令和2年度 食文化栄養学実習

奥嶋佐知子ゼミ■調理学研究室


食材を知ってもっとおいしく食べよう!
子ども料理教室


 皆さんは食材を買い物するとき、「旬」を意識して買い物をしていますか?四季がはっきりしている日本では、食べ物に旬があります。旬とは、野菜や魚などが自然の中で採れ、味が美味しい時期のことです。
現在は、年中スーパーマーケットに並んでいる野菜も多いですが、旬の時期に採れる食材には美味しさだけでなく、値段が安い・季節を楽しめるなど様々な魅力があります。
 料理教室では、四季や自然の恵みを学びながら、旬の食材の魅力を感じてもらえることを目指して活動しています。また、受講する子どもたちに地産地消を知っているか聞いてみると、ほとんどの子が知らないと回答したため、地元の食材の知識を増やすとともに、生産者の方々への感謝の気持ちを持ってほしいと思い、埼玉で採れる食材も料理教室で使用し、子どもたちの食への関心を高めたいと考えました。
〇実習内容〇
 小学4~6年生を対象に料理教室を運営し、旬の食材や埼玉県産の食材を使ったレシピを提案しています。そのレシピは自宅でも作ってもらえるように、イラスト中心にするなど工夫し冊子として配布しています。また、子どもたちが持ち帰って読み返した時にも分かりやすいように、使用した食材の知識を深める内容や、地産地消について分かりやすくまとめた資料も入れています。 9月は旬のとうもろこしをスープに、10月は旬のしめじと鮭でホイル焼き、川越で多く栽培されるさつまいもを使用したスイートポテトを提案しました。教室終了後、子どもたちには食材の魅力が伝わったかを確認するためにアンケートに答えてもらっています。また、アンケート中に「苦手だけど食べられた」「おいしくて栄養満点」という感想があり、少しずつ食に興味を持ってくれていると実感しています。



世界の様々な国の料理を作ってみよう
~男性料理教室~


 ゼミでは、豊島区で中高年男性約20名を対象とした料理教室を運営しており、3人のゼミ生で献立作成や試作、レシピ作成、 材料の発注、当日の実施までを行っている。活動開始当初は、東京オリンピック開催年ということで多くの国の食文化に興味を持ってもらいたいと考え、世界の料理をテーマに決めた。
しかし現在は、新しい生活様式の中で東京にいながら異国の味を楽しんでもらいたい、海外旅行をしているような気分になってもらうということを目的として進めている。
 3年次の12月に先輩方から料理教室を引き継ぎ、自分たち主体の料理教室を1月から開始した。1月に韓国料理、2月はブラジル料理を作ったが、新型コロナウイルスの影響により3月から9月までの料理教室は中止せざるをえなくなった。自粛期間中は、月ごとにテーマを決め、各自が自宅で試作をしてレシピにまとめた。料理教室ができなくとも受講者の方々に何かできることはないかと考え、作成したレシピ集と紹介した料理の国の「世界遺産と食」についてまとめた冊子を郵送した。受講者の方々に行ったアンケートでは、「アフリカの国について初めて知ったことが多く、面白かった」というコメントが、国名や地域名を挙げたコメントの中で突出して多かった。この結果から受講者の方々は、日本で馴染みのある国の料理や食文化よりもあまり馴染みのない国の料理や食文化に興味があることが分かった。
 10月は教室再開予定で、少人数制で午前の部と午後の部の2部構成にし、試食はせずに持ち帰りという形で、感染対策を徹底し、安全で楽しい料理教室を再開できるよう準備を進めている。写真のクイズの正解は、ブラジル料理である。私は世界の料理を調べるまでこれらの料理を知らなかった。皆さんはブラジル料理を食べたことがあるだろうか?



食べないなんてもったいない
食品ロス削減へ


 料理をしていて、もったいないと感じることはありますか?にんじんの皮や大根やカブの葉を食べられないからと言って捨ててしまっていませんか?また、好き嫌いでご飯を残していませんか?
 私はバイト先で調理をしている最中に、まだ食べることのできる野菜の部位をたくさん捨てているところを見てもったいないと感じました。また、せっかく作ったご飯を残されてしまうのも悲しいことです。日々の料理の中で少し工夫することで生ゴミは減り、調理法や味付けを工夫することで好き嫌いのある方でも美味しく食べることができるようになると思います。そのため私は、普段捨ててしまっている部分でも“美味しく食べることができるんだ!”と思ってもらえるような献立を考えています。
 今、私たちは小学生を対象に子供料理教室を運営しており、子供達に楽しく料理をしてもらう事以外に、生ゴミの廃棄を少なく、好き嫌いなく食べてもらう事を目標としています。レシピを考える際には、普段なら捨ててしまっている野菜の部位を取り入れた料理を必ず一つ献立に入れるようにしています。また、好き嫌いがあっても食べることができるように、食べた時の舌触りや味付けなどを考えながら作っています。子供たちには普段なら捨ててしまっている部分を使った料理だということを、レシピに分かりやすく記載し、知ってもらい、自分たちで料理する時に少しでもゴミが出ないように気にしながら作ってもらえるようにしました。
 今まで行った料理では、とうもろこしの芯からダシを取ったコーンスープや、カブの葉や皮まで使った味噌汁などを作りました。また、子供たちの苦手な食材を使用し、苦手なものでも食べてもらえるように工夫した料理を今後提案しようと考えています。



切り方ひとつでSNS映え料理!
~3Dプリンター×レシピ~


 食べたいけど作り方わからない時、レシピって便利ですよね。私は、本を参考にする事が多いのですが、最近ではweb 上でも参考になるレシピを気軽に見つけることができると思います。でも正直、レシピをみてわかりにくいと感じたことはありませんか?「せん切り」「角切り」「みじん切り」と書いているけれど、どのくらいの大きさで切ればいいのかわからない時がありませんか?
 ゼミでは料理をする機会が少ない中高年男性を対象に、月に一度料理教室を行っています。初めて料理教室を行った際、一人一部ずつレシピを配布しているのにも関わらず、完成した料理の見た目はそれぞれ異なり、まったく違う料理に見えました。人が食事をして「美味しそう」と感じるのは五感の中の視覚が87%影響していると言われています。しかし、教室で完成した料理には切った食材の大きさに統一感がありませんでした。このことから、配布した紙ベースのレシピだけでは人それぞれに解釈してしまい、視覚的要素が欠けているから正確な情報が伝えきれておらず、別の料理に見えるのだと気が付きました。
 では“どうしたら正確な情報を伝えられるのでしょうか”
 私は、この視覚に着目し「3Dプリンターを使って食材の形や大きさを立体的に再現した模型を作る」ことを考案しました。紙ベースのレシピの他に立体的な模型をプラスすることで、受講者の方により正確な情報を伝えられるのではないかと考えます。また、これらの模型が受講者の方にとって見本となり、実際に食材を切る大きさを直接見て真似しながら切ることができるのではないでしょうか。この模型は持ち帰ってもらい、料理を作る際にも活用してほしいと考えます。食材の大きさを揃えることで料理の見た目も変わり、SNS映え料理に繋がるのではないでしょうか。



みんなで調理スキルアップ!
子ども料理教室


 料理を楽しみながら様々な調理法に挑戦してほしい、失敗することを恐れずお家でも楽しく料理をして欲しいという思いで、小学生を対象に月1回料理教室を運営しています。料理には焼く・蒸す・煮るなど様々な加熱調理法があり、加熱以外にも、切る・混ぜる・こねる・つぶすなど数え切れないほどの操作があります。楽しく料理を学ぶには実際に自分の手で触ったり、つかんでみたりと、経験した方が印象に残りやすいのではないかと思いました。また、自分で実際に作ってみると楽しい・美味しいと感じるだけでなく、料理をすることへの自信にも繋がると思いました。
 これらをふまえ2回目の料理教室では、ロコモコ丼を実施しました。ハンバーグは、自分でこねて形にし、焼いて蒸すという作業工程の後、自分達で丼に盛り付けをしました。皆が同じように盛るのではなく、盛り付け用として用意した葉を「ちぎらないでやってみる!」という子もいれば「ちぎる!」という様々な表現の仕方がありました。どのような盛り付け方が美味しく見えるのか、1人1人が想像し工夫しながら楽しく行っていました。3回目の料理教室では、楽しみながらできる料理としてスイートポテトを実施し、個々で好きな形にしてもらったところ星やダイヤの形などができあがりました。
 料理は何回も失敗をしていいと思います。何回も挑戦していくことで段々と作れるものが増えていくので、まずは楽しくやってもらうことを大切にしています。どのような発見があったか、子ども達にとって楽しく取り組める料理はどのようなものかを検討していきます。また、料理教室で体験したことを家庭でも実践してもらいたいと思い、調理時の基本的な道具の使い方や切り方についての資料を作成し、配布しています。



子供の健康をサポート!簡単料理を作ってみよう
子供料理


 成長期の子供にとって、毎日の食事は栄養バランスが大切です。子供達が栄養について学び、普段からバランスの良い食事を意識してもらえるよう、子供に不足している栄養素を多く含む料理の提案というテーマで小学生を対象に料理教室を行っています。活動中好き嫌い等により料理を残す子が一部見られたことから、摂取している栄養素には偏りがあるのではないかと考え、子供に不足していると言われている「カルシウム・鉄・食物繊維」の3つの栄養素に着目し料理考案を行いました。毎回1つの栄養素に着目し、1日の必要量の1/3以上がとれるような献立、子供が家で1人または家族の助けを少し借りて作れるような簡単な料理という2点を重視して計画しています。
 1回目は鉄に着目し、ひじきや豆腐を使用したロコモコ丼を作成しました。調理工程も、材料を全てボウルにいれ捏ねて形を作って焼くだけなので、子供でも簡単にできます。「ひじきはそんなに好きじゃないけどこれは美味しかった」という嬉しい意見もありました。
 また、不足栄養素を補う料理の考案レシピや栄養素の効果をまとめた資料を子供達に配布しています。1回目の配布レシピでは、鉄を多く含むレバーを使用しました。私はレバーが苦手で食べられませんでしたが、考案レシピでは牛乳で臭みをとり、小さく切るなどをしたことで美味しく食べることができました。子供の中にはレバーが好きという子はほぼ見られなかったので、苦手でも食べられたよということを伝えたくて提案し、次回感想を聞く予定です。このように栄養も考え、子供達が好き嫌いや食べず嫌いも克服してくれることが理想です。現在カルシウムと食物繊維を意識したレシピを考案中です。食品中の栄養素を考えながら実際に作り、配布資料を読むことで子供達の食の幅が広がれば良いと思っています。



おうちで世界をたべよう!
~フライパンひとつでつくる主菜~


 男性料理教室では、「世界の料理」をテーマに昨年12月から2月まで教室を運営してきた。その中で私は、フライパンひとつでつくる主菜を個人のテーマとして進めている。このテーマを選んだ背景は、私自身料理をした後の片づけが嫌いで、この面倒な片づけが少しでも楽になれば料理をする頻度も高くなるのではないかと思ったからだ。受講者の皆さんが、食卓の中心となる主菜を、自宅でも最小限の洗い物で作れるようになることをこのテーマの目的とする。
 12月~ 2月はトマト煮込み、海鮮チヂミ、フランゴコンキアボをフライパンひとつでつくる主菜として献立に取り入れて教室を実施した。
 3月~7月は教室を開くことはできなかったが「おうち旅行」として、スーパーで手に入る食材のみで作れる料理を提案できるよう試作を重ねてきた。これまでに、ラザニア、グリーンカレーとガパオライス、チキンムアンバ、ロコモコ丼、チラキレスをフライパンひとつで作れるように改良するとともに、今までどの国をテーマにしてきたかを分かりやすくするために、その国のコースター等を製作した。そして、これらのレシピとテーマに関するアンケートを受講者に送り、これまでの活動がどれほど伝わっているかの確認をした。また、在宅期間中に料理経験ゼロの父にこれまでに提案した主菜を作ってもらったのだが、洗い物の少なさよりも調理工程の容易さや調理時間の短さの方が重要視されているように感じた。 
 10月は安全を優先してキーマカレーとピクルスの2品に絞り、人数も制限、試食はしないという方法で8か月ぶりに教室を再開した。在宅期間中に得た意見も参考にし、製作したコースター等も実際に教室に取り入れ、残り2回の教室が受講者にとって良い思い出となるものにしたい。



なんで失敗したの?
~科学で解決しよう~


 私は幼い頃、家族の誕生日やイベントのたびに叔母とお菓子作りをしていました。しかし、成長して一人で作るようになってからは、失敗の連続でした。スポンジケーキが膨らまなかったり、クッキーが焦げてしまったり、チョコレートが固まらなかったり、みなさんもそのような経験はありませんか?失敗をすると、材料がもったいないし、落ち込みますよね。また、お菓子を誰かにプレゼントをするなら、キレイで美味しいものをあげたいですよね。そこで、3年次の学園内留学で学んだことを生かし、次にお菓子を作るときに失敗しないための方法を科学的に説明し、料理教室で伝えようと思いました。
 初めに、お菓子作りの経験やどんな時に作るのか、失敗例、今後作ってみたいお菓子などをゼミ生に聞いてみました。その結果、スポンジケーキが膨らまなかったという失敗例が一番多くあがったので、これを料理教室で取り上げて、失敗しない方法を伝えることにしました。書籍でレシピを調査し材料や器具・作り方・混ぜ方・焼成温度・焼成時間などを比較し、専門学校で学んだことを活かしつつ、家庭でも作りやすく、失敗しないことを重点に置いたレシピを作成していきます。卵といっても、サイズ・卵黄卵白の比率・鮮度によって違いがあります。砂糖は上白糖やグラニュー糖により、膨らみやすさや味、しっとり感に違いがでます。混ぜ方や材料を加える順番などにも理由があります。例えば、全卵を高速で立て、低速でキメを整えることです。気泡は大きいほど壊れやすく、仕上がりもキメが粗くボソボソとした食感になります。また、小さい気泡は壊れにくく焼成後の膨らみにも安定感があります。それらをふまえて、なぜこの材料で、この配合で、この器具で、この順に加え作るのかを、科学的に説明します。