令和2年度 食文化栄養学実習

向後千里ゼミ■特任教授


じゃがいもとひじきの出会い
~御師料理の保存と継承~


 富士吉田市の調査を進めていく上で、私は神饌に注目しました。神饌とは、その年に収穫した季節の作物や新鮮な魚、郷土料理、古式ゆかしいものなどが供えられ、日本の食文化の原点を見ることができる貴重な存在です。その中でも、開山祭の神饌には熟饌として新じゃがいもとひじきの煮物が献供され、明治の頃より続いていると考えられ、昭和10年8月の記録にもあり、今でも食べられていることが貴重な存在だと知りました。私は、なぜじゃがいもとひじきが一緒に調理されているのかということに興味を持ち、今回の研究テーマにしました。
 研究方法は、先行研究の調査や地域料理の文献調査をデータ化し、分析することです。
 中間報告では、御師の活動や御師料理についての調査を報告しました。現在も御師を続けている方々の活動がとても貴重だということを知り、さらに歴史の分析が欠かせないとわかりました。
 中間報告以降は、文献調査でじゃがいもとひじきの歴史を追い、山梨県に入ってくるまでのルートをたどりました。そして、全国でじゃがいもとひじきの煮物が食べられていたのは、山梨県だけだったのか?という疑問も検証していきます。また、富士吉田市には欠かせない開山祭は、富士山に感謝し富士登山の無事を祈ってお焚き上げが行われる行事です。この歴史を調べ、じゃがいもとひじきの煮物との関わりを調査します。実際に、富士吉田市の方々が「じゃがいもとひじきの煮物」を食べているのかをヒアリングするため、フィールドワークを行いました。ここでは、現在も御師の活動をされている方や富士吉田の道の駅、スーパーを中心に調査を行い、分析し文献だけではわからないリアルな体験ができました。これらのことから、「じゃがいもとひじきの煮物」ができるまでを考察します。