思うように進行できませんでした。6月はティーセットを提供しました。菓子3種とお茶を2種で構成し、仕込みと当日調理の労力を分散することができました。動線もパントリーの活用でスムーズになりました。一方で、少ない品数でご満足いただけるのかという懸念もありました。7月は、食事と菓子をセットにアフタヌーンティーセットを提供しました。料理も菓子も提供しつつ、品数や仕込みの工夫でバランスを取りました。9月は、夏休みから準備を重ねて栗づくしアフタヌーンティーを提供しました。焼き・煮・揚げそれぞれの調理方法でいろんな味わいをお楽しみいただけるよう工夫しました。
 料理に動物性の旨味やコク、お菓子に卵やバターを使えないことで、様々な置き換えテクニックも研究しました。発表会では、お客様が食べてみたいと思うマクロビ料理のこだわりと、作業効率アップの具体的な方法、代替の食材についてご紹介します!

ワクワク楽しい!?ごちそう豚汁のメニュー開発
外食企業の仕事を通して考えた3つの課題と解決方法

 アークランドサービスHDが運営するごちそう豚汁専門店「ごちとん」で、ご当地をテーマにした月替わりメニューの開発を行いました。豚汁に欠かせない味噌には地域によって特徴があるので、その土地の食材と組み合わせたメニューを提案したいと考えたことがきっかけです。
 外食企業でのメニュー開発を経験して、難しいと感じたポイントが3つあります。1つ目は、お客様が欲しいものを想像して商品を作ることです。例えば夏メニューでは、冷たい冷製豚汁を販売しました。暑い日に爽やかで冷たくていいねといった声もいただき、お客様目線で考える大切さを実感しました。2つ目はスピード感と計画性が不可欠なことです。毎月新商品が出され、商品発売の1ヶ月前には商品が確定しています。そのため約3ヶ月前から商品イメージを考え、市場調査に行き、試作が必要になるので、やることリストを作るなどしないと、試作用食材が間に合わないなどが起きてしまいます。3つ目は、制約が多いので優先順位付けが必要であることです。売りたい価格帯は決まっており、その範囲内で考える必要があります。また豚汁という商品構成において味噌と豚肉は必須で、味噌とのバランスを考えること、温かく提供できるオペレーションなど、手順や盛り付け方を考えることが欠かせません。
 この他にも、食品メーカーの販売促進の手法や計画の進め方を経験し、外食の商品開発と共通してお客様目線で企画を進めていく必要があることが分かりました。また小売業の販促物づくりや、学内カフェ運営を通じてゼロからオペレーションや料理を作って提供する難しさも体験したことで、食に関する幅広い仕事への理解や今後社会で働く上での基礎づくりにつながりました。